数日後、ボクは部室でギターを弾いていた。
もちろん、もなみ先輩と一緒だ。
数日後、ボクは部室でギターを弾いていた。
もちろん、もなみ先輩と一緒だ。
ああ!くそ!
うまく指が動かない!
そうね、でもそれが当たり前なの。
最初から、自転車に乗れる人なんかいないでしょ?それと同じよ。
はい……、そういえばボク。
自転車の練習で何回もコケました。
痛かったでしょ?
は、はい……。
で?今、ギターの弦を押さえている指は痛い?
痛いです……。
とっても……。
ほらね……。同じでしょ?
ほ、ホントだ……。
お、同じだ……。
最初は誰でも……痛いの……。
は、はい……。最初は誰でも痛いんですね。
でも、それが段々快感に変わっていくのよ……。
そ、そうなんですね……。
か、快感に……。
その時、部室のドアが開いた。
ちょっと!何してるんですか!?
え?な、ナニって……。
ギターの練習よ?
そ、それにしてはお二人とも、かなり良い雰囲気でしたけど?
そ、そうかな?
そ、それに。
もなみ先輩は全国バンド大会に出ることはできないので、今更しょうた君の練習をしても仕方ないのでは?
ああ、それなら大丈夫よ。
な、なんでですか?
う、うわぁ……かわいいよぉ~。
間近でもなみ先輩の吐息がぁ……。
もなみ先輩は、新聞の切り抜きを見せた。
そこには、こう書かれていた。
これを見てみて!
えーっと、なになに?
「アイドルのきょうこ!」
熱愛相手を探す!
これにともない、
『バンド大会』から『ギタリスト大会』に
大会の名目を変更!
これにより、一人でも応募出来ることが決定!
さぁ!キミも「アイドルきょうこ」の彼氏になろう!
――記者名 田所 権蔵
な、なるほど。
これなら、しょうた君一人で出られますね。
でしょ?だから練習の付き合いしてるの!
つ、付き合いですか……。
そ、そうよ?
ボ、ボクともなみ先輩が付き合う……。
って事にもなりますね。
そ、そういう事にもなるのかな……。
なりません!
頭腐ってるんですか?
しょうた君。
あなたが幼なじみと付き合う為に、もなみ先輩は頑張っているんでしょう?
そ、そうだった!
そ、そうだったわね……。
その時、部室のドアが開いた。
遅くなってすまん。
めいこ!どうだった?
ふむ。やはり、職員室のパソコンで見たが、ギタリスト大会の予選のお題は
『オルタネイトピッキング』じゃ。
オルタネイト……。
予選っぽいわね。
な、なんですか!?
それ!
オルタネイトも知らないなんて、やっぱり初心者ね。そしてバカね。
ひ、ひどいですぅ!
ピッキングには、弦を上から下に弾く
「ダウンピッキング」と、
逆に下から上に弾く
「アップピッキング」の二通りがあるの。
このダウンピッキングとアップピッキングを、
規則正しく交互に繰り返すピッキングこそが!
オルタネイトピッキングじゃ!
ああ、めいこ先輩!そこはワタシのセリフ……
でも、大声を出すめいこ先輩も素敵!家に帰ったら妄想●●●しなきゃ!
で、でも、なんか難しそうですね……。
あら。オルタネイト自体は簡単よ?
でもね、ピッキングこそ大事なの。
そうじゃ、基本というのは固めれば固めるほどに良い。
じゃ、じゃあまず。
ど、どうすればいいんですか?
これを使うと良いわ。
な、なんですか?
この機械は!?
呆れた……。
メトロノームも知らないのね。
な、なんですか?
そのモンスターみたいな名前は!?
ふふふ。
モンスターじゃないわ……。
これはリズムを一定で鳴らす機械よ。
そう……。
まずは、これに合わせてピッキングをするのじゃ。
は、はぁ……。
リズムは音楽の『命』じゃぞ?
しょうた殿。
そう……。リズムが狂うと音楽は……。
死にます!
ひ、ひぃぃぃぃ!!!
つづく……。