ジャスミン

いったい、ここはどこなのでしょう。

目が覚めると、私は暗い森の中に居た。

空には、青白く光る大きな満月が不気味に私を見下ろしている。

ジャスミン

どこかに、山小屋のようなものがあればいいのですが……。

辺りを見渡してみると、遠くに明かりが見えた。

ジャスミン

とにかく、あそこまで行ってみましょう。

私は、ひとまず明かりのある所まで歩くことにした。

暗い森は、月明かりで照らされているものの、見通しが悪く、ひと気も全く無い。ただ、サクサクと落ち葉を踏む、私の足音だけが、その森に響いていた。

ジャスミン

やっと、着きました。

私が目指していた明かりの正体は、森の中に突如として現れた、大きな洋館の明かりだった。

私は、目の前にある大きな扉を叩いた。

ジャスミン

あの、すみません。

私が扉のドアを叩くと、少しして、中から返事が聞こえた。

アーサー

おやおや、こんな夜遅くに、お一人でどうされたのですか?

ドアを開けてくれたのは、背の高い、御伽噺に出てくる王子様のような人でした。

ジャスミン

あ、あの、私、森で迷ってしまって、それで、あの……、一晩だけ泊めてもらえませんか?

アーサー

落ち着いてください。

それに、外は寒いですよ。ひとまず、中にお入りください。

話はそれからです。

事情を説明すると、その人は、私を快く迎えてくれた。

案内された部屋は広く、大きく長いテーブルの上に、既に食事の用意がされていた。

ジャスミン

あ、あの……。

お食事中に押しかけて、すみませんでした。

アーサー

いやいや、まだ食べる前だったんだよ。

それに、まだ全員揃っていないからね。

そうだ。お腹はすいていないかい?

君の分も用意させるよ?

ジャスミン

い、いえ。それは……。

そのとき、私のお腹が鳴ってしまった。

アーサー

うん。お腹は正直だね。

ジャスミン

す、すみません……。

彼は微笑み、近くにあった呼び出し用のベルを鳴らせた。

クレア

は、はい。お呼びでしょうか。

すぐに来たのは、メイドの格好をした少女だった。

アーサー

ああ、もう一人分、食事を用意してくれるかい?

彼女の分だ。

クレア

あ、お客様でしたか。わかりました。お座りになって少々お待ちください。

そう言うと、彼女は一礼し、部屋を出て行った。

アーサー

そういえば、名前を言っていなかったね。

私の名前は、アーサー。この土地をある人の言い付けで任されている者だよ。

アーサーと名乗った彼は、私に微笑んだ。

ジャスミン

あ、私は、私の名前は……。

どうしてだろう。名前が思い出せない。

私は、森に入る前……。

あれ? 森で目が覚める前の記憶が思い出せない。 

アーサー

やはり思い出せないのですね?

ジャスミン

え?

は、はい……。

あの、いったいここはどこなのでしょうか。

この森のことも全く知らなくて……。

アーサー

では、食事をしながら話しましょう。

そろそろ料理が出来上がるころです。

アーサーは、私に微笑み、アーサーの隣の席に誘導してくれた。

すると、部屋の扉が開き、さっきのメイドの少女が料理を持って部屋に入ってきた。

Episode1 迷いの森の少女

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