いよいよ新人戦一次予選の日。桜谷総合グラウンドのサッカーコートに集合したのは勇人たち立花中学サッカー部員、対する南二中の強豪たちだ。南二中といえば例の決勝で勇人がオウンを献上して敗れた試合の相手チームだ。奇しくも因縁の闘いとなる。
 
センターサークルで、勇人と前原はボールに足をタッチして目線を交わした。勇人の右手首には彩名のミサンガが巻かれていた。


あれっ、前原はミサンガしてないのか?

するわけないだろ、彩名の本命はお前なんだし

えっ…

行くぞ、勇人ー!

おーっ!



前原がボールを蹴り、勇人が風を切り走り出した。

行け~、勇人様!

ホーム側に陣取る立花中学応援団の片隅で彩名は声援を送る。彩名の手首にもお揃いの七色のミサンガが巻かれている。
 
 


試合は膠着状態で、後半が始まっても0‐0のままだった。焦る立花中がファールを冒してPKを取られたが、キーパーが阻止してなんとか失点を免れる。

だが、南二中はゴールエリアで守備に徹し、勇人に攻撃の隙を与えない。


 

残り時間6分や
なんとかゴールを決めたいとこやな

光太郎が立ち上がり、左胸を叩いて見せた。

勇人ー! 最後はここやで、わかってるか!

光太郎さん……わかりました!

光太郎の鼓舞が勇人に伝わり、スイッチが入った。
ボールを奪い、ドリブルで左サイドを切り裂き駆け上がっていく。前線の前原とアイコンタクトを交わして、すっとイメージ通りの軌跡を描いたピンポイントクロスを上げる。
 
すると、ボールを受けた前原が豪快なへディングでゴールを決めた。鮮やかなクイックプレーでボールはゴールに吸い込まれていく。

うっしゃーーーー!!

やりました~!

歓声に湧くスタンドで、このときばかりは彩名も飛び上がって喜んだ。そのはずみで彩名のミサンガが切れた。


あ、願いが叶った


ぽっと、ひとりでに顔が赤らんだ。
 
 



ゲームセットを告げる審判の長いホイッスルが吹かれた瞬間、抱き合って歓びを分かち合う勇人と前原、そして立花中イレブン。応援席もお祭り騒ぎだ。
 


その中で光太郎だけが魂が抜けたように座っていた。ようやくコートの輪からはずれた勇人が叫んだ。



彩名ーーーー!

えっ………?

そこ、そこ!!

 
勇人は応援席の最上段を指さしている。

あ、わ、わかりました! 
光太郎さん、あそこ見てください! 
あの弾幕……

なんや弾幕て……えっ?


 
『浪花ライナスのエース 10番 赤嶺光太郎』の弾幕を見た光太郎は、フリーズして放心状態になった。



大事にしまってたんですよ!光太郎さん!

勇人………ありがとう

真田様……、もうすっかり大人になられましたね。監視部のワタクシも大変うれしゅうございます……る













8 監視部の本望

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