虫の鳴く声。
虫の鳴く声。
寮生のざわめき。
道路の車と路面が摩擦する音。
一つ一つがはっきりと聞こえてくる。。
そして目の前にもう一人の僕が現れるとゆっくりこう言った。
「影か…僕を殺す気なんだろう。」
「その前に
殺してやる!」
そう言うなり手が真っ直ぐ伸び僕の喉元に潜り込むと凄い力で首を締め出した。
首の締まる音。
骨の軋む音。
喉の骨が砕けていく音が聞こえる。
すると…体中の力が抜けていく…
腕、足、全てから血の気が引いて行くのがわかる段々体が冷たくなって行くのもわかる。
「これでいいだろ
死んでいいのは影だ…
影は消えるべきだ…
新月に影が消える運命だよ…」
と言うと
急に目の前が
真っ白
に
な
っ
た
「おい!神威!起きろ!着いたぞ!!」
西倉の怒鳴り声が車内に響く。
どうやら夢だったようだ。
びしょ濡れになったシャツが悪夢を物語る。
西倉によるとうめき声をあげながら苦しんでいたらしい…
僕は西倉に礼を言うと部屋へと戻った。
部屋に戻るといつもの光景が目の前に広がる。
壊れたラジオ
汚れた部屋
牛乳瓶一本が入ったものさびしい冷蔵庫
万年床
何も変わらない…
だけど、何かが違う。。
空気が淀んでいる、なにやら空間が歪んでいる感じがする。
あのろくでもない本ばかりならんだ本棚の影にもう一人の自分がいる気がして仕方ない。。
そればかりかまさに今、後ろから肩を叩こうとしている自分がいる気がしてくる。。
あの「夢」の手の生々しい感覚が首に残っている
『それ』
がいる気がする…
そこに。。
部屋の片隅にただずむ姿見が妖しげに光る。。
姿見に映る自分だけが急に微笑んだらどうしよう。。
鏡から伸びた手が首に絡みついて来たら…
こんな日は以前に処方された導入剤でも飲んで眠るのが一番いいのだろうか。
窓から差し込む光が次第に赤方変異していく…
『あの』
夢でみたオレンジ色に部屋が次第に染まっていく…