甲板で見張りをしていたマサは、水平線上に何かを見つけた。
じっと目を凝らしてみると、それが船だと気付いた。そして、その船の帆は
甲板で見張りをしていたマサは、水平線上に何かを見つけた。
じっと目を凝らしてみると、それが船だと気付いた。そして、その船の帆は
・・・・黒地に赤い鬼のマーク!!
マサは船内に駆け込むと大声で叫んだ
四時の方から敵船。”鬼火”だ!!
マサの声に、船のあちこちから男たちがとびだしてきた。そしてマサのもとに集まると、アキトの指示を待った。
おそらく前の島で会ったやつらだろう。こちらから向こうの船には乗り込むな。こちら側に来た奴らに集中しろ。
ヒロ、お前は彼女に部屋から出るなと伝えてくれ。ほかの者は戦闘準備にかかれ。
アキトの指示で、全員が一斉に動き出す。
次第に近づいてくる鬼船に、緊張感が漂っていた。
ヒロはリリィの部屋の前に来ると、ドアを少し強めにたたいて中に声をかけた。
聞いてくれ、この船に今敵船が近づいている。これから戦闘になるだろう。だから、君はこの部屋に隠れていてくれ。決して出てきてはいけないよ。
・・・・は、はい。
リリィの返事がかろうじて聞こえると、ヒロは船の外に向かっていった。
甲板には、すでに10人ほどの敵が乗り込んできていた。ショウやレンなどの面子は1対1で互角の戦いをしていたが、オークやアキトは一度に2人を同時に相手していた。
うおおぉぉぉぉ!!
オークは敵の一人がバランスを崩したところへ大きく剣を振りかぶり、相手に構えさせる暇を与えずに振り下ろした。
オークの剣は相手の急所から外れたところに当たった。それでも相手は戦闘を続けることができず、受けた傷をかばいながら自船へと戻っていく。
次から次へと新たに人が押し寄せてくるが、オークらは一人ひとり確実に戦闘不能にしていった。
誰一人として急所を攻撃することなく。
アキトを船長とするこの海賊団は、自らを”ピース”と名乗っていた。
その名のとおり、自分たちから戦いを起こすことはなく、民間人から物を強奪することもない平和主義の海賊団であった。
ほかの海賊団から後ろ指をさされることもあるが、それでもそのスタンスを崩すことはなかった。
そして”鬼火”とは海賊専門の取り締まり部隊で、その特徴は黒地に赤い鬼が描かれた帆を張っていることである。
だがそれ以外のことは全く分からず、どこからともなく現れる彼らに対して、多くの海賊は常に注意を払っておく必要があった。
戦闘は次第にピース側に有利な状況となってきていた。
だが、この状況に対してアキトは不信感を抱いていた。
どういうことだ?どうもこいつらから本気さを感じない。何か企んでいるのか?
このアキトの予感は的中していた。
アキトらが戦っている最中に、死角から別の小舟で一人船に乗り込んでいたのだ。
その兵士はアキトらには目もくれず船内に忍び込む。そして何かを探すかのように一つ一つドアを開けていった。
この状況に気が付いたのは、この船でただ一人、奥の部屋に隠れていたリリィだけだった。
ドアを開ける音が次第に近付いてくることに気づき、敵だと分かったのである。
このままじゃ、すぐにこの部屋まで来てしまう・・・。でもここから出ても危険なことに変わりない。ドアは一つずつ開けられているから、おそらく敵は一人・・・・・。
リリィは必死に頭の中に考えを巡らせる。
そして一つの結論にたどり着いた。
一回だけなら・・・・・うまくいくかもしれない。もう、これしかない。
リリィは、覚悟を決めて立ち上がった。