美家 王子(びいえ おうじ)

そっか……。
俺で出来ることがあれば、
何でもするよ

京漆 秋生(きょうしつ あき)

……じゃあ。
王子先輩を、
抱かせてくれますか?

美家 王子(びいえ おうじ)

……はい?

京漆 秋生(きょうしつ あき)

だから、
王子先輩を抱きたいんです

美家 王子(びいえ おうじ)

(抱きたいってなんだ!
抱きたいって……!!)

美家 王子(びいえ おうじ)

(あの晩、
ドキドキして眠れなかった
じゃないか……)

美家 王子(びいえ おうじ)

(でも、意識してたの
俺だけだったみたいだ。
だって、次の日……)

京漆 秋生(きょうしつ あき)

えっ、昨日のアレ?
冗談に決まってるじゃ
ないですか

美家 王子(びいえ おうじ)

じ、冗談!?

京漆 秋生(きょうしつ あき)

本気にしちゃったんですか?
ははっ、ごめんなさい

美家 王子(びいえ おうじ)

……っ!

美家 王子(びいえ おうじ)

(結局あれって、
からかわれただけ
なんだよなぁ……)

美家 王子(びいえ おうじ)

はーあ……

京漆 秋生(きょうしつ あき)

……王子先輩は俺のこと
嫌いですか?

美家 王子(びいえ おうじ)

嫌いなわけないよ……

京漆 秋生(きょうしつ あき)

だったらいいですよね?
王子先輩を好きにしても……

美家 王子(びいえ おうじ)

うん……。
秋生くんなら……いいよ

京漆 秋生(きょうしつ あき)

好きです、王子先輩……

美家 王子(びいえ おうじ)

俺も大好きだよ……

藤吉 姫(ふじよし ひめ)

……っていう事が
あったんですよ~

番長 暮男(ばんちょう ぐれお)

すぐにバレる
嘘をつくんじゃねえよ

藤吉 姫(ふじよし ひめ)

あっ、嘘って言いましたね?
真実を知ったら
腰砕けになりますよ!

番長 暮男(ばんちょう ぐれお)

腰抜かすんならわかるけど、
腰砕けってなんだよ

藤吉 姫(ふじよし ひめ)

本来は相撲で使う
言葉だったんですけど……

藤吉 姫(ふじよし ひめ)

BLでは主に受けが、
攻めからキスされたり
耳元でささやかれたりして

藤吉 姫(ふじよし ひめ)

メロメロになった状態を指して
腰砕けと言います!

番長 暮男(ばんちょう ぐれお)

俺はメロメロにされるんじゃなくて
王子をメロメロにする側だろうが!

藤吉 姫(ふじよし ひめ)

大丈夫です。
攻めが受けの痴態を見て
腰砕けになるパターンも
ありますから

番長 暮男(ばんちょう ぐれお)

ち、痴態……

美家 騎士(びいえ ないと)

オイオイ……。
昼間から年頃の男女がする
会話じゃないだろ?
しかも学校の廊下で

藤吉 姫(ふじよし ひめ)

騎士先生!

番長 暮男(ばんちょう ぐれお)

あっ、騎士兄ちゃん……

美家 騎士(びいえ ないと)

あれ?
暮男が俺のことそうやって
呼んでくれるなんて
珍しいな

番長 暮男(ばんちょう ぐれお)

う、うるせえ!
間違ったんだよ!!

美家 騎士(びいえ ないと)

恥ずかしがらなくても
いいのに

藤吉 姫(ふじよし ひめ)

番長さんって、
昔は騎士先生のことを
騎士兄ちゃんって
呼んでたんですね

美家 騎士(びいえ ないと)

うん。
昔はよくうちに来て、
俺になついてたんだ。
可愛かったなぁ

番長 暮男(ばんちょう ぐれお)

テメーのうちの飯はうまいから
それを目当てに
遊びに行ってたんだよ。
つまり利用してやってたんだ!

藤吉 姫(ふじよし ひめ)

…………

藤吉 姫(ふじよし ひめ)

昔からこんな仕上がり
だったんですか?

美家 騎士(びいえ ないと)

昔はもうちょっと
素直だったかな?
でもいい子なのは変わらないよ

番長 暮男(ばんちょう ぐれお)

うるせえ!
今の俺は昔と違って悪なんだよ!
人の黒歴史を晒すんじゃねえ!

美家 王子(びいえ おうじ)

どっちかっていうと
今の方が黒歴史だろ

番長 暮男(ばんちょう ぐれお)

いいところに来たな王子!!
テメーに話があるんだ!
こっちに来い!

