私には、才能というものを多分に持って生まれてきたらいい。
数年経つころには、私に勝てる者は国にはいなくなってしまった。

しかし、あまりに強すぎたせいで、私は自らに二つの封印を施した。
それでも、私は全力を恐れてしまい、封印の奥にさらなる鍵をかけてしまった。

それが放たれることを、心から恐れながら――――

待ちやがれー!!

ソール・グルナディエ

いやあああああああああああああああ!!

風ノ助

おい客人。落ち着けって

風ノ助

そこの岩陰に隠れてやり過ごすんだ。急げ!

ソール・グルナディエ

う、うむ!

どこいったおらー!!

ソール・グルナディエ

…………なんとかやりすごせたか

風ノ助

あぁ。見失ったようだぜ

ソール・グルナディエ

助かった。感謝する

ソール・グルナディエ

しかし、あの一瞬の間にこの岩陰を見つけるとは。大した青年だ

風ノ助

まぁ、やけにテンパってる奴見ると自然と冷静になったというか…………

ソール・グルナディエ

ところで、何故貴様は逃げないのだ?あのゴーレムはとても強大なのだろう?

風ノ助

そういうアンタは、なんでこんなところにいるんだよ?

ソール・グルナディエ

何を隠そう、私が高名な魔法使いだと村の者に知らしめてやりたかったのだ。私ならゴーレムなど簡単に倒せるとな

風ノ助

いや、現実逃げてるし、武器忘れてきた時点で世話ねえよな…………

ソール・グルナディエ

………………

ソール・グルナディエ

それで、貴様は何故だ?

風ノ助

何故って………そんなの決まってるだろ

風ノ助

故郷を守るためさ

ソール・グルナディエ

っ!

風ノ助

俺、親父の跡を継いで漁師になって、昔から腕っぷしだけは強くて、よく問題を起こしては村の皆を困らせてたんだ

風ノ助

だけど、親父が亡くなって途方に暮れてた俺を村の皆は救ってくれたんだ。以前と変わらずに接してくれる。皆が優しい証拠だ

風ノ助

だから、守りたいのさ。俺たちの村を。村の皆を

ソール・グルナディエ

………………そうか

ソール・グルナディエ

気に入ったぞ、青年

風ノ助

そいつはどうも

ソール・グルナディエ

そういえば、まだ名前を聞いてなかったな

風ノ助

俺は風ノ助。改めてよろしくな

ソール・グルナディエ

良い名前だ。私は……………

風ノ助

知ってるよ。みずおっていうんだろ?若奈のお兄ちゃんが言ってたよ

ソール・グルナディエ

事実無根だ!!

風ノ助

冗談だって。本当は何ていうんだ?

ソール・グルナディエ

ソール・グルナディエだ。以後よろしく頼む

風ノ助

さて、どうするんだソールさん。もうすぐゴーレムが戻ってくるぜ

ソール・グルナディエ

戻ってくるのなら好都合だ

ソール・グルナディエ

風ノ助、今すぐ村に戻って若奈の家に行ってくれ。私の剣があるはずだ

風ノ助

剣で土人形を斬るのか?

ソール・グルナディエ

あの剣は私の力の枷でもある。剣があれば、ゴーレムを簡単に倒せるだろう

風ノ助

けど、俺が戻ってくるまではどうするんだよ!それまでにやられちまったら………

ソール・グルナディエ

私のことは心配するな。行け!

風ノ助

ああ。任せとけ。死ぬんじゃないぞ!

古森

かくれんぼでもしているのか?

ソール・グルナディエ

いやああああああああああああああああああああ!!

古森

………傷つくぞ

風ノ助

いや、拗ねてみても可愛くねえからな………………

古森

水男殿、忘れ物を届けに来たぞ

水男

忘れ物だと?

ソール・グルナディエ

私の剣!?持ってきてくれたのか!?

古森

先端が欠けているのは気にするな。杖の代わりについて登ってきただけだ

ソール・グルナディエ

何してくれたんだ貴様!!

風ノ助

と、ともかくこれがソールさんの剣なんだな?

ソール・グルナディエ

あぁ。この剣があれば、私は自らに課した封印をひとつ解くことができる

風ノ助

封印って?

古森

聞いている暇はなさそうだぞ

風ノ助

えっ?

そこかオラーー!!!

風ノ助

戻ってきやがった!

古森

水男殿!

水男

いい加減人の名前を覚えろ貴様は!

ソール・グルナディエ

我が第一魔法源を解放せよ!魔剣・クロワ・アルシュ!!

古森

みずお殿から、とてつもない圧力を感じる………

風ノ助

どうでもいいけど、今の音何…………?

何だ?何をしやがった!?

ソール・グルナディエ

今から散りゆく貴様には知る必要もないことだ

風ノ助

急に二枚目っぽくなった!!

ソール・グルナディエ

貴様に我が魔法の欠片を見せてやろう

ソール・グルナディエ

消滅せよ!フラム・オラージュ!!

ぎゃあああああああああああああ!!

風ノ助

すげえ………炎の竜巻だ

古森

………これ、周りの木々に燃え移ったりしないのか?

ソール・グルナディエ

愚問だ。あれはただの炎ではない。我が内側を模した、内なる炎だ

風ノ助

……………ごめん、全然わからない

ソール・グルナディエ

ひとまず、もうここには無用だ。村に帰るぞ

榊 風音

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