解決?



























眠井 朝華

終焉干渉?
なにそれ。

チーシャ

終わり際の夢は夢の主の認識率が下がるから、占有率が曖昧になるんだ。
そこを狙って占有率を上げる方法だよ。



へー。


……って事は私がこれをやっちゃったの?

チーシャ

いや、君じゃない。





……えーっと?



またわからなくなってきた。






私じゃなくて、



夢の主でもない。







チーシャは夢の世界の住人だから




立場上無理、とか言ってたハズ…。









じゃあ、誰が?
















チーシャ

他にいる。
……干渉者がね。





……他?



チーシャ

この状況で、夢の支配率を変わる事はまずない。あるとしたら……







チーシャ先生置いて行かないで下さい。




落ちこぼれの生徒の面倒も見て下さい。






チーシャ

夢の世界に入れるのは、君一人じゃないって事さ。




もう既にいっぱいいっぱいです。






チーシャ先生、


これ以上コミュ障の私に


人をあてがうのはやめて下さい。




チーシャ

上を見て。
ヤツラだ。





チーシャに言われて、



暗黒の空を見上げると



おびただしい数の空飛ぶ髑髏(?)



みたいなものが空を覆っていた。






それは、悪夢が無くなった晴天の空の



光を遮るかの如し。



眠井 朝華

うわ、きしょ……。

チーシャ

厄介なヤツラさ。
悪夢から現実世界にオブジェクトを作り出すのさ。







悪夢から……なんだって?








チーシャ

さっき、現実の物質として顕現させられないって言ったのを覚えているかい?





ええ、覚えていますとも。




ものすごく引っかかる言い回しだったから




しっかりと覚えていますよ!先生。



















『それが現実世界の住人なら』








と言う但し書き付きで、ね。



















……えっと、結局のところ、学校の肉片問題は




やっぱり高橋さんの悪夢から来てるのね。










他の干渉者って、もしかして、



チーシャ先生のお知り合いの方ですか?










チーシャ

……ヤツラを野放しにすると
この辺一帯で、悪夢に起因する事件が
発生しちゃうよ。











ふと高橋さんの方を見ると、




消えかかっていたその姿は




再び輪郭がはっきりしていた。




















そう、終わりかけた悪夢の継続だ。











……でも、あんな巨大な餃子の皮
売ってる訳無いよね……。




なんてことだ。



せっかく笑顔になった



高橋さんが、またふさぎ込んでる。


チーシャ

現実の世界のことなんて、本当は僕らには関係ないけど、夢の主と共生している以上、宿主らの絶滅だけは免れて欲しい。




……えーっと、つまり、


私にどうにかして欲しいって事ですね?


そうですね?










手っ取り早く、


弾が散らばる奴を創りだして


早いとこあの気持ち悪いヤツラを


なんとかしよう。

※これはライフル銃です。散弾銃ではありません。

眠井 朝華

ゆけ!敵は空にあり!




撃ちだされたショットシェルから



散らばる弾が空の支配者を襲う。








……しかし、




弾はヤツラの体をすり抜けてしまうようだ。



眠井 朝華

当たんなーい!

チーシャ

いい忘れてたけど、
干渉者が別の干渉者に対して
干渉することはできない。

君達ができるのは、夢の主の世界の隙間をいかにうまく利用するかという事だけだ。




早く言ってよ、チーシャ先生。







つまり、どうにかして高橋さんに



やってもらうしか無いって事ね。







眠井 朝華

高橋さんがやりたくなって、高橋さんの希望にも繋がる物……。





一つの答えが脳裏に浮かぶ。



これなら、きっと…。



チーシャ

彼女次第なところもあるけど、
いいんじゃないかな?




私はふさぎこむ高橋さんの方を見ながら




脳裏に一つの答えを描き想像する。




彼女の笑みが再び戻ることを祈りながら。



いたっ!



