あれから一周間、手がかりなしか・・・

十神さんは個別で何かを調べているらしい。
俺はというと、どこをあたったら良いか皆目検討がついていない状態だった。

かといって、このままなにもしないのは嫌だと考えるが、何もできない自分がいた。

そうだな・・・他に頼っていた人がいたか?

・・・そうだな・・・誰かいたような・・・

ぼんやりと矛盾だらけの記憶を巡らせる。
そうすると、一人だけ捕まえた人影があった。

それはとても嫌なやつで・・・
きっとこうなった原因だと思う。

・・・神様のところに行ってみるか。

手がかりがないし。そういうことには詳しいだろうし・・・

一応、十神さんにも連絡しておくか。

メールで行き先を送ると、軽く荷物を持って出かけることにした。

む?大江くんからか?

―■■神社に行ってきます―
文字が潰れているな・・・

・・・・・・・

えっと、どうやって返信するのだ?これは・・・

バス停を降りると都会らしい面影が消えており、見渡す限り見慣れない木や建物ばかりだった。

といってもここは父方の実家の辺りで、何度かは来たことがある。
最近はあまり訪れることがなかった分、新鮮だった。

ここら辺だったかなぁ。
あまり覚えてないぞー

記憶を頼りに進むと目印になるものが大きく変わっていた。

結果的に、ぷち迷子であった。

やっべー、このまま熊が現れたりしてー
アハハハはー

獣臭いッ!!

昔、聞いたことがある。
部分的に獣臭い場合、クマが出ると・・・

今、この状態はまさにそれだった。
鼻につく獣の臭い。そして、今更のように倒れている熊注意の看板

今更注意も糞もあるかよ!!

・・・おにーさん、何やってんの?

ぬわああああ!!

プッ、変な人だねー
もしかして都会人ってやつ?

真っ白い服を着た男の子が笑っていた。
似合わないほど真っ白で、”都会人”と呼んだ割には都会らしかった。

おにーさん、こんな山奥まで何子に来たの?
心霊スポット探し?
それともお参り?

昔、ここらへんで神社を見つけたんだけど、そこまでの道がわからなくてさ。
知ってるか?ココらへんの神社のこと

あぁ、神社ね。
全く、道があるじゃないですか。このまままっすぐ上がるだけですよ。

そう言って指差すと先ほどまでなかったはずの獣道があった。
ポッカリと空いた道はまるで木のトンネルだった。

僕もこれから帰るところだから一緒にどう?
お客さんなんて久しぶりだから姉も喜ぶよ。

人なんていたっけ?
むしろ、神棚みたいな場所だから、普通は人間はこれないはずだし・・・

まぁ、迷子だし、なにか聞けたらラッキーなくらいで行ってみるか。

あぁ、案内よろしく

おつかれさん。ほら、ついたよ。

はー、はー・・・なんて道だ・・・・・・
足が棒になるなんて・・・あの廃マンション以来だよ・・・

まぁ、適当に座っててよ。今、お茶を持ってくるからさ

あぁ、ありがとう

そう言うと、隣の母屋へ入っていった。
近くにある丸太に腰掛ける。
ドッと押し寄せる疲れに腰が上がらない。

何も考えずにここまで来た。

それは自分で考えた出来ることだ。
しかし、少し軽率だったのかもしれないと考え始めた。
こんな山奥だ、自分の身を守るすべなど一切なく、さらに言えば、脱出しようとしている自分に対し、黒幕は黙っているのだろうか?
居るかもわからない黒幕に対し、今更怯える始末。
もしかしたら彼がそうでは?なんて考えてしまう。

そう考えると、十神さんだって例外じゃなくなるわけだもんな。
はぁー、全く・・・どうしたものか・・・

こんな時は笑うに限る!!

イザナミ

笑うことは大変結構ね。思い悩んでも道は開けないのだから
笑って上を見上げてみなさい。
きっと、何か答えが見えるはずよ。

いッ、いつの間に!?