番長 暮男(ばんちょう ぐれお)

(藤吉の言ってたことが
本当なのか確かめてやる!)

美家 王子(びいえ おうじ)

ヤダよ

番長 暮男(ばんちょう ぐれお)

なんでだ!?

美家 王子(びいえ おうじ)

こういう
テンションのお前って、
ろくな話をしないだろ

番長 暮男(ばんちょう ぐれお)

クッ……!
来いったら来いって!

美家 王子(びいえ おうじ)

イヤだったらイヤだ!

藤吉 姫(ふじよし ひめ)

行ってあげて下さい。
かっこ! 素敵な展開が
待っている予感がするので。
かっこ閉じ!

美家 王子(びいえ おうじ)

藤吉さん……。
心の声を()に
変換し忘れてるよ?

美家 騎士(びいえ ないと)

まあまあ王子。
食事会に暮男も誘って、
ゆっくり話したらどうだ?

番長 暮男(ばんちょう ぐれお)

食事会?

美家 騎士(びいえ ないと)

1年生の秋生くんという
男の子がうちに夕食を
食べに来るんだ

美家 王子(びいえ おうじ)

あっ、兄ちゃん。
勝手にしゃべらないでよ

美家 騎士(びいえ ないと)

どうして?

番長 暮男(ばんちょう ぐれお)

おい、王子……。
誰だよ秋生って!
俺が知らない内に
新しい男を作りやがったな?!

番長 暮男(ばんちょう ぐれお)

許さねえ!
その一年坊主と
会わせろ!!

美家 王子(びいえ おうじ)

こういう風になるから

美家 騎士(びいえ ないと)

なるほど

藤吉 姫(ふじよし ひめ)

あの。
そのお食事会、
私も参加していいでしょうか?

美家 王子(びいえ おうじ)

いいけど、
食事会って言っても
大した物は出ないよ?

藤吉 姫(ふじよし ひめ)

別にいいです。
大した物が見れそうなので!

美家 王子(びいえ おうじ)

そ、そう

美家 騎士(びいえ ないと)

じゃあふたりとも、
学校が終わったら
王子とうちにおいでよ

京漆 秋生(きょうしつ あき)

……あれ?
聞いていたよりも
人数が多いですね

美家 王子(びいえ おうじ)

兄ちゃんが今日のこと
しゃべっちゃってさ。
二人も来たいって言ったんだよ

京漆 秋生(きょうしつ あき)

ふーん、そうですか……

番長 暮男(ばんちょう ぐれお)

あん?
ガンつけてんじゃねーぞ
テメー!

美家 王子(びいえ おうじ)

暮男、ハウス!

番長 暮男(ばんちょう ぐれお)

だから俺は犬じゃねえって
言ってんだろッッ!!

京漆 秋生(きょうしつ あき)

二人とも、
仲良いんですね

藤吉 姫(ふじよし ひめ)

だってこの二人は
幼なじみですから

京漆 秋生(きょうしつ あき)

幼なじみ……?

番長 暮男(ばんちょう ぐれお)

フンッ、驚いたか。
俺は王子のことを
幼稚園から知ってるんだよ!

京漆 秋生(きょうしつ あき)

幼稚園児の王子先輩か。
ちっちゃくて可愛かった
だろうな……

美家 王子(びいえ おうじ)

なんでちっちゃいって
決め付けるの?

京漆 秋生(きょうしつ あき)

だってほら、
今も俺より身長低いし?

美家 王子(びいえ おうじ)

ひ、人が気にしてることを。
秋生くんの身長が
高すぎるんだよ

京漆 秋生(きょうしつ あき)

いいじゃないですか。
キスする時に
丁度いい身長差ですよ?

美家 王子(びいえ おうじ)

えっ……?

番長 暮男(ばんちょう ぐれお)

テメーこらっ!
人のモンに手を出すんじゃねえ!

美家 王子(びいえ おうじ)

手なんか出されてないッッ!

京漆 秋生(きょうしつ あき)

ははっ。
聞いてて飽きませんね、
二人の会話

藤吉 姫(ふじよし ひめ)

余裕ですね。
番長さんは敵じゃない
ってことですか?

京漆 秋生(きょうしつ あき)

……ん?
小猫と小犬が
じゃれ合ってるみたいで、
可愛いなぁと思って

番長 暮男(ばんちょう ぐれお)

だから俺はっ!
犬じゃねえってのっ!!

美家 王子(びいえ おうじ)

キャンキャン吠えるなよ。
だからみんなに犬って
言われるんだろ?

番長 暮男(ばんちょう ぐれお)

うるせー。
お前なんか猫って
言われたくせに

美家 王子(びいえ おうじ)

うっ……

番長 暮男(ばんちょう ぐれお)

まあ俺からすれば
王子は猫っていうよりも、
うさぎっていうか
俺の心を惑わす悪戯天使
っていうか
ハムスターっていうか
リスっていうか……

美家 王子(びいえ おうじ)

おい、一個変なのが
混じってるぞ

藤吉 姫(ふじよし ひめ)

わかります。
ハムスターですね?

美家 王子(びいえ おうじ)

いやそっちじゃなくて

美家 騎士(びいえ ないと)

晩ご飯ができたってさ。
ダイニングにおいでよ

藤吉 姫(ふじよし ひめ)

はーい♪

藤吉 姫(ふじよし ひめ)

今日はありがとう
ございました。
とっても美味しかったです

美家 王子(びいえ おうじ)

良かったらまた来てよ

藤吉 姫(ふじよし ひめ)

はいっ!
今回は目ぼしいBLイベントが
起こらなかったので、
次回リベンジしますね!

美家 王子(びいえ おうじ)

次回も起こらないよ?

美家 騎士(びいえ ないと)

じゃあ、藤吉さんを
車で送ってくるから

美家 王子(びいえ おうじ)

あ、うん……。
またね、藤吉さん

藤吉 姫(ふじよし ひめ)

はい。
おやすみなさい、BL王子。
みなさんもさようなら

京漆 秋生(きょうしつ あき)

バイバイ

番長 暮男(ばんちょう ぐれお)

おう、またな

番長 暮男(ばんちょう ぐれお)

さて、と……。
俺も帰るかな

美家 王子(びいえ おうじ)

途中まで送ってくよ。
秋生くんも一緒に行こう?

京漆 秋生(きょうしつ あき)

うーん、と……。
泊まったらダメですか?

番長 暮男(ばんちょう ぐれお)

はあ?!

美家 王子(びいえ おうじ)

もしかして
家に帰りたくないの?

京漆 秋生(きょうしつ あき)

っていうか。
今日は楽しかったから、
このまま帰るのが寂しく
なっちゃって……

番長 暮男(ばんちょう ぐれお)

ダメに決まってんだろ!
人の迷惑考えろ!!

美家 王子(びいえ おうじ)

ヤンキーのお前が
それを言うのか

番長 暮男(ばんちょう ぐれお)

俺は人に迷惑を
かけない範囲で
不良やってんだよ!

美家 王子(びいえ おうじ)

迷惑をかけない不良って……

番長 暮男(ばんちょう ぐれお)

そうだ!
俺は善良な不良だっっ!

美家 王子(びいえ おうじ)

日本語が破たんしてるぞ

京漆 秋生(きょうしつ あき)

やっぱり迷惑ですよね。
俺、帰ります

美家 王子(びいえ おうじ)

いいよ、秋生くん。
泊まっていきなよ

京漆 秋生(きょうしつ あき)

えっ……いいんですか?
ありがとうございます

番長 暮男(ばんちょう ぐれお)

なんだと!?
じゃ、じゃあ俺も泊まる!

美家 王子(びいえ おうじ)

え、暮男も?
別にいいけど、
布団足りるかな?

番長 暮男(ばんちょう ぐれお)

俺が王子のベッドで
一緒に寝れば大丈夫だろ

美家 王子(びいえ おうじ)

それはダメ

番長 暮男(ばんちょう ぐれお)

なんでだよ!
昔はそうやって
寝たことあっただろ?!

美家 王子(びいえ おうじ)

昔は昔だよ。
今は寝てる間に
変なことしそうだろ

番長 暮男(ばんちょう ぐれお)

なんでわかったんだ!

美家 王子(びいえ おうじ)

…………

京漆 秋生(きょうしつ あき)

ははっ。
もし布団が足りなかったら、
俺が床に寝っころがりますよ

美家 王子(びいえ おうじ)

えー?
お客さん用の布団が無いか
母さんに聞いてみるよ

番長 暮男(ばんちょう ぐれお)

ぐぅ……

京漆 秋生(きょうしつ あき)

…………

美家 王子(びいえ おうじ)

(布団が二人分有って
良かった。
暮男も大人しく寝たし)

美家 王子(びいえ おうじ)

(んっ……?
誰かがベッドに
潜りこんで来た!?)

美家 王子(びいえ おうじ)

おい、暮男!
やめ……っ

京漆 秋生(きょうしつ あき)

違いますよ。
俺です

美家 王子(びいえ おうじ)

秋生く……むぐっ!?

美家 王子(びいえ おうじ)

(秋生くんの手で、
口をふさがれた!?)

京漆 秋生(きょうしつ あき)

静かにしてください。
番長さんが起きちゃいますよ?

コクコク

美家 王子(びいえ おうじ)

…………っ!

京漆 秋生(きょうしつ あき)

……ふぅ

美家 王子(びいえ おうじ)

(あっ……。
口から手が離れた)

美家 王子(びいえ おうじ)

ど、どうして
俺の布団に……?

京漆 秋生(きょうしつ あき)

王子先輩は、
俺が元気になるためなら
何でもしてくれるって
言いましたよね?

美家 王子(びいえ おうじ)

い、言ったけどさっ

京漆 秋生(きょうしつ あき)

王子先輩に触りたいです。
……いいですか?

美家 王子(びいえ おうじ)

……ダメだよ

京漆 秋生(きょうしつ あき)

じゃあ、
キスならいいですよね?

美家 王子(びいえ おうじ)

それもダメ……んっ!

美家 王子(びいえ おうじ)

(唇に……!!)

京漆 秋生(きょうしつ あき)

チュッ、チュッ……

美家 王子(びいえ おうじ)

んっ、んっ……!

京漆 秋生(きょうしつ あき)

プハッ……。
暴れないで下さいよ。
番長さんが起きちゃいますよ?

京漆 秋生(きょうしつ あき)

まあ俺は、
見られても構わないですけど

美家 王子(びいえ おうじ)

え、それは困る

京漆 秋生(きょうしつ あき)

どうして?

美家 王子(びいえ おうじ)

だって暮男がこれを見たら
絶対に騒ぎ始めるよ……

京漆 秋生(きょうしつ あき)

だったらいい子に
できますよね?

チュッ

美家 王子(びいえ おうじ)

(おでこにキスされた……)

京漆 秋生(きょうしつ あき)

王子先輩……

美家 王子(びいえ おうじ)

……ンッ!

美家 王子(びいえ おうじ)

(秋生くんの唇が、
首筋から、鎖骨に……)

美家 王子(びいえ おうじ)

ダメだってば!
こういうのは恋人同士で
するもんだろ?

京漆 秋生(きょうしつ あき)

王子先輩のことが好きです。
それでもダメですか……?

美家 王子(びいえ おうじ)

えっ!?

美家 王子(びいえ おうじ)

(しまった!
大きな声出しちゃった!!)

番長 暮男(ばんちょう ぐれお)

……ンガ?

番長 暮男(ばんちょう ぐれお)

…………

番長 暮男(ばんちょう ぐれお)

お前ら、何やってんだ?

美家 王子(びいえ おうじ)

暮男……。
こ、これは……

京漆 秋生(きょうしつ あき)

見てわからないですか?
俺と王子先輩は付き合うことに
なったんです

美家 王子(びいえ おうじ)

まだ返事してないし!
っていうかこの状況で
抱きしめないでよ!

京漆 秋生(きょうしつ あき)

……なーんてね

美家 王子(びいえ おうじ)

えっ?

番長 暮男(ばんちょう ぐれお)

えっ?

京漆 秋生(きょうしつ あき)

寒かったんで、
温めてもらってただけです。
じゃあ、もう布団に戻りますから

美家 王子(びいえ おうじ)

う、うん……

番長 暮男(ばんちょう ぐれお)

だったら俺も王子に
温めてもら……っ!

美家 騎士(びいえ ないと)

お前らうるさいよ。
早く寝なさい

美家 王子(びいえ おうじ)

起こしちゃった?
ごめん、兄ちゃん……

番長 暮男(ばんちょう ぐれお)

チッ!!

京漆 秋生(きょうしつ あき)

この前の食事会、楽しかったです。
誘ってくれて
ありがとうございました

美家 王子(びいえ おうじ)

食事会っていうか、
お泊まり会になっちゃったけどね。
良かったらまた遊びに来てよ

京漆 秋生(きょうしつ あき)

はい。
ぜひ、また

美家 王子(びいえ おうじ)

…………

京漆 秋生(きょうしつ あき)

急に黙って、
どうかしましたか?

美家 王子(びいえ おうじ)

あの夜言ったことも、
いつもの冗談なんだよね?

京漆 秋生(きょうしつ あき)

あの夜?

美家 王子(びいえ おうじ)

だ、だからっ!
俺を好きって言ったこと!
本気で付き合いたい
わけじゃないよね?

京漆 秋生(きょうしつ あき)

本気ですよ

美家 王子(びいえ おうじ)

……えっ?

京漆 秋生(きょうしつ あき)

ははっ。
答えはいつでもいいですから。
考えておいてくださいね!

美家 王子(びいえ おうじ)

(ええ~?!)

第12話 空き教室の君 - 後編

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