タケミカヅチより、『平和的に葦原の中つ国(あしわらのなかつくに)を平定した。』との報告を受け、アマテラスは身の引き締まる思いがした。彼女にとって国譲り自体は目的ではない。ここからが本当のスタートなのだ。アマテラスは両親ができなかったことを成し遂げたかった。
タケミカヅチより、『平和的に葦原の中つ国(あしわらのなかつくに)を平定した。』との報告を受け、アマテラスは身の引き締まる思いがした。彼女にとって国譲り自体は目的ではない。ここからが本当のスタートなのだ。アマテラスは両親ができなかったことを成し遂げたかった。
よし。早速、長男のアメノオシホミミに統治者として降りてもらいましょう。
えっ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ?
アマテラスの決意を横目に、オモヒカネはつい声が出てしまう。
オシホミミって言ったら、国譲りの時一番最初に逃げ帰ってきた奴じゃないか。あんな頼りない奴で大丈夫かな ・ ・ ・
しかし、アマテラスは気にする様子も無く、高木にオシホミミを呼びに行かせた。部屋に入ってきたオシホミミは今日もなんだか気怠そうにしている。
うぅん。やっぱり心配だ。
オシホミミ、あなたが統治者として、葦原の中つ国を治めなさい。
え ・ ・ ・ ・ ・ ・ めんどks ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・
ほら、やっぱり嫌そうじゃん。この人絶対、人の上に立つのとか向いてないって。
オモヒカネは心の中で、オシホミミが断るようにと祈った。
その願いが届いたのかどうかは分からないが、オシホミミはオシホミミで必死に断る理由を考えていた。
だって、このタイミングで葦原の中つ国に降りたら、絶対、高天原に帰って来れないじゃんか。嫌だよ。この生温い生活を捨てて下界に行くなんて。絶対に嫌だ。でも、母さんのことだ ・ ・ ・ 簡単には断れないし、それなりの理由が必要だよな ・ ・ ・ ・ ・ ・
あーーー ・ ・ ・ えっと ・ ・ ・ ・ ・ ・ 俺も行きたいのはヤマヤマなんだけどなぁ ・ ・ ・ ・ ・ すげぇ準備してたんだけどなぁ ・ ・ ・ でも、ちょっと無理かも。
はぁ??なんでよっ???
アマテラスはご立腹の様子だ。オシホミミは面倒くさそうに頭をぽりぽり掻いた。
んーーいやー ・ ・ ・ ・ ・ ・ 実はさぁ ・ ・ ・ できちゃったんだよね。
え?できちゃったって何がよ。
・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 子供。
はぁっっっ!?いつの間にっ???相手は誰よっ???
オモヒカネは一瞬、オシホミミからの視線を感じた気がした。
ん?何だよ。誰なんだよ?
オモヒカネに漠然とした不安がよぎる。
・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 千々姫。
っっっつつ!!!!なんだとっっっ!!!!????
テメェ、俺の妹に何してくれてんじゃゴルアァァァァ!!!!!!!!
千々姫といえば、オモヒカネが溺愛している妹だ。オモヒカネの目が完全に血走っている。アマテラスは、彼がこんなにブチ切れている姿を初めて見た。普段全然怒らないせいもあって、めっちゃ怖い。
ちょっ ・ ・ ・ ・ ・ ・ オモヒカネ、落ち着いてよ ・ ・ ・ !
オモヒカネをなだめるアマテラスを無視して、オシホミミは面倒くさそうに彼を睨み返した。
・ ・ ・ んなこと言ったって、しょうがねーじゃんか。あいつが勝手に乗っかってきたんだから。
オモヒカネはオシホミミの胸ぐらに掴みかかった。
ふっっざけんなあぁぁ!!!俺の妹がそんなにエロいわけがないっっ!!!!
るせーな ・ ・ ・ 別にいーじゃねぇか、やっちまったもんは。
いいわけ無ぇだろっ!!許さねぇよっっ!!!表に出ろっ!!!ブッ殺!!!
チッ ・ ・ ・ めんどくせぇなぁ。このシスコン野郎 ・ ・ ・ ・ ・ ・ やんのか?あぁ??
あぁ!望むところだっ!!!
ちょっ!!オモヒカネ、落ち着いてってば!!!
このままだと殺し合いもしかねないと、アマテラスが慌ててオモヒカネを止めると、この騒ぎを聞きつけた千々姫が慌てて仲裁に入って来た。
わぁーーわぁーーーー!!
ミミぃ、お兄ぃストーーーーップ!!
ストーーーーーーーーーップ!!
オモヒカネの血走っていた目が、急に涙目に変わる。
あぅっっ!!千々ぃぃぃ~~~!!!大丈夫だったかっっ??この男に変なことされたのかっっ????クソッッ!!お兄ちゃんが今すぐ、黄泉に送ってやるからなっっっ!!!
オモヒカネは今にも十拳の剣を抜きそうだ。千々姫は必死にそれを押さえつけた。
お兄ぃ、落ち着いてってば!千々とミミは、ラブラブでベビーちゃんを授かったのっっ!!!もっと、喜んでよ!!
は??で ・ ・ ・ でも ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・
・ ・ ・ ほら、ニニギ、入って来なさい。
・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・
千々姫の声を聞いて、扉の後ろから小走りで少年が入って来た。そそくさと、母親の後ろに隠れると、不安そうな上目遣いでオモヒカネのことを見つめた。
・ ・ ・ っっ!!
ほら、ニニギ、おじちゃんにご挨拶は?
・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ こんにちは。オモヒカネおじちゃま ・ ・ ・
オモヒカネはハートに矢の刺さる感覚がした。
これが甥っ子 ・ ・ ・ めちゃめちゃ可愛いっっ!!!
ふふ~可愛いでしょう??
かっ ・ ・ ・ かわ ・ ・ ・ ・ ・ ・
オモヒカネがニニギに心を奪われたその瞬間。横腹にタックルを受け吹き飛ばされた。
アマテラスだ。
きゃーーー可愛い~~!!!やだぁーー私おばあちゃんじゃなぁ~~~い!!!なんか、変な感じ!!孫かぁ~たまんないわぁ~~~!!!
つーわけだから、ニニギに行かせよう。
どさくさに紛れてオシホミミが提案をする。
うんうん、大賛成っっ!!ニニギちゃん、葦原の中つ国に降りて、国を治めるのよ。わかった?
はいっ、おばぁちゃま!
う"っっっ!! ・ ・ ・ ・ ・ ・ え ・ ・ ・ えっと ・ ・ ・ ・ ・ ・ おばぁちゃまって、間違ってはいないんだけど ・ ・ ・ 間違ってはいないんだけどね ・ ・ ・ ・ ・ ・ うぅん ・ ・ ・ 試しに、アマテラちゃまって呼んでみようか。
?? ・ ・ ・ アマテラちゃま??
はうぅっっ♪♪よし。これでいこう!!私、ニニギちゃんが地上に降りる前に、道が安全か確認してくる~~!
アマテラスはスキップをしながら部屋を出た。
あ、私も行きます!!
オモヒカネも後に続く。
そんな2人の後ろ姿を見て、オシホミミはホッと胸を撫で下ろした。
よかったなー。国を治めるんだてさー。がんばれよーニニギ。
はいっ!!
ニニギの純粋な笑顔が輝いた。