神 斬
髪 切 り屋
神 斬
髪 切 り屋
参の巻 金剛
2.石道 一
ありがとうございました
すみません、ミカンいただいちゃいまして
いつもきれいな髪型にしてもらつてるから遠慮なくとっといてね
今週、最後のお客様から思わぬ差し入れをもらって仕事を終えるのだった
ミカンは、俺の住んでいる、街の特産品である
朱右が仕事を終えた気配を察したのであろうか
お客様が帰ると同時に白狐が現れた
朱右よ、お仕事、ご苦労であった
白狐さん、急に御神体から実体の身体になるのやめてもらえますか
もしお客様にみつかりでもしたら・・・・
朱右が話してる途中だが、すかさず白狐が返す
朱右よ、こまかい事は、気にするでないぞ、そたなのお仕事に迷惑はかかってないであろうが
そなたのお客人たちにも、迷惑にならないように気遣いはしておるしのぉ
さらに、そなた仕事中は、めがねをかけておるであろうめがねをかけておれば、御神体の状態の我は、みえておらぬであろう
俺は、右目にだけ、黒髪や神が見える特異体質である
しかし、不思議なことに、めがねをかけていると何故か見えないのである
たしかに めがねをかけていれば、白狐さんの御神体はみえていませんが
最近、気配でわかるというか・・・しかし実体の身体になっているときはめがねをかけていてもみえるので。普通の人にもみえるとおもいますが・・・
話はかわるが、そういう理由からなのか、最近そなたの仕事を、御神体で、二階からのぞいていると、時々、めがねをあげて、お客人の髪型を切っておるのぉ。
そなた、お客人から見える、黒髪を髪型を切るついでに斬っておろう
やっぱり、白狐さんには、ばれてましたか、なんかお客様の元気がない時や落ち込んでいる感じの時なんかに、めがねをかけないで見ると、わずかですが黒髪が見えるんですよ、それを斬ったら、お客様の感じが元気になってくれるというか
それはそうじゃの、そもそも、我らが戦こうておる、黒髪の本質が人間の持っている、欲や嫉妬、あきらめや疲れなど
人間が持つ、負の感情から生み出されたものじゃからのぉ、それを取り除くということは、それらを断ち斬るっているという事じゃからのぉ
だとしたら、俺が、子供の頃に戦った龍や、今年の正月に家康さんと一緒に戦った不死(ふじ)の骸(むくろ)、それらも、本質的には、人間から出てる黒髪と同じって事なんですか?
そうじゃの、龍の場合はそなたが子供の時にひらった大蛇(おろち)のヒレ
不死(ふじ)の骸(むくろ)の場合は、骸骨の右目から出てきた、勾玉 死返玉(まかるがえしのたま)
これら媒体となる物に人の悪しき心が集まって形を成したもののけ
それが、そなたが戦った黒髪の正体じゃ
そもそも、1500年前に、我がこの地に降臨した理由が、凶作によりあまりに食べるものが無く、餓死していく現実に、何もできなかった人々が自分たちの不甲斐なさや、自然に対する怒りから生まれた、龍の黒髪を鎮めるため、人々の願いに答えたかったからなのじゃからな
我は倉稲魂神(うがのみたまのかみ)にして、国の種つ物をして百の災いを祓い、天下の蒼生(そうせい)を護る神なり。
つまりはそういうことじゃて。
こまかい事の、説明は又の機会に詳しく話すとして、我は、お腹がすいたのじゃ、インスタントラーメンをつくってたべるが、そなたも食べるか?、我が作ってやってもよいぞ
朱右よ、人間お腹が膨れれば、幸せな気分になって黒髪も少しは少なくできるはずじゃ。
もともと我の本質は食物を皆に与える神なのじゃからな
えっ俺の分も作ってくれるんですか?よろしくおねがいします
意外と優しいところあるんだよね。いつも上から目線だけどこういうところが憎めないというか・・・
朱右おぬし、また何か考えておったじゃろう
!!何でわかるんですか?でも今考えていたことは白狐さんをほめているというか・・・
まあよい、では、我は鍋に湯をわかしてくるぞ
白狐がダイニングに身体で走って行った。
朱右もお客様からいただいた、ミカンを持って
ダイニングのテーブルに座った
白狐がお鍋にお湯を沸かしながら具材を調理しながら話しかけてきた。
朱右よ、先ほどお客人から何かおすそわけをいただいていたようじゃが
朱右はミカンを袋から取り出して言った
これをいただきました、白狐さん食べますか?
おおっ、非時香菓(ときじくのかぐのこのみ)ではないか
現代の非時香菓(ときじくのかぐのこのみ)は、甘くておいしいのぉ
?? ときじくかぐのみって何ですか?
朱右、ときじくかぐのみではない、非時香菓(ときじくのかぐのこのみ)
そなたが持っておる、橙色の果物のことじゃ
えっ、ミカンのことですか?
逆に、現代ではミカンと言うのじゃな
で、ときじくのかぐ・・・のこのみって何でそう呼ぶんですか?
そうじゃの、ときじくかぐのこのみについて聞きたいのじゃな。
ここで、白狐様の豆知識じゃ、ありがたく聞くがよいぞ
ときじくかぐのこのみは、太古の昔 第十一代 垂仁帝(すいにんてい)の時代
垂仁帝が田道間守(たじまもり)という人物に不老不死の力を持つと伝わる実を探させたという逸話に、出てくくる実なのじゃ
この命を受け、田道間守(たじまもり)は常世の国にあるという、ときじくかぐのこのみを探して、長い年月をかけて常世の国に、おもむき、ついに、その実を探しあて、帰国した、しかし
その時、垂仁帝はすでに亡くなっておったのじゃな
事記には、非時香菓(ときじくかぐのこのみ)を、是今橘也(これいまのたちばななり)とする由来が載っておるのじゃ
へー、だからミカンの古い呼び方は、橘と言うんですね、勉強になりました。
この話の功績により、田道間守(たじまもり)は菓祖神(かそしん)要するに、お菓子の神様として、崇められるようになったのじゃな
ちなみに、山城の国の平安の都
昔、帝が住まわれていた御所に「右近橘 左近桜」として橘が植えられている
たしか、平安宮にも、「右近橘 左近桜」が植えられていたはずじゃ
要するに、この国を代表する、植物ってことじゃの 橘と桜は
あと、予断だが、家康が木の国から、献上された木を
隠居していた駿府城(駿府城公園)に
植え育てていたらしい、家康公お手植えのみかんの木が、今も残っておる
なるほど、勉強になりました、家康さんもミカン好きなのかもですね
今度、電話したときに聞いときます
参の巻 金剛
2.石道 二 に続く