朝ぼらけ あらわれわたる セーヌ川
 ミラボー橋の 下を流れる

(本歌:権中納言定頼、アポリネール)

 リュシアンに別れのことばすら伝えられず、泣き明かしたエティエンヌは、川辺に居た。けむるように川霧が流れ、朝の光に徐々に晴れていく。川面もみえず、深々とけむり渡っていた辺りが、しだいにはっきりしてきた。
 エティエンヌの悲しみも、いつか晴れていくのだろう。
(完)

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