こ、ここはどこ!?

 呆然として佇むことしかできない私の目の前には、テレビの中で繰り広げられていたような合戦が繰り広げられていた。

だから言ったでしょ~、戦国時代に行ってみたいかどうかって。

それって、このゲームの中の話じゃないの?

 携帯ゲーム機から繋がったヘッドフォンから聞こえて来る声に、私は問いかけた。

誰がゲームだなんて言ったの? フフ、ハハハ

ちょ、ちょっと待ってよ、あなたたちってゲームのキャラじゃないの?

 言いながらも、自分でもバカなことを言っているのはわかっていた。ゲームのキャラならこのように友人と話すように会話が成立するはずがないのだから。

一度でも、僕たちがゲームのキャラだなんて言ったっけ?

うん、確かに言われていない……けど、私いったいどうしたら……ここはどこなの? 西暦何年?

 私は、小高い丘の上から平地で戦い続ける兵たちを見つめながら言った。

ここは、西暦1600年。場所は関ヶ原だ。

そして、ここは西軍の本陣、笹尾山~。石田三成の陣!

関ヶ原の戦いなら、聞いたことあるわ。さっきおばあちゃんから聞いたばかりだもの……
でも、意外だったなぁ。戦国時代の合戦って、たくさんの騎馬武者同士がグワッーって大軍でぶつかり合っているイメージだったんだけど、そうじゃなくてみんな馬から下りて戦っているのね、さっきテレビに映ってたドラマと違うみたい……

て、ちょっと待って、石田三成の陣って……負けた側じゃないの!?

それに、私の姿見えてないの?

 私が立っているその丘は、「大一大万大吉」という文字が書かれた布で覆われていた。そして、その布で囲われた中には、下で戦う兵たちよりも立派な鎧兜を身につけた武士たちがウロウロと私の周りを歩いている。
 私は、その人たちから見たら、かなり奇抜な格好をしていると思うのだが、その人たちは私に気付く様子もなく、素通りしていく。

その辺は、ちゃんと見えなくしてあるから大丈夫!
まあ、今のところはオーブのようなものに囲まれてここに立っている、と思ってよ。

い、今のところは、ってどういうことよ!?

 いつの間にか、丘の下で戦っていたこちら側の集団が押されはじめている。中には、槍を構えたままこの丘に向かって来ようとする兵もいた。
 そして、私がいる陣では、丘ギリギリに作られた柵に寄った鉄砲隊が応戦し、丘まで登って来られないようにしていた。
 しかし、それがいつまでもつかはわからない。

 ゲームではないなら、それこそ鉄砲の弾が無限にあるわけではないだろう。鉄砲も連射できるものではないようで、鉄砲たけではなく、弓も使って敵に応戦していた。

ちょっと、だんだん攻められて来ているわよ!
今のところはって、そのオーブみたいなものはどれぐらい保つの? 私、ここにいて大丈夫なの?

 そう問う間にも、周囲の武者たちが先ほどよりもざわめき立っていくのがわかる。
 そして、ひっきりなしに背中にバルーンのようなものを背負った兵が「伝令!」と言いながら、次々にやって来る。
 その「伝令!」と告げる兵の話を聞くごとに、この陣幕の中の武者たちに動揺が走るのが、私にもわかった。

ねぇ、このままここにいても大丈夫なの?
なんか、負けそうなんですけど……。

そりゃ、負けるさ。君のいた時間軸は、関ヶ原で東軍が勝って、その後、徳川幕府を開く、その時間線に沿った世界だもの。

え、ゲームみたいに、ここからifルートに入って、歴史を変える……とかできないの?
ただ、私は観戦しに来ただけっていうこと?

娘よ、この時間軸に干渉したいのか?

できるの?

ああ、できる。西軍を勝たせたいのか?

 あらためて問われてみると、西軍を勝たせたいかどうか……そこまで積極的な思いは、私の中に湧いて来なかった。
 なぜなら、私はまだこの本陣の奥にいるはずの、石田三成という人をよく知らない。
 この人が勝つことで、よりよい未来が待っているのかわからないから、答えられないのだ。

まだ、わからないわ。
だって、私、石田三成っていう人がどんな人なのかよく知らないんだもの。

知りたいか?

それは……もちろん、知らないよりも知っていた方が、判断できると思うけど。

わかった、その願い叶えよう。

え、な、何……!?

突然、再び光に包まれた。

私の目の前が、真っ白に変わる。

あ~あ、またディーったら。
きちんと説明もしないで跳ばしちゃって。

じゃあ、石田三成っていう人がどんな人か見ておいでよ、お姫様。フフフ。

戦国時代に来てしまった!?

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