透きとおるような声で名前を呼ばれ、俺はその声のした方を振り向いた。
そこには、美しいひとりの女性がいる。
なにを隠そう俺の妻だ。
いつもは白の小袖に紅の袴という下着同然の恰好を、女ものの着物は重いからという理由だけでしているような女性だが、今日はいつもと違う。
今日は女ものの着物をばっちり着こんでいて、髪もおろしていた(ちなみにいつもは見た目など気にしないかのように無造作に一つ結びをしている)。
化粧も少ししているようだ。
…やはり美しい。
こうしてちゃんとめかしこんだ姿を見ると、やはり美しい女性なのだということがわかる。
いつも、こうしていればいいのに、と形だけとはいえ夫である身からすると思う。