酷くかび臭い匂いが鼻を突き、目を覚ます。いつもなら、見慣れた自分の部屋が目に入るはずだった。
・・・しかし、そこは全く見覚えのない場所であり、また、異様な場所だった。
というのは、視界を埋め尽くすおびただしい量の本、本、本・・・どんなに見上げてもてっぺんが見えない無数の本棚には、今まで見たことのないような数の本が、隙間なく収まっていた。
今の人類の技術では到底なせる業ではない。
そして、その場所をさらに異様なものにしていたのは、先ほどより目の前に立っている、笑い顔のような仮面を被った男だった。
全身黒づくめの長身ーー白いところと言えば、燕尾服の襟元から覗くシャツと手袋だけだろうーー、手袋をはめた手には、薄暗く光を発するカンテラが引っかかるようにして、ゆらゆらと揺れていた。