高校生に　なったら
高校生に　なったら

友達　一人は出来るかな

そーろそーろやめたいな

トイレで弁当　食べるのを

ぼっち　ぼっち　ぼっちっち

僕は、誰がどう見ても、完璧だ。


それはこの――

――この愚妹と比べてもよくわかる。


学力、運動、ゲームセンス。
全てにおいて他人より優れ、
平均値を軽く上回る僕。



しかしそんな僕に、
こんな妹が勝てる点も、

ただ一つだけ、存在する。

驚いた。
この猿は四字熟語なんてものを知っているのか。

ここで言い返さなかったのは、
言葉が無かったからではない。


これ以上の問答を不毛としたからだ。




この知能ゼロのノンIQ人類とおしゃべりしたところで僕の人生にプラスがあるわけでも何でも無い。

部屋に戻って明日の予習をした方がマシだ。

背中越しにぶつけられる声は、
思考停止してシンバルを叩き続ける猿の人形と酷似している。



はんっ。
逃げる？
僕が？
どうして？
友達が妹よりも少ないからか？
そもそも友達がいないからか？

ふふっ。
なんだそれはいったい。

友達なんて、

そんなものなんてな……

そんなものは、そう、必要なかったんだ！


これまでの人生で一度だって。


僕は僕一人で生きてこられたし、
友人なんて作って苦悩している奴は
ひたすら馬鹿だと思っていた。


しかし、
しかし……！

愚妹。
愚かでおつむが足りず、
理解しようとする脳も、
勉学に勤しむ精神もないあの妹。


そんな妹に、


僕が…………馬鹿にされた……！！

友達がいない。


その程度の事で、
己が沽券に傷が付くのであれば、

それを作るのもやぶさかではない。

見てろよコミュ力だけのおもちゃ猿め……！
お前なんぞが僕に勝てることなんてこの世に一つだってないことを思い知らせてやる……！！

人生に必要なものは、全てマニュアルがある。



進学に必要なものは教科書に載ってあるし、
犯していけないことは六法全書を見ればわかる。



友達作りに関して、
ネットで調べれば何らかの知識を得る事も可能だろうが、せっかくだ。
自分で作ろう。




くくく……。
大丈夫だ。
今までの人生経験。
これまでの人間観察。

これらを駆使すれば容易いことだ。

どうやら、マニュアルの基板が完成したと共に、
机で寝てしまったらしい。



間もなく登校時間だ。



さて。



僕の完全性に打ち震えるがいいさ、
愚かで卑しい妹め！！

僕は完全友人作成マニュアルを、
バッグにそっと仕舞い、
踊る胸と共に準備をする。


くくく……


今日で友達が三桁になったら、
あの妹はどんな顔をするだろうな……