しかしながら、一回助けてもらったものの、その恩は返さないといけない。そう思って私は弁当を作っていた。
余談だが、私は食事を作るほうだ。だって自分の弁当もきちんと作っているのだから。そのために朝五時半から起きて三人分の弁当を作っている。……なぜそうなのかについては、あまり語りたくないので、ここでは割愛することにしよう。誰が聞いているか、解らないからね。
あいにく、金谷くんは屋上でご飯を食べる。ほんとうはあんまりしてはいけない行為らしいけれど、先生も見て見ぬふりなので、まあ、別にそれくらいはいいかな、って思っている。私だってたまに屋上でご飯を食べる時もあるし。あそこ、風が気持ちいいのよね。 そして、屋上へ向かう階段を昇っていく。
一応誰にも見られていないことを確認する。……よし、誰もいないようだ。
屋上に上がると、一人で金谷くんは柵にもