津雲 雅臣

…母さん、今日は早いんだね…

今日は早番なのよ…

津雲 雅臣

…それで、どうしたの?

私の代わりに、これをやって欲しいのよ…

 スマホの画面を見せる母。

津雲 雅臣

なにこれ…?支払画面?

そうなの!母さん、ネット通販ってやつに挑戦してみたの!

津雲 雅臣

はぁ…で、これがどうしたの?

いやぁ…その、買ったまでは良かったんだけど支払方法がわかんなくって…コンビニでできるらしいからやってきてくれる?

 んな面倒なことを…

 なぜ調べてからやらないんだ…

あんた最近外でてないでしょ?たまには外の空気でも吸ってきなさい!

 最後に外に出たのは…いつだったか忘れたな。

 まぁゲームはしばらくメンテだし、丁度いいだろう。

津雲 雅臣

わかったよ。その画面俺のスマホに送って。支払してくるからさ。

ありがと~♪お金は後で払うわね

津雲 雅臣

ん、了解

 さて…久しぶりの外なんだ。

 じっくり外の空気を吸ってくるとしよう。

津雲 雅臣

じゃあ、行ってくるよ!

いってらっしゃい!
なるべく早く帰るようにねー

津雲 雅臣

津雲 雅臣

えーと、とりあえずコンビニに向かえばいいんだよな

津雲 雅臣

最近、人と話してないから、店員と話すときに声出るかな...

津雲 雅臣

因みに、母さんはどんな物を買おうとしてるんだ?

 ポケットからスマホを取り出すと、支払画面のスクリーンショットを見る。

津雲 雅臣

ん?商品名は書いてないけど…父さん宛だな…プレゼントか何かかな?

津雲 雅臣

とりあえず、コンビニに向かうとするか…

 俺は公道に出て自宅の門を閉めると、コンビニ向かおうとした。

 その時…

あら…貴方……。あぁ、確か!!津雲さん家の雅君!?!?

 見知らぬセレブ風の女性が、声を掛けてくる。

津雲 雅臣

誰…だっけ、覚えてないなぁ…。
適当に相槌打っとけばいいか…

津雲 雅臣

あぁ…、お久しぶりです。え…っと、あの…ちょっと、コンビニに行く用があるんで…

あらそうなの?
ああ!!そう言えば、うちの家にイチゴが届いたの!!
あっまいイチゴが!!
よかったら持っていきなさいよ!!

津雲 雅臣

ちっ、荷物になるじゃん…。でも、イチゴか…。た、食べたいかも…

津雲 雅臣

頂いてもいいんですか??

いいわよ!!本当にあっまいんだから

 そう言うと、その女性は俺の手を引き、その女性宅前まで俺を連れて行った。

さぁ着いたわ。ちょっと待っててね!

津雲 雅臣

はい

津雲 雅臣

ん…、名前見ておこう。えーっと…『林』さんか…。ごく普通の名前なのに、でっけぇ家だな…。近所にこんなでっけぇ家あったっけ…。

津雲 雅臣

ていうか、俺の名前や容姿を知っているってことは、小さい頃、世話になったのかもな…もう、全然覚えてないや…

ごめん、ごめん…
イチゴこれしかなかったんだけど…
ごめんねぇ…

津雲 雅臣

!!

津雲 雅臣

…って言って5箱!?5箱も食べれねぇよ…
しかも、白イチゴって…どんだけ金持ちなんだよ!

津雲 雅臣

母さん、こんなに貰い物したら、さすがに怒るだろうなぁ…とりあえず、電話してみよ…

”プップップップッ…”

使用料の上限が過ぎているため通話ができません…

 …なっ。

 今月使いすぎたか…

津雲 雅臣

…一回帰るしかないな

津雲 雅臣

林さん。ありがたく頂きます。今度、母とお礼に来ますので。

お礼なんていいわ。美味しく頂いてね!!

津雲 雅臣

ありがとうございます!

 俺は、林さんにお礼を言うと、一度帰宅することにした。

 やっと、家に着いた…。

 白イチゴ5箱とか重すぎだろ…。

 俺はインターフォンを鳴らす。

津雲 雅臣

…あれ?母さんいないのか?

 仕方ないので、俺は持っていたスペアキーでドアを開けた。

 部屋は電気がついておらず、誰もいなかった。

津雲 雅臣

…母さん、どこかに出かけたのかな…

津雲 雅臣

そう言えば、さっき『早番』って言ってたっけ…

津雲 雅臣

まあいいや…コンビニ行こう

 俺は白イチゴをキッチンに置くと、再びコンビニに向かった。

 コンビニは、俺の家から歩いて10分程度の場所にあった。

 途中、さっき白苺をもらった林邸へ続く分かれ道があり、そこを直進して桜並木の土手っぷちに出た後、左手に歩いていき、すぐに見えてくる橋を渡った先の交差点の反対側に、目的地のコンビニがある。

 俺は『また林さんに出くわしたら大変だな…』と思い、裏路地を経由して桜並木が眩しい土手へと向かった。

 桜並木の桜は満開を迎えていて、早咲きの木には新緑も垣間見えている。

 お花見に来たのだろう、2人の保育士さんに誘導され、保育園児が『さくら~さくら~♪』と歌いながら、土手を行進している。

津雲 雅臣

卒業してもう1か月が経つのか…母さんは許してくれているけど、いつまでもこの生活のままにはいかないよな…

 桜吹雪に包まれながらそんなことを考えていると、いつの間にか橋を渡り切り、俺はコンビニの前にいた。

 自動ドアを潜り抜け、店内に入る。

いらっしゃいませー

 マニュアル通りのあいさつが俺を迎える。

 とりあえず母さんのやつを済ませないと。

 床に示されたレジへの整列順に従い、俺は並んだ。

 2人の店員がレジで対応をしている。

 そして、俺と前の人が同時にレジに案内された。

津雲 雅臣

えっと…コンビニ支払…

はい?

…いかん、久しぶりに母さん以外の人と話しているせいで、うまく言葉が見つからない。

 どうにか言葉を捻り出し、スマホ画面を見せながら店員に説明する。

津雲 雅臣

これの支払いがしたいんですけど…

はーい、お支払番号をお願いします!

 よかった、通じた!

 画面に映し出された番号をそのまま伝えて、支払いを済ませる。

”きゅ~う ぐるぐる”

 腹から出た音に、俺は思わず手をあてる。

 そういえば小腹がすいたな…

 昨日からずっとゲーム漬けだったせいで、腹がいい感じだ。

津雲 雅臣

あ、あと…

只今、あんまんがセール中でお勧めでーす

 あんまんか…久しぶりに頼むか。

津雲 雅臣

あ、じゃあ

あんまんお願いします!!

 その時、隣のレジから俺と同時にあんまんを注文する声が聞こえた…

 第2話へ続く…

第1話「出会い」(担当:剣世炸)

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