ついに、この日が来た……






 校舎裏で女子を呼び出して告白する。

 王道でベタな内容だが、実行者としては、実際人生を大きく左右するイベントだと思っている。

 それなりの度胸、決断力を要する。






しかし……だ。




俺は今日、実行する。




お待たせー、雄太! ごめんね-、片付けで手間取っちゃってさ

雄太

いいけど別に・・・

珍しいよねー、雄太が部活終わるまで待っててくれるなんて

雄太

ちょっと話したいことあったし

裏で立ち話も何だし、久しぶりに一緒に帰らない?

雄太

うん……






 彼女の名前は金藤木葉(きんとうこのは)。

 通ってる高校では一つ上の先輩で、幼なじみである。

 家が近いから小、中学校までほとんど一緒に帰っていた。

 『容姿端麗・スタイル抜群』という言葉がここまで似合う女性は、17年生きてきて彼女しか知らない。




 好きだったんだ……。





 ずっと片思いしてた。




 何回も!






 何回も!






 何回も!






 言おうとしたけど、無理だった……。






 だからこそ、今回は絶対成功させる。





金藤 木葉

ちょっとー、あたしの話聞いてる……?

雄太

え!? ごめん、もう一回言って!

金藤 木葉

もういいよ・・・・・・、ここ曲がったら家だし、また今度ね

雄太

あ、うん











あれ・・・?









雄太

俺今日、何話したっけ……











 こうして俺の一世一代のイベントは、頭の中で完結した。









雄太

ただいま……

細川 母

おかえりー雄太! ご飯あるけどどうするー?

雄太

後で適当に食うわ……

細川 母

はーい♡ サバ缶も食べてね!






 放心状態で帰宅した後、自室のベッドに倒れ込んだ。

 もう何もやる気が起きない。

 シーンと静まり返った空間に、テレビから芸人の声だけが聞こえてくる。

 いつもなら爆笑間違いなしのネタも、ただの雑音にしか聞こえなかった。




雄太

はぁ……






 今回の件に限らず、いつも何をやっても駄目な自分に悲観してしまう。

 ほんと駄目駄目だな……、俺は。




苦労してんなー、アンタ

雄太

えっ!?






 突然どこからか、野太い声が聞こえた。


 いや・・・・・・、聞こえた気がした。


 何故なら、この部屋には俺だけしかいないのだから。




馬鹿かお前! 下だ、下!!

雄太

し、下?






 俺は恐る恐るベッドの下を・・・・・・。




 覗いてみる。









やあ!






雄太

ん?











第一話『出会い』 終









第一話 『出会い』

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