第五話
『きょうこちゃん』
第五話
『きょうこちゃん』
ふう……。やっとギターを買ったぞ!
先輩に教わった選び方で、選んでいたら結局2時間もお店にいちゃったよ……。
さーて!
おもいっきり弾くぞー!
まずはギターと一緒に買った教則本を開いて……と。
その時……。
ボクの部屋の窓が開いた。
え!?
誰!? 泥棒!?
違うわよ!
軽音楽部の者よ。
あなたに忠告しにきたわ!
えー!
ここ2階ですよぉ?どうやって上がってきたんですか?
それに忠告って……。
もなみ先輩には近づかないで!
”私”の「もなみ先輩」なのよ!
な、なんなんですか?いきなり!
私は軽音楽部でベースを担当している
「りつこ」よ。
二年生だから、あなたの先輩。
今日一日、あなたと、もなみ先輩をつけてたけどね……。
もなみ先輩にギターを教えてもらうなんて、
100年早いわよ!
それに、あなたみたいな「男」が部に入部するなんて、私許せないのよ!
た、大変だ……。
この人「レズビアン」で
「ストーカー気味」だ……。
ど、どうしよう。
それにギターを弾けないのに軽音楽部に入部したいなんて、どういう了見?
何が目的なの?
どうせ「ただモテたい!」とかそういうゲスな感じでしょう?
ち!違います!
なら、何よ!?
言ってみなさいよ!
実は……。
幼稚園の頃に、約束をしてて……。
ふうん。
誰と?
どんな?
えー。言うんですか?
ボクは、りつこさんに説明することにした。
幼い日の出来事を……。
あれは、ボクがまだ「幼稚園」に通っている時だった……。
え?なんて言ったの?
うん。
私ね……。
「おしっこし」するんだ。
ああ、おしっこね。
トイレに一緒に行ってあげようか?
ちがうわよ!
しょうたくんのバカ!
「おしっこし」っていうのは、違う町に行っちゃうってことなのよ!?
え?!
それじゃあ、もう……。
幼稚園で一緒に遊べないの?
うん……。
そ、そんなぁ……。
じゃあ、大きくなったらしょうたくんが迎えに来てくれる?
でも、遠いところに行くかもしれないんでしょ?
ボク、わからないよ……。
大丈夫!
しょうたくんがカッコイイギタリストになれば、有名になるでしょ?
その時、テレビで私を呼んで!
そうだね!
そうしたら、会えるね!
うん!楽しみね!
でも、それって「けっこんする」ってこと?
そこはわからないわ!
「未来は常にゆれうごくものだ」って、ママが言ってたもの。
ふぅーん。
むつかしいんだね。
そうね。子供の私たちにはまだまだわからない事だらけね……。
あれから、年月が経ったけれど……。
未だに「きょうこちゃん」とは連絡が取れない。
そんなのTwitterとか、Facebookで探せばいいじゃない?
それが……。
探したんですけど、全然見つからなくて……。
探し方が悪いんじゃないの?
どうやって探したの?
はい……。
「きょうこちゃん」で検索を何回もしました。
え?
通っている幼稚園とか、出身地とかは?
そういうので、すぐわかるでしょう?
あ、なるほど!
やはり、思った通りのバカね。
ちょっとスマホ貸してみなさい。
ああ!勝手に何してんですか!
あら?ロックもかけないで、不用心ね。
ちょ!ちょっと!
なにしてんですか!?
ほら、言ってみなさいよ。
あんたがその「きょうこちゃん」と行っていた幼稚園の名前を。
ボクは、諦めて、りつこさんに
「きょうこちゃん」に関するすべての情報を言った。(幼稚園名や年齢など……)
うう……。
勘弁してくださいよぉ~。
きっと、見つかりませんよ~。
あら?見つかったわよ?
ほら……。
って……。
これ……、本当?
な、なんなんですかぁ?
見せてくださいよぉ~。
ボクは、目を疑った……。
なぜなら、りつこさんが見せてくれた
「現在のきょうこちゃん」が、とんでもなく
有名になっていたからだ……。
そう……。
ボクの幼なじみの
「きょうこちゃん」は……。
アイドルになっていた!
つづく