出雲では、また高天原から使者が来ると聞いたオオクニヌシが稲佐の浜に向かっていた。
今日は彼にも余裕が見えない。ワカヒコの死からまだそんなに経っていないのに使者を送ってくるなんて、3年、8年と猶予をもらっていた今までとは訳が違う。
出雲では、また高天原から使者が来ると聞いたオオクニヌシが稲佐の浜に向かっていた。
今日は彼にも余裕が見えない。ワカヒコの死からまだそんなに経っていないのに使者を送ってくるなんて、3年、8年と猶予をもらっていた今までとは訳が違う。
高天原は、3度も ・ ・ ・ ・ ・ ・ いや、キジの遣いも入れれば4度も交渉に失敗しているんだ。それに先日のワカヒコの件もある。次こそは武力で攻めて来られてもおかしくないな。
オオクニヌシが浜に着くと、大きな船が空を漕ぎ、高天原からこちらに向かってくるのが見えた。
なんじゃありゃ。超カッコイイじゃないか。なんだよ、あの某有名RPGがやりたくなるフォルム。なるほどねぇ。
こんなん見せられたら兵も一発で戦意喪失しちゃうや。
高天原はこのまま攻めてくる気なのか。それともまだ交渉の余地があるのか。浜の空気が張りつめた。
鳥船が浜に着くと出雲側の緊張はピークに達したが、船からの攻撃は無かった。
代わりに、タケミカヅチが船からハシゴも使わず浜辺にと飛び降り、オオクニヌシを睨みつける。
と飛び降り、オオクニヌシを睨みつける。
・・・・・
オオクニヌシはそれをいつもの営業スマイルで返した。
こんにちは。タケミカヅチさんですね。わざわざお越しいただき、ありがとうございます。僕が出雲までご案内しましょう。
しかし、タケミカヅチは返事もしない。
それどころか、おもむろに十拳剣を抜くと、波打ち際に剣先が上になるように刺した。
へ?? ・ ・ ・ 何してるんですかっ!?
オオクニヌシは戸惑った。なんとタケミカヅチは、その剣先の上にあぐらをかいて座り込んだのだ。
うわぁ ・ ・ ・ 見てるこっちが痛いや。なんか中華でこんな芸、あったよね?
タケミカヅチはオオクニヌシを見据えると威圧的に要件を言った。
オレは今日、アマテラスの姉御と、高木の旦那の命で事を正しに来た。
アマテラスの姉御は、テメェが我が物ヅラして治めてるこの国は、本来、自分の御子が治めるべきだと考えている。
テメェはどう思ってんだ?
うわー、ヤンキーキャラかよ。面倒くさ。
はぁ ・ ・ ・ 今回はずいぶんと、単刀直入なんですね。
空飛ぶ船に雷神か。いきなり攻撃はされなかったものの、いよいよ武力行使って感じ。タケミカヅチを口説く時間が欲しいな ・ ・ ・
どう思ってんのか聞いてんだよっ!!
う〜ん ・ ・ ・ そうですねぇ。お答えしたいのはヤマヤマなんだけど、実は僕、もう国のことは息子に任せてるんですよね。コトシロヌシに聞いてみよう。僕じゃ判断できないや。
なら、コトシロヌシに会わせろや。
いやぁーそれが、残念なことに彼は今、鳥を捕ったり、魚を捕ったりするのに忙しくって。どっかの岬に行っちゃったんですよ。しばらく待ってもらえませんか?
よければ出雲でゆっくりとお酒でも酌み交わしながら・・・
フン ・ ・ ・ ・ ・ ・ 小賢しい男だ。俺は出雲へは行かねぇ。
・ ・ ・ おい、鳥船!
タケミカヅチは鳥船に、コトシロヌシを探すよう命じた。
え?この広い海を探す気ですか??いやぁ ・ ・ ・ それは、すぐには見つからないんじゃないかなぁ?
まぁ、待ちなって。
・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ はぃ。
鳥船がすぐに海へ向かってしまったので、オオクニヌシは気まずそうにその場で待った。
タケミカヅチか ・ ・ ・ 情報が足りないな。情か、女か、権力か、何か引っかかればいいんだけど ・ ・ ・ 筋肉系の攻略は苦手なんだよ。どっかのひぃ×6じぃちゃんみたいに。
オオクニヌシは少しでも情報を引き出そうとタケミカヅチに話題を提供したが、全く相手にしてもらえなかった。しかも、コトシロヌシはすぐに見つかってしまったようだ。鳥船の甲板の金具に首根っこを吊るされて半泣きでこちらに近づいてくる。
ひぃっ ・ ・ ・ 父上 ・ ・ ・ これは一体??
オオクニヌシはにっこりと息子を向かえたが、付き合いの長いコトシロヌシにはこの笑顔がイライラしている時のものだと分かった。
こーゆうときは、あとが恐い。
やぁ。コトシロヌシ。すぐに見つかったようで良かった。こちらは、天つ神のタケミカヅチさんだよ。国の件でお前に話があって、わざわざ来てくれたんだ。
・ ・ ・ そっ ・ ・ ・ ・ ・ ・ そうですか。タケミカヅチ様、ご用件ってなんでしょう?
あぁ。テメェが治めている国のことだが、本来はアマテラスの御子が治めるべきもんだろ。異議がねぇなら、速やかに譲ってもらおうか。
えっと ・ ・ ・ それは、どうかな??なんか、いろいろ手続きとか大変で難しいかも ・ ・ ・ ・ ・ ・
コトシロヌシはタケミカヅチの顔色を伺ったが、伺うまでもなく、めっちゃ怖い顔だった。タケミカヅチはコトシロヌシをギロリと睨みつけると、低い声でゆっくりと同じ言葉を繰り返した。
・ ・ ・ ・ ・ ・ 速やかに譲ってもらおうか。
っっは ・ ・ ・ ・ ・ ・ はいっ!!もちろん良いですよ。アマテラス様のお子さんなら安心して任せられるや。ねっ?父上??
はぁっ??まじかよ。コイツ使えねぇ!!!
オオクニヌシは我が子のナヨさにビビった。しかし、ここでボロが出ればそのまま戦争に突入だ。その場を取り繕うしか無かった。
あ ・ ・ ・ ・ ・ ・ あぁ、そうかもな。
・ ・ ・ じゃ、私はこれでっ!!
そう告げるとコトシロヌシは、身を守るおまじないに、手の甲と甲をパチンと鳴らして、青い柴垣の中に引き蘢り、姿を隠してしまった。
相当、怖かったのだろう。
決まりだな。
あっ ・ ・ ・ いやー ・ ・ ・ 実は ・ ・ ・ ・ ・ ・
なんだ、まだ誰かいんのかよ?
えぇ、息子が治めていると言いましたが、実は、2人で治めてるんですよね。タケミナカタにも聞いてみなくっちゃ!!君と名前、似てるし、仲良くなれるかも。
・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ まぁ、いいや。タケミナカタは、どこだ?
もうすぐこちらに来ると思いますよ?
オオクニヌシがニッコリとタケミカヅチに笑顔を向けると、出雲方から地鳴りが聞こえてきた。そして、
という大きな音と共に、タケミナカタがこちらに向かって歩いてくるのが見えた。なぜか片手に1000人はいないと持てないような、大きな岩を抱えている。
親父ーお客さんまだ来ないのかー??
タケミナカタは浜辺まで来ると、ヒョイっとその大岩をほおり投げてしまった。
と地震のように地面が響く。
あ〜ちょうど良かった。彼が息子のタケミナカタです。よろしくお願いします。
オオクニヌシは、今日一番の営業スマイルを放った。