椿に案内された城は何度も見た場所だった。

凛として咲く花の如く

椿の提案で俺とかぐやさんは湯に浸かることになった。

四季

ここまでは同じ流れか・・・。

椿を助けた俺は、城に案内され、湯に浸かって身体を癒してから椿とゆっくり話すことになり、その時に椿の正体を明かされる。

今までと違うのは【かぐやさん】がいるということだろう。

俺が風呂の入り口の前でそんなことを考えていたら、かぐやさんも何か考えてそうだった。

四季

かぐやさん?

かぐや

はい!?

彼女は俺が声をかけると凄い驚いていた。

四季

何考えてたんだろう?

彼女の考え事が気になった。

でも、素直に聞くことも何だか癪にさわるので意地悪することにした。

四季

一緒に入る?

かぐや

なっ!はぁっ!??え!?

彼女は思った通りの反応をしてくれた。

四季

かぐやさんってからかうと面白いよな・・・。

顔を真っ赤にしてビックリする彼女。

彼女の表情はコロコロ変わるので面白い。

四季

冗談だよ。
またあとでね。

彼女にそう言って俺は風呂に行くことにした。

湯に浸かり、くつろいでいると誰かが入ってきた。

かぐや

はぁ〜・・・

四季

は?

・・・なぜか、かぐやさんの声が聴こえた。


風呂ということはお互い裸。

確認したことはないが、俺の言動にいちいち顔を赤くするのを見るかぎり、彼女も嫁入り前だろうし、さすがにこの状況はマズイだろう。

彼女に声をかけるか?

俺に気がついていないのか、かぐやさんはそのまま独り言を呟いている。

かぐや

私は確かに自分の部屋で寝てたはず。
四季のハピエン見て、そのまま寝たんだもん。
それは間違いない。

四季

!!

どーゆうことだ?

俺のなんだって?

はぴえん?

彼女は自室で【俺】を見ることができるのか?

はぴえんって何だ?

俺に気がつかない彼女に声をかけようとしたが、俺はそのまま彼女の独り言を聞くことにした。

かぐや

元の世界に帰るにはどうしたらいいの・・・?
そもそも戻れるの?
戻ったとして浦島太郎みたいなことになってたらどーしよう・・・。

四季

うらしまたろう・・・?
そんな物語も聞いたことあるような・・。

「あぷり」といい「はぴえん」といい、彼女の世界では不思議な言葉があるもんだ。

・・・残念ながら俺には全く意味がわからないのだけど。

四季

聞いてもかぐやさん言わないしな・・・。

そんなことを考えていたら耳を疑うようなことが聞こえてきた。

かぐや

元の世界に戻れるかわからない状態だけど、こっちの世界に来て良かったことは、大好きな四季とリアルで会えたことだけね・・・。

「大好きな四季とリアルで会えたことだけね」

俺のことがすき・・・?

四季

へぇ・・・。かぐやさんは俺のこと好きだったんだ?

気がつけば勝手に聞いていた。

かぐや

大好きよ!
あんなに意地悪なのに実は優しくて、かっこよすぎるとか反・・

四季

・・・。

彼女は俺のことが好き。

かぐや

そくぅ!?

あぁ、だから俺が近づいたりしたら顔が赤くなっていたのか。

納得。

四季

それは良いこと聞いた。

俺は【彼女】と出会ったのは今回が初めてだ。

何度この世界を繰り返しても【彼女】は登場しなかった。

でも今回に限って【彼女】は登場した。

その【彼女】は俺を知っていた。

そして、どうやら彼女は

俺のことを好きらしい

かぐや

なっ、えっ、どっどどど・・

四季

口をパクパクさせて魚みたいだね。
それともエサが欲しいの?
「大好きな俺」の口づけとか、ね?

彼女は不思議だ。

そして隠し事が多い。

きっと彼女は俺が知りたい【真実】を知っている。

俺がどんなに手を伸ばしても知ることができない【真実】

そう思うと無性に苛立った。

だから、少し意地悪したくなった。

かぐや

はっ、裸なんですけど!!!
そして近い!!!

四季

残念。

彼女は、やっぱり顔を真っ赤にさせて俺から離れた。

かぐや

ど、どーして四季が女風呂にいるの?!

