アキス

……どういうことですか?

アリス

そのままの意味です。青汁が大好きな異世界出身のアキス先生


私はゆっくりと一言一言つないでいく。

アリス

正直、私が異世界の住人だとバレると思ってました。違うと言っていたのはほんの少しの抵抗。先生に勧めるためです

アキス

私も異世界の人間だと?

アリス

私がクローバーを気に入ったのは私が元いた世界に非常によく似ていたからです。偶然とは言えないレベルで


携帯電話やインターネットがあって、魔法がなくて、警察があって……。そんな世界が私の元いた世界。

アキス

何を言い出すのかと言えば。違いますよ、僕は色々な調べでこの世界観を作り出していただけです

アリス

そう、ですか。でも、私としては信じられないんですよね

アキス

どうして?

アリス

先生が小説を描かれているから、でしょうか

アキス

どういうことで?

アリス

魔法系統

アキス

はい?

アリス

炎系魔法というのはいくつかの種類に分けられます。それぞれに名前も。幻視系魔法のバビヨン、浮遊系魔法のアンチグレイブ、電子系魔法のアーカイブズ。そして私の炎魔法は、炎系魔法、デンジパルス

アキス

デンジ……

アリス

正しくは炎電系魔法になるんでしょうね。私も電子系との魔法と似ているんですよ。電磁を発生させ熱源作る。それがこの魔法の正体。もちろん、炎の種類も電気を質を変えることで色々なことができるというもの。そして人の思考というのはすべて電子のやりとりであることは知っておりますよね?先生がアーカイブズの魔法を発動し電子系等のやりとりをしたときにそれをハッキング。失礼ながら記憶を覗かせて頂きました

アキス

ははっ。いくら巧妙でばれないミステリを作ったとしても後ろから見られたらどうしようもないですね


先生がため息を吐く。認めたと受け取っていいだろう。

アキス

って、あれ……

アリス

どうしました?

アキス

デンジパルスなら……、僕が水魔法に責められたらと説いたとき、わざわざ銅を経由して電気分解する必要性がなかったはず。そのまま電気分解すれば

アリス

あっ。そっか。そこから考えるとおかしかったですね

アキス

もしや、かつがれて……!?

アリス

私の踏込に冷静さを失いましたね

アキス

……はぁ。参りました


がっくりと肩を落とす先生。

アリス

まあ、それ以外にもいろいろ仮説は立てていたんです。先生がこんなにも私と元いた世界と酷使したものを描いているのがただの偶然とは思えなかったんですよ。そこで考えると時空のゆがみでこちらの世界に来たのなら、もしかしたら私の元いた世界とこの世界に通じる何かがあったと考えるのが自然だと思うんですよ

アキス

でも、どうして僕がそうだと

アリス

そもそも、先生って元の世界でも小説家だったんじゃないんですか?明坂先生

アキス

あ、はは。元の世界からの読者さんでしたか

アリス

あんな文体で描くミステリー。偶然にも転生した世界で逢うとは思えませんもん。だからこそ、驚いたんです。本は一ページ目くるだけで色々な世界を見せてくれる。なのに、先生の作品はただいまという印象を受ける作品ばかり

アキス

それらは全て仮説でしかなかったが、僕の不用意な発言で

アリス

確信へと変わったわけです


私はにこやかにほほ笑んだ後先生の目を見据える。

アリス

どうか、バビヨン・パラレル・ミックスを使ってください。先生の作品を待っている人がいますよ

アキス

しかし

アリス

先生

アキス

アリスさんこそ


ジッと互いに譲らないようににらみ合う。というより譲り合っているわけだけど。

アキス

……私たちの元いた世界に倣い、ジャンケンでもしましょうか

アリス

了解しました。勝った方が使う、ということで

アキス

はい


一歩距離を取って私たちは拳を合わせる。

アリス

じゃん

アキス

けん

アリス

ぽん!


そうして繰り出される二つの答え。私達はそれをみれからゆっくりと頷きあう。その後バビヨン・パラレル・ミックスの元へと急ぐ。先生の口利きにより優先的に使わせてもらえるらしい。


そして最後、私達が別れるとき……。

アキス

そうだ、アリスさん

アリス

はい?

アキス

本当の名前教えてくださいませんか?僕は明坂昴(すばる)と申します

アリス

……有栖川。三千院(さんぜんいん)有栖川(ありすがわ)です

アキス

なんか、高貴なお名前で

アリス

ふふっ。実はいいとこの、かもしれませんよ

アキス

あはは……、また調べてみることにします

アリス

そうですか、では

アキス

はい

アリス

さようなら

アキス

さようなら

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