朝華(幼少期)

お母さん、あのね

朝華(幼少期)

朝華(幼少期)

…お母さん?

ギリギリギリギリリ…

朝華(幼少期)

お母さんじゃない…っ!





朝華(幼少期)

やめて!

朝華(幼少期)

本物の! 私のお母さんはどこ…!

朝華(幼少期)

いやだぁあああ!































眠井朝華

はっ…

眠井朝華

夢…

眠井朝華

…夢を見たのはいつぶりだろうか










朝華に飲ませていた薬は、別に、他人の夢に入らせるためのものではない

眠井朝華

チーシャ…! 無事なの…?

チーシャ

無事…? …ああ、こっちは大丈夫みたいだ

眠井朝華

こっち…

チーシャ

あの薬は悪夢から朝華を救うために作った、睡眠薬みたいなものさ。


この薬を飲むと夢を見なくなる

眠井朝華

夢を…

チーシャ

薬のおかげで悪夢は見なくなったようだが、いくつか副作用があったようでね

チーシャ

ZZZダイブもそのひとつだ

チーシャ

夢の中は鏡のむこうみたいなものだ。行き場をなくした朝華の『虚像』は他人の夢の中に行き場を求めた

眠井朝華

だから私は他人の夢の中に入れた…

チーシャ

そのことに私が気づいたのは、ある日の夜だった。

大切な人を亡くしてからというもの、私の夢からは何もかもが消えた。

建物が消え、草木が消えて、空が消えた。気づけば夢の中には私1人しか存在せず、ひどい孤独が私を襲った。


膝を抱えて、泣いていたんだ。そしたら

眠井朝華

チーシャ

朝華、君がそばに立っていた







眠井朝華

お父さん…

チーシャ

君は自分も辛いだろうに、僕の夢の中までやってきてくれて、頭をなでてくれたね。

ほんとは僕が君にしてあげなきゃいけない仕事だったのになあ…

眠井朝華

チーシャ

悪かったな…、朝華。許してくれ
























半津賀博士

チーシャは朝華のお父さんだ

古御門レミ

え!? でも人間の形をしてない…

半津賀博士

眠井博士は薬以外で夢の中で自由に活動する術を開発した

半津賀博士

それがイイユメアバターシステム

半津賀博士

イイユメシープから作ったアバターに乗り込むことで、夢の中での制限を少なくすることに成功したんだ。

アバターに乗り込むには、現実世界で専用のマシンに乗り込んで、肉体と精神を分離する必要がある

東城くん

そのマシンはどこに?

半津賀博士

眠井博士の研究所。…朝華さんの家だよ

保健室のフジコ

え!? …朝華さんの家って、壊されたって

半津賀博士

半津賀博士

夢と現実が少しずつ交錯していくなかで、博士は焦っていた。

他の悪夢が現実化していく。しかし、チーシャはなかなか現実化しなかったんだ。

最初、君たちのもとに現れたとき、実体がなかったのはそのせいだ。


どうにか現実での実体化が間に合ったんだが…

古御門レミ

博士は…

半津賀博士

マシンの中に入ったまま、建物ごと…

東城くん

…博士はどうなるの

半津賀博士

…永遠に夢の中だ。

今は夢と現実がひっくり返りつつあるから、チーシャは僕らのそばにいるけれど、もし元に戻ったら、博士は…





眠井朝華

お父さんとはもう現実世界では会えない

半津賀博士

聞いていたのかい…、朝華さん…










眠井朝華

…じゃあ、世界が元に戻らなくたっていいわ

チーシャ

…朝華、それは違

眠井朝華

…なんてね

眠井朝華

そんなこと言ってられないわ

チーシャ

眠井朝華

大体、お父さんは親バカなのよ。いつまでも私を子供扱いして。

そのうち私だって結婚して家を出るのよ!

チーシャ

結婚…!?

東城くん

結婚…!?

眠井朝華

どうせ遅かれ早かれ、お父さんとは離れるの! ちょっとそれが早くなるだけ!


…どうせ夢の中で会えるんだから

チーシャ

…朝華

チーシャ

正論だけど、少し悲しい…





眠井朝華

お父さん…私感謝してるの

チーシャ

え?

眠井朝華

確かにお父さんを恨んだこともあった。お母さんが死んで、この世にいたって何もいいことなんてないって。私より辛い境遇の人なんていないって思ってた。

…でもね

チーシャ

眠井朝華

ZZZダイブするようになって気づいたの。夢を覗くことで自分以外の誰もが、いろんな悩みを抱えている。それでも頑張って生きてる。

自分だけじゃないって気付けたの

チーシャ

朝華…

眠井朝華

…それに友達もできたしね

古御門レミ

ねむたん…





眠井朝華

私戦うわ!

眠井朝華

みんなを悪夢から救わなきゃ!

チーシャ

朝華…












半津賀博士

…朝華さん。かっこよく決まったところ悪いんだけど

眠井朝華

はい…?

半津賀博士

悪夢退治は他の人に任せて欲しいんだ










眠井朝華

…え

半津賀博士

悪夢は倒しても倒しても現れる。その場しのぎの対抗策にはなるけど、根本の解決策にはならない









半津賀博士

だから、朝華さんと眠井博士には大仕事用意してます

チーシャ

聞いてない




半津賀博士

まあ説明は目的地に向かう車内で…

東城くん

あのー、すみません…

半津賀博士

なんでしょう

東城くん

もしかして、さっきのセリフ『悪夢退治は他の人に任せて欲しいんだ』における『他の人』というのは…

半津賀博士

そう、君たちのことを指すね

東城くん

やっぱり…

半津賀博士

大丈夫! 君たちにはイイユメハンマーがある!

チーシャ

…ああ、確かに。

もともとは悪夢の対抗策として、全世界の人にイイユメハンマーを広めたかったんだが、

朝華1人の力ではクラスメイトや一部の学校のぬいぐるみ好きに行き渡らせるので精一杯だった

眠井朝華

え、それが目的だったの?

チーシャ

そう。

朝華の役目はイイユメハンマーの材料確保、製造、広告、流通、販売…

眠井朝華

全部じゃん…

半津賀博士

君たちは、イイユメハンマーを持っている餡民中のみんなに、これの使い方を教えて時間稼ぎをしてくれ

東城くん

…わかった

古御門レミ

拒否権はないんでしょ…?

半津賀博士

ああ

古御門レミ

やっぱりね。…まあ世界の危機なら仕方ないわ

東城くん

ヒーローみたいだ…

保健室のフジコ

いつまで時間稼ぎをすればいいの?

半津賀博士

さあね。…“現実”が帰ってくるまでかな

保健室のフジコ

アバウトね…。やれるだけやるわ

チーシャ

頼んだよ







半津賀博士

さあ、朝華さんと眠井博士。

僕の愛車に乗ってもらおうか

眠井朝華

愛車って、さっき、ここ来るとき乗ったスポーツカー?

半津賀博士

まさか。あれはセカンドカーさ









半津賀博士

“鉄モグラ”だよ

チーシャ

完成したのか!

半津賀博士

まだ試運転もしていませんがね

眠井朝華

それで愛車って言っていいの…?

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