清々しい空の下に、一人の少女がいた。
少女の名前は「ハルカ」
この物語の主人公である。

ハルカはどこにでもいるようなフツーの大学生。
男女に好かれるような、明るくて活発な女の子。
ちょっぴり、おバカな一面もあるけれど
決して頭が悪いわけでは無い!

ハルカ

おはよう~。

アカネ

相変わらず、早いわね!
今日も朝から講義なの?

ハルカ

そうだよ~。
早く行かなきゃ~。

アカネ

ってか、何で私のところに来たの?
今日は、お昼からなのに!

ハルカ

わぁ~!
ごめんね~。
つい、うっかりしちゃった~。

アカネ

可愛いから許してあげる。
でも、学校は一人で言ってよね。

ハルカ

ふぁ~い!

ハルカの勘違いで、
アカネは起こされるのであった。

でもこれは、いつもの事である。

ハルカの可愛い顔を見ると、
貴重な睡眠時間を削られた事は
どうでもよくなるアカネであった。

ムツキ

すみません。
もし良ければ、
教科書見せてもらえませんか?

ハルカ

忘れちゃったの~?

ムツキ

え~と、ですね~。
慌てて家を出たので、
鞄を間違えてしまって。
バイト用の鞄で来ちゃったのです。

ハルカ

アルバイトしてるんだ、
大変だね~。
良いよ、
見せてあげる~。

傍から見ると、
あからさまに不自然な挙動のムツキであったが
ハルカは気にする事も無く、
教科書を見せてあげるのであった。

ムツキ

何も疑う事も無く、見せてくれた。
やっぱり、親切な人だなぁ~。

ハルカ

ムツキ君、大丈夫?
講義終わったら、コピーする?

ムツキ

ハルカさん、ありがとう。
後で返しても良いですか?

ハルカ

良いよ~。
次の講義の時まで、貸してあげようか?

ムツキ

いや、
流石にそれは申し訳ないので
今日中に返しますよ!

何コマまで、講義とってますか?

ハルカ

えーとね!
お昼まで取ってるかな~!

ムツキ

それなら、お昼にお返ししますので
ランチ一緒に行きませんか?

ハルカ

良いのかなぁ~?

ムツキ

僕は今日一人なので、
もしお嫌でなければ
一緒に食べたいなって。

ハルカ

分かった~。
じゃ~、ランチの時に返してね!
バイバイ~。

ムツキ

ちょっと待って!
食堂の場所だけ決めないと、
沢山あるから会えないよ!

ハルカ

いっけないね。
忘れてた!

ハルカは、
第二食堂が良いんだけど
ムツキ君は何処が良いの?

ムツキ

僕も第二食堂は良く行ってる!
なら、そこの入り口で待ってます!

ハルカ

ふぁ~い!

学校内でも、凝った作りの第二食堂。
まるで洋館に一室みたいな作りとなっている。
この雰囲気に誘われて、
多くの学生が此処を利用する。

ムツキ

ハルカさ~ん!
こっちですよ~。

ハルカ

ムツキ君、待った~?

ムツキ

ちょっと前に着いたので、
全然待って無いですよ。
それよりも、教科書有難うございました。
お礼に、ランチおごりますよ。

ハルカ

えっ、良いの~?
ありがと~!

お互いの事を始めて認識したというのに、
不思議と話が盛り上がり、
時間があっと言う間に過ぎていった。

ムツキ

ハルカさん。
今日はありがとう。
もし良かったら、またお食事しませんか?
お話ししていて、楽しかったので。

ハルカ

良いよ~。
ハルカね、
ムツキ君の事好きだし~。

ムツキ

えっ、今何て言ったの?

ハルカ

ムツキ君の事、好きだよ~。

ムツキ

え~~~~~~!

アカネ

ハルカ~、
その言い方したら勘違いされるよ。
ってかさぁ~、
その男だれなの?

ムツキ

いやだな~、分かってますよ。
友達として
好きになってくれた事くらい。
だって、
今日が初対面何だし・・・。

ハルカ

この子は、アカネちゃん。

っでね
ハルカの友達になった、ムツキ君。

アカネ

まぁ~良いわ。
変な事しないでよね!

ムツキ

ダイジョウブだと思うよ!

アカネ

ハッキリしないわね~

こうしてハルカとムツキは出会った!

そして月日は流れて、
お互いに付き合う事になった。

ただ初対面の時の動揺は何だったのか
この後、ハルカは知ってしまったのであった。

ムツキ

ハルカ、
今まで黙っていたことがあるんだ!

ハルカ

もしかして、
結婚して下さいって言うの~?

ムツキ

違うよ!
出来ればしたいんだけど、
ハルカとは結婚出来ないんだ!

ハルカ

何よ、それ!
じゃ~、他に好きな人でもいるの?

ムツキ

そんなのいないよ。
はじめて会った時から、
ハルカが好きなんだからさぁ~。

ハルカ

えへへ~。

ムツキ

でもね、もうすぐ
お別れしなければならないんだ。
僕には時間が無いんだ!
ハルカとは一緒に過ごせない・・・。

ハルカ

なんで、そんなこと言うの?
ハルカの事、好きじゃないの?

ムツキ

僕がハルカとお話しできるのも
この姿でいられるのも
時間が限られているんだよ!

ムツキ

だって僕は、ヒトじゃないから・・・。

ハルカ

そんなの信じられない!
いくら私だって、騙されないよ!

ムツキ

そうだよね~。
普通こんな事、
信じられないよね~。

ムツキ

もう時間が無いみたいだから、
これだけは言わせて!

ムツキ

あの時、
公園でご飯をくれなかったら
僕はもう死んでいた。

ムツキ

ハルカが僕を見つけてくれて
ご飯をくれたから、
ここまで生きてこられたんだ。
ありがとう!

ハルカ

公園って何のこと?
はじめて会ったのは、
講義室だよね?

ムツキ

無理もないよ。
だって、この姿じゃないのだから。

本当はこのまま、
このまま消えるつもりだったけど
お礼も言えずには消えられない。

それに、この姿になってからは
ハルカと一緒に居られてすごく楽しかった。

ハルカ

ちょっと、まってよ。
何を言ってるの?

ムツキ

ありがとう。
大好きだよ、ハルカ。

ムツキ

くぅ~ん。
くぅ~ん。

ハルカ

あなたが、ムツキだったの?
ムツキ、今なんて言ったの?

ムツキ

くぅ~ん。
くぅ~ん。

ハルカ

何て言ってるか、分からないよ。
ごめんね、ムツキ。

犬に戻ってしまったムツキの言葉は
ハルカには伝わらなかったのであった。

ムツキの目からも、
ハルカの目からも涙が零れていた。

犬に戻ってしまったムツキを
ギュッと抱きしめて一晩中泣き明かした。

そして翌日から、
ムツキと一緒に暮らす事にしたのであった。

あの時のムツキは、
ハルカにこう伝えたかったのであった。

ムツキ

ハルカを悲しませて、ごめん。
ハルカに一言お礼が言いたくて、
会いに行ったのに好きになってしまった。

ムツキ

僕があの時にランチに誘わなければ、
こんなにも辛くて悲しい想いを
させずに済んだのに。

僕のエゴでこんな事になってしまった。

ごめんね、ハルカ!

そして、楽しい時間をありがとう!

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