高橋さんの頭に落ちてきた物。



それは……。


あら、これは?

【イイユメツール】レシピ本

【アレンジレシピBOOK】

■ もくじ
P. 24 - 餃子の皮の作り方


P. 184 - 簡単!手間なし!闇餃子!

……これなら私にも出来そう!



再び笑みの戻った高橋さん。



自らの夢を器用に使い



超々巨大餃子の皮を作り出す。

眠井 朝華

でかっ!

チーシャ

でかっ!




その大きさ、直径1km。



私の餃子の皮の比じゃない。



えーい!



なれた手つきで、


空の支配者ごと餃子に包む高橋さん。


さっきまでの不格好な餃子が嘘のよう。







ぎゃー!

ぎゃー!





空を埋め尽くしていた支配者は全て餃子に包まれ




青空が戻ってきた。




やった!
自分で出来たんだ!













満足そうな顔を見せた高橋さんのその姿は








スーッと消えていった。











眠井 朝華

どうだ!
見た?チーシャ。

チーシャ

うん、あっぱれだね。














訪れる夢の終わり。












……それにしても、


他の干渉者って


いったい何者だったんだろうか。







薄れゆく意識の中、


チーシャは何も答えてくれなかった。







私の心の声は聞こえているはずなのに。







どうやら、触れて欲しくない事みたいだ。























……。

パチリ

いい媒体が見つかったと
思ったんだがな……。

俺の他にも入れる奴がいるとは、な。

……まあいい。
所詮は人間、いつか先にくたばる筈。

その時が
俺の時代だ。














ふぁぁぁ……。

いつの間にか寝てたみたい。

変な夢だったなぁ……。

そうだ!

餃子の皮ってどうやって作るのか
調べてみよう!

と と と  
 ん ん ん 
      :





















あの時、餃子がとっても大きかったら……。


お兄ちゃんと喧嘩しなくてすんだ……。







あの時、餃子がまだ残っていたら……。


お兄ちゃんは夜の道路に


飛び出したりしなかったんだ……。












私は一つでお腹いっぱいになれる



餃子を作りたかった。





その答えとして導き出したのが



具だくさん餃子。





もちろん、ただ馬鹿げた大きさの



餃子を作りたいわけじゃない。







みんなが満足できる餃子。



それが本当に作りたかった餃子。













あの時の後悔から、





私は自分に足枷をはめていた。













いつの間にか





自分で自分の世界に囲いを作っていた。














今日。










それに私は気づけた。















いつかきっと、


私の作りたかった餃子を


作ってみせる。















その方がきっとお兄ちゃんも喜んでくれる。




……そのはず。







……もし自分ひとりで成し得なかったら……。






その時は、未来の旦那さんに


手伝ってもらったり、


子ども達とも一緒に作ってみたりしよう。












みんなで作る餃子……。











うふふ……。


それはもう一つの私の夢かな?









未来の旦那さん…。
どんな人かな―

旦那さん、餃子が嫌いだったらどうしよう……。
















眠井 朝華

ふぁぁぁ、今回のはちょっと疲れたなぁ……。もう一回寝ようかな。



学校の豚の挽肉問題も


原因がわかったことだし、


もう生臭くなることはないだろう。




そんな事を知っているのは私だけだろうけど。













……あれ?












じゃあ、道端に落ちていた完成形の餃子は何?



やっぱり、道端の王なの?



それとも怪盗ギョーザ?












ふと気になり、ベッドから降りて




二階の部屋の窓から家の前の通りを見る。




























餃子はまだある。



















ちょうどその時、男の人が走ってきた。




はぁ、はぁ、はぁ……

あー、よかった!
ここに落としてたか!

食品サンプル、結構高いから
なくしたらバカにならないね。







そう言って、男の人は餃子を回収していった。






















なんだ、見本品か……。














どおりで猫も食べないわけだ。































【忘れられた餃子】




おしまい



pagetop