早く駆け寄って大丈夫か聞きたいのだけれど、石川くんは未だに女の人と気だるそうに会話をしていた。
早く駆け寄って大丈夫か聞きたいのだけれど、石川くんは未だに女の人と気だるそうに会話をしていた。
なら明日は?
……さぁ。考えとくよ
もう!おかしいわよ!翔平!!
ジッと視線を送っていたからか、ため息をついた石川くんがふとこちらを向く。
………
あ……笑顔になった…。
ガラリと表情が変わった彼は、嬉しそうに手を振ると目の前にいた女の子に声もかけずこちらに歩いてきた。
…朱里。元気?
師匠…私は元気だけど。
思わず師匠とか言ってしまったせいで、つーちゃんが驚いたように
…嘘でしょ…まじ?
なんて呟いてる。
先程まで石川くんと話してた女の子は、私を睨みつけるとプイッと顔を背けてその場から去っていった。
………また敵が増えたな…
ってそんなことを言ってる場合じゃないか。
ねぇ、石川くんは大丈夫?体調悪いんでしょ?
私の言葉に彼は笑顔を作ると
全然大丈夫だよ。いま元気になった
なんてそんなことを言う。
…石川くん…少ししゃがんで
え?こうかな?
大丈夫なんて言われても、この前の私みたいに自覚がないのかもしれない。
そう思ったのでしゃがみこんだ彼のおでこに、コツンと自分のおでこをくっつけた。
!!
…んー熱くはないね。
冷たいジュースを持っていた手より、おでこの方が正確なはず。どうやら熱はなさそうだ。
石川くんから離れると、つーちゃんが驚いた表情でクイッと私の服を小さく引っ張る。
…朱里いまのわざと!?
え?何が?
私達の会話を聞いていた師匠は、咳払いをするとにこりと微笑んだ。
風邪なんて全然引かないから心配しないで。
…ほんと?無理してない?
…してないよ。朱里は優しいね。ありがとう
体調のことは気になったけれど、本人が大丈夫だと断言しているのでこれ以上はしつこくしても仕方ない。
あ、そういえば石川くんにつーちゃん紹介したことなかったっけ。
隣でいまだに驚いた顔をしてる友達に手のひらを差し出し
師匠。彼女は私の友達のつーちゃん
と紹介をした。
こんにちは。
あ、どうも
軽い挨拶をした2人が何か会話をするのかと見守っていたら、石川くんはすぐに私の方に視線を戻す。
朱里。今日はお昼から講義がないんだけど君は?
あ、ないよ!夕方からバイトだけど、それまでは暇だから石川くんに会いに行こうなんて思ってた。
…そっか。じゃあまた連絡してね。
ポンポンと頭を撫でられ、彼はつーちゃんに再度挨拶だけすると背中を向けて去っていった。
あ、つーちゃんと会話しなかったのは、女の子達の嫉妬の視線を向けさせない為かな!?友達だから気を使ってくれたのかも!さすがそこまで気が回るなんて尊敬!!
うっとり見惚れているとつーちゃんにコツンと小突かれる。
いたっ!
あんたバカ!?!一番疑うべき男になに弟子入りしてんの!?
え、石川くんは正直者だもん
どこがよ!胡散臭い塊じゃない!
どうやらつーちゃんは、石川くんをあまりよく思っていない様子。
ほんとに全然そんなのことないの!すごく素敵な人!絶対悪い人じゃないよ!
女癖悪いわりによく女の子泣かせてる。おまけに、所構わず下品なことしてる男のどこが悪い人じゃないの。
泣かせてる?でも、私の相談に親身になってくれるしすごく優しいんだよ!
…へ?あんまり人に干渉しないし、行為以外は冷たいってもっぱらの噂だけど
つーちゃんの言う石川くんが、私の知ってる彼に当てはまらないので2人で首をかしげた。
…朱里先輩…?おはようございます。
すると後ろから透き通る声がする。
あ、え、要くん!
あ、お話中にいきなり会話に入ってごめんなさい……
あ、い、いいの!
ジュースを買いに来たら先輩達がいたので…翔平先輩にも話しかけたかったんですけど講義があるんで我慢です。
相変わらず可愛い彼に思わず顔が緩んだ。
あ、そうだ!ここは要くんに聞けばいいじゃないか。
ね、要くん!!石川くんってすごく優しいよね!!
同じ弟子の彼に肯定してもらって、つーちゃんにドヤ顔するつもりだったのに
…えっと…その…翔平先輩は女性には結構冷たいと思います。
まさかの答えが返ってきた。
ほら。あんた騙されてんじゃない?
そ、そんなことないよ!!
私達が軽く言い争うと、要くんはおどおどしながらごめんなさいなんてつぶやく。
朱里まさか石川くんのこと好きで追いかけ回したり、そんなこと言ってるんじゃないよね。大丈夫?
あまりにも私が石川くんを庇うからか、つーちゃんが疑いの目を向けてきた。
いやいや…そりゃ、朱里ちゃんには優しいんだもん( 〃▽〃)
一般論とは話し合わないのは当然だよ~
朱里ちゃんが石川くんを変えたんだもの(*´ω`*)