イザナミ

・・・何を言ってるの?
私が先に座っていたの。あなたが勝手に入ってきて、あーだこーだぶつぶつと言っていたのでしょう。
だから、少しだけヒントをあげたまでよ。

―ぇ?ヒント?

その言葉で空を見上げる。

なるほど・・・そういうことか・・・

月が浮かんでる・・・

ウズメ

白夜というべきでしょうね。
この世界で太陽が上ることはありませんよ。
はい、お茶が入りました。

あ・・・ありがとうございます。

なるほど、白夜が昼間を照らし、夜は月が照らすわけか・・・
でも、どちらの現象も太陽がなければ成り立たない現象・・・

・・・ん?

白夜って・・・実際は太陽が沈まないことなんじゃ・・・

ウズメ

そうですよ。
ですが、この世界では”太陽が存在しません”
月が光っているのですよ。

月が光っている?!

イザナミ

ここまで明るいのだから、そうなるわ。でも、一時的な空間だから成り立つ現象よ。
世界規模で考えてみなさい。いま、ここが延々明るいのであれば、真裏側は真っ暗闇よ。

イザナミ

だとすれば、ここは平面世界。
一種の箱庭かしらね。

箱庭・・・

つまり、ジオラマみたいな世界ってことで、ワイトみたいなもので朝と夜を作っているのか?
だとすれば、黒幕は神様ってことか・・・

カラン

”黒幕”という例えが正しいかはわかりませんよ?
神様が作ったジオラマに、貴方が迷い込んだだけの可能性もあるわけですし。
何事も、疑ってはいけません。
それに、あなたをここに連れてくる利点があるのですか?

・・・それもそうだよな・・・



・・・って・・・

数名知らない人いるし!!
誰だよ

ウズメ

それ、いまさらですかぁー

ウズメ

イザナミ様の付き添いの”アメノウズメ”と申します。
あ、ツクヨミとかいう名前じゃありませんよ?ホントですよ?

カラン

あれ?僕のこと忘れちゃった?
自己紹介まだだったけど、ここまでおにーさんを案内した”カラン”といいます。

・・・男の娘――

カラン

女だよ!!

な~んとなくわかった気がするけど・・・
駄目だ。頭が追いつかない。

イザナミ

まぁ、聞いておくだけでいいんじゃないかしら?
正直、神様の考える事を人間で理解するのは難しいから。なにせ、世界単位のジオラマを作って、人間を作ってるわけだし。

一つ、聞いてもいいですか?

イザナミ

だめよ。
自分で考えなさい。

ですよね~。
そんなこと、別の神様にも言われましたから

カミサマ

そーいえば、そんなことも行ったわねー
覚えててくれたなんて、とっても嬉しいわ。
えー、八神くん・・・だっけ?

大江だっつーの。
絶対知ってて間違えただろ。

カミサマ

あらあら、それは心外な。

カミサマ

畜生であろうがしっかり覚えてるのよ?
そこの・・・えーっと・・・

覚えてないだろうが・・・

・・・で、カミサマさぁ・・・
なんでここにいるわけ?もしかして、ココらへんだったらどこでも湧くとか?

カミサマ

・・・何を言ってるの?ここが本神じゃない。
忘れてしまったの?

・・・あぁ・・・もしかして・・・

カミサマ

アノコが綺麗に作ってくれたから”見違えたのかしら”

まるっと全部違うじゃねーか・・・
フザケンナ

ウズメ

イザナミ様、そろそろ帰りましょう。
何やら不穏な空気ですし

カラン

僕も帰りたいよ・・・
絶対この後八つ当たりとかされそうだし・・・

カミサマ

あらあらまぁまぁ・・・節穴も良いところですねぇ・・・

カミサマ

に、しても・・・
なぜ、”本物”を持ってきたのかしらねぇ・・・

カミサマ

まぁ、良いわ。
中で話しましょう。

それもそうだな。

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