20XX年 ―アール王国―

少女

ここはいつ見ても変わらないわね。ずっとキレイなままだわ・・・

湖で少女が1人佇んでいる。
その少女はどこか寂しげに遠くを見つめていた

私が住むアール王国は、かつては緑豊かでこの湖のようにとても美しい国だった。
しかし、近年突如発生した謎のモンスター襲撃事件により、4つの地区のうち3つは壊滅してしまった。
かろうじて残ったのは、ここミレニア地区のみ。

生き残った少年少女達は、モンスターと戦う人間兵器として胸にチップが埋め込まれる。
そのチップは魔道書のような役割をしていて、魔法を使用したり身体能力を底上げしたりする力がある。

そんな少年少女達を人々は‘アリア’と呼び、町の中心部にある巨大なドーム型の建物【通称:アヴィス】を拠点とし活動している。

私もそのアリアの一員で昨日までモンスターと戦っていた。
一緒にいた仲間は戦いの途中で戦死してしまい、私だけが生き残ってしまった。

この戦闘には終わりが見えない。いつどこで再びモンスターが現れるのかが分からない。
そんな不安な毎日を過ごしている。

今はつかの間の休息。小さい頃からのお気に入りのこの湖【ワンダー湖】で疲れを癒していた。

ピリリリリリ・・・・・!!!!!!

けたたましい電子音が、右腕にはめた小発信機から鳴りだした。
この音は緊急事態の招集時のもので、滅多に鳴る事は無い。久々の事に少し緊張が走る。

ふいに冷たい風が吹き出し、肩まで伸びた栗色の髪がなびく。
なんだか嫌な予感がする。この先にとんでもないことが待ち受けているような・・・

根拠の無い勘だが、こういう悪い勘というのは大抵当たるものだ。
呼吸を落ち着かせ、少し駆け足でアヴィスへと向かった。

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