四季

それはこっちの台詞。
どーしてキミは男風呂にいるの?

かぐや

え?男風呂・・・?
私ちゃんと案内された女風呂に・・・

彼女は少し考えて・・・

かぐや

わぁー!申し訳ございません!!!

急に立ち上がろうとした。

四季

ちょっ・・!!

さすがに俺もビックリして、彼女の腕を引っ張る。

四季

裸ってことわかってる?
・・・それとも俺を煽ってるの?

かぐや

な、なな・・・!!

俺も恥ずかしかったから彼女にバレないように必死だった。

四季

ごめんごめん。
少しからかい過ぎた・・・。

彼女の表情や行動はわかりやすいのに、たまに俺の予想外のことをする。

彼女をからかうつもりが俺の方が慌ててしまってる。

四季

椿と出会う前から女の裸なんて見慣れてるんだけどな・・・。

少しだけ彼女を強く抱きしめる。

四季

キミは一体俺の何を知っているんだろう・・・。

彼女を抱きしめながら俺は質問した。

四季

キミは「私は確かに自分の部屋で寝ていたはず。四季のハピエン見て、そのまま寝たんだもん。それは間違いない。」って言った。
キミは自分の部屋で「俺」のことを見ることができるの?

かぐや

・・・ごめんなさい。
今はまだ何も言えない。

予想通りの答えだった。

でも確信した。

彼女は俺の知らない真実を知っている。

ただ、いつ話してくれるかはわからない。

俺は気が長い方じゃない。

だけど・・・

四季

・・・キミは本当に不思議だね。
「仕方ないから今は」許してあげるよ。

仕方ないから今は許してあげる。

四季

これから俺はキミに酷く残酷なことをお願いしてしまうだろうから・・・。

俺のことを大好きだというキミに酷く残酷なことをお願いしなければいけないから。

「俺を殺して」

他の人じゃ駄目だったことも、きっとキミならできるんだ。

存在自体が不思議なキミになら。

俺のことが好きなら救って欲しい。

哀れな俺を。

四季

俺は反対向いてるから、かぐやさんは先に上がって椿さんのとこに行ってて。

かぐや

う、うん。

四季

じゃあ、あとでね。

そう言って俺は彼女を自分の腕の中から解放した。

なくなった温もりが少し寂しいと思ったのは、きっと気のせいだ。

四季

かぐやさんの髪綺麗だったな・・・。
肌も白かったな。

腕の中に閉じ込めてあたふたしている彼女を可愛いと思ったのと同時に、もう少し見ていたいと思った。

この感情はなんだろう。

四季

誰かを可愛いと思ったり、からかいたいと思ったりするなんて、ね。

触れ合っていた手を見ながら呟く。

椿に対する感情とは全く別の感情。

四季

本当キミは何なんだろうね・・・?

俺の前に突然現れた【彼女】は俺の微かな希望でもある。

何かを隠している【彼女】

【彼女】が帰ってしまう前に俺の【願い】を聞いてもらわないといけない。

四季

なるべく急がないと・・・。

話の終わりを迎えるのは、俺が炎上した城から椿を助け出す日。

その日を迎えるまでに、俺を殺してもらわないといけない。

ただ、【彼女】がいつ帰ってしまうかもわからないいじょう、悠長にもしてられない。

四季

早く手を打たないと・・・。

そんなことを考えていたら時間が経っていた。

俺は急いでかぐやさんと椿のとこへ向かった。

かぐやさんと椿は俺がいない間に何を話していたのだろう?

椿はかぐやのことをいつの間にか呼び捨てにしているし・・・

仲良くなっているみたいだ。

椿が礼の言葉を言い、何かを言いかけた瞬間、障子が勢い良く開いた。

椿!!

椿

え、縁?

四季

縁!?なんで縁がこのタイミングで・・・。

俺がそう思ったのと同時に、もう一人同じことを思った人物がいたらしい。

かぐや

何で今・・・。

四季

!!

かぐやさんだ。

どうやら彼女は縁のことも知っているらしい。

そして、本来ならばまだ、ここには登場しないことも。

四季

・・・。

もしかして彼女は俺がずっと抜けられない、この物語の全てを知っているのだろうか・・・?

つづく

第3話〜四季目線〜

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