あれは、いつのことだっただろう。
数年ぶりに君から手紙が届いた。

文面から察するに、国の重役についたらしい。
私はそれを読んでとても喜んだ。
だが、それを最後に手紙はこなかった。

気づけば、私もかなり高い地位に立っていた。
私は今、彼と同じ目線でいるだろうか…………

若奈

そういえば、ソールさんは魔法を使えるんですか?

ソール・グルナディエ

なんだ突然

若奈

だってディスナティって魔法で有名じゃないですか。だったらソールさんもできるのかなって

ソール・グルナディエ

ふむ…………

ソール・グルナディエ

私が魔法を使えるかだと……?

ソール・グルナディエ

随分な愚問だな。この私に魔法を使えるかだと?

ソール・グルナディエ

使えるも何も、私はディスナティでは名の知れた魔法使いなのだぞ

若奈

そうなの?

ソール・グルナディエ

軍に請われて戦に参陣したが、私一人で街ひとつ滅ぼせたほどだ

若奈

ふーーん

ソール・グルナディエ

それにだな…………

ソール・グルナディエ

………………………………

ソール・グルナディエ

自分から話を振っておいて、随分な反応じゃないか…………?

若奈

いや、誰もソールさんが魔法使いだってこと触れないから、早めに触れて置こうって

ソール・グルナディエ

こんな小さい娘に慈悲をかけられるとは…………

古森

二人とも、楽しそうだな

若奈

あ、お兄ちゃんお帰り

古森

ところで、話があらかた聞かせてもらったが

ソール・グルナディエ

随分と耳が良いんだな

古森

水男殿

水男

誰がみずおだ!!

古森

その魔法使いの力を信じて頼みがある

古森

土人形が村の近辺に現れたらしい。倒すのを手伝ってくれないか

ソール・グルナディエ

ほう、ここにはモンスターも出るのか

古森

この辺はまだ少ない方だ。それでもたまに危険なものがいるがな

ソール・グルナディエ

フッ、いいだろう。肩慣らしには丁度いい

ソール・グルナディエ

よし、私に任せておけ。そのモンスターはどこにいる?

古森

………………………………

若奈

どうしたの、お兄ちゃん?

古森

今話した土人形、国から危険対象として近づかないように言われているんだ

古森

書物で読んだことがあるくらいだが、土人形は動きが遅い代わりに固い皮で覆われている。その巨大な腕から繰り出される攻撃は一振りで地割れを起こすほどだという、とにかく、とても危険な怪物なんだ

若奈

え?でもこの近辺に出たってことは…………

古森

普通の平民なんかには到底勝ち目のない怪物だ。村の近くに現れたら、滅ぼされると思っていい

若奈

じゃあ、そんな危険な怪物なんかに勝負を挑もうっていうの、ソールさんは!!

若奈

お兄ちゃん、あんまりだよ……。早くソールさんに伝えないと…………

古森

いや、私も全く勝算もなしに行かせたりはしない。彼の噂も聞いていたんだ

若奈

彼……?

古森

勿論、水男殿のことだ

古森

先ほどの彼の話、まんざら嘘でもないらしいからね

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