あの日のことは今もよく覚えている。
大切なあの人を失った日だから。
俺はあの人のことが好きだった。
世界の誰よりもあの人のことが大事だった。
けれど、あの人の俺に対する執着に、だんだん俺は恐怖を感じるようになっていた。
あの頃の俺に自由はなかった。
俺は、このままじゃあの人も、俺自身もだめになると思ったんだ。
だからこそ俺はあの人のいる家を捨てた。
距離を置けば、きっと昔の優しいあの人に戻ってくれると思っていた。
でも、それは思い違いだった。
あの人はまずます俺に対する執着をひどくしただけだった。
俺達は必死であの人に居場所を知られないようにしていたのに、あの人はあっさりと俺の居場所を見つけた。
俺はますますあの人への恐怖心を強くした。
あの人が怖くて仕方なかった。
あの人が怖くて怖くて怖くて怖くて――
気がついた時にはもう、取り返しのつかない事態になっていた。
君は俺を責めたりはしなかった。
俺の犯した罪を知っても、俺を捨てなかった。
そればかりか、君は俺の罪を消す手伝いをしてくれた。
君はそれによって自分が罪に問われるかもしれない危険を知りながらも、俺を守ってくれた。
ふたり冷たい雨に打たれながら、俺達はこの罪を忘れると誓った。
忘れて、ふたりで生きていくことを決めた。
その日から、君の存在は俺の中でどんどん大きくなっていった。
君は俺のすべてだった。
俺はなにがあっても君のそばにいようと思った。
君がいなかったら、俺はここまで続けてこられなかっただろう。
君がいたから、俺はどんなにつらいことでも耐えることが出来たんだ。
それなのに、君は――…