第五話
『きょうこちゃん』

しょうた

ふう……。やっとギターを買ったぞ!
先輩に教わった選び方で、選んでいたら結局2時間もお店にいちゃったよ……。

しょうた

さーて!
おもいっきり弾くぞー!
まずはギターと一緒に買った教則本を開いて……と。

その時……。
ボクの部屋の窓が開いた。

しょうた

え!?
誰!? 泥棒!?

りつこ

違うわよ!
軽音楽部の者よ。

あなたに忠告しにきたわ!

しょうた

えー!
ここ2階ですよぉ?どうやって上がってきたんですか?

それに忠告って……。

りつこ

もなみ先輩には近づかないで!
”私”の「もなみ先輩」なのよ!

しょうた

な、なんなんですか?いきなり!

りつこ

私は軽音楽部でベースを担当している
「りつこ」よ。
二年生だから、あなたの先輩。

りつこ

今日一日、あなたと、もなみ先輩をつけてたけどね……。

りつこ

もなみ先輩にギターを教えてもらうなんて、
100年早いわよ!

それに、あなたみたいな「男」が部に入部するなんて、私許せないのよ!

しょうた

た、大変だ……。

この人「レズビアン」で
「ストーカー気味」だ……。

ど、どうしよう。

りつこ

それにギターを弾けないのに軽音楽部に入部したいなんて、どういう了見?
何が目的なの?

どうせ「ただモテたい!」とかそういうゲスな感じでしょう?

しょうた

ち!違います!

りつこ

なら、何よ!?
言ってみなさいよ!

しょうた

実は……。

幼稚園の頃に、約束をしてて……。

りつこ

ふうん。

誰と?

どんな?

しょうた

えー。言うんですか?

ボクは、りつこさんに説明することにした。


幼い日の出来事を……。

あれは、ボクがまだ「幼稚園」に通っている時だった……。

しょうた

え?なんて言ったの?

きょうこ

うん。
私ね……。
「おしっこし」するんだ。

しょうた

ああ、おしっこね。
トイレに一緒に行ってあげようか?

きょうこ

ちがうわよ!
しょうたくんのバカ!

「おしっこし」っていうのは、違う町に行っちゃうってことなのよ!?

しょうた

え?!

それじゃあ、もう……。
幼稚園で一緒に遊べないの?

きょうこ

うん……。

しょうた

そ、そんなぁ……。

きょうこ

じゃあ、大きくなったらしょうたくんが迎えに来てくれる?

しょうた

でも、遠いところに行くかもしれないんでしょ?

ボク、わからないよ……。

きょうこ

大丈夫!
しょうたくんがカッコイイギタリストになれば、有名になるでしょ?
その時、テレビで私を呼んで!

しょうた

そうだね!
そうしたら、会えるね!

きょうこ

うん!楽しみね!

しょうた

でも、それって「けっこんする」ってこと?

きょうこ

そこはわからないわ!
「未来は常にゆれうごくものだ」って、ママが言ってたもの。

しょうた

ふぅーん。
むつかしいんだね。

きょうこ

そうね。子供の私たちにはまだまだわからない事だらけね……。

あれから、年月が経ったけれど……。

未だに「きょうこちゃん」とは連絡が取れない。

りつこ

そんなのTwitterとか、Facebookで探せばいいじゃない?

しょうた

それが……。
探したんですけど、全然見つからなくて……。

りつこ

探し方が悪いんじゃないの?

どうやって探したの?

しょうた

はい……。
「きょうこちゃん」で検索を何回もしました。

りつこ

え?
通っている幼稚園とか、出身地とかは?

そういうので、すぐわかるでしょう?

しょうた

あ、なるほど!

りつこ

やはり、思った通りのバカね。

ちょっとスマホ貸してみなさい。

しょうた

ああ!勝手に何してんですか!

りつこ

あら?ロックもかけないで、不用心ね。

しょうた

ちょ!ちょっと!
なにしてんですか!?

りつこ

ほら、言ってみなさいよ。

あんたがその「きょうこちゃん」と行っていた幼稚園の名前を。

ボクは、諦めて、りつこさんに
「きょうこちゃん」に関するすべての情報を言った。(幼稚園名や年齢など……)

しょうた

うう……。
勘弁してくださいよぉ~。

きっと、見つかりませんよ~。

りつこ

あら?見つかったわよ?
ほら……。


って……。

りつこ

これ……、本当?

しょうた

な、なんなんですかぁ?

見せてくださいよぉ~。

ボクは、目を疑った……。




なぜなら、りつこさんが見せてくれた
「現在のきょうこちゃん」が、とんでもなく
有名になっていたからだ……。

そう……。

ボクの幼なじみの
「きょうこちゃん」は……。

アイドルになっていた!

つづく

第五回「きょうこちゃん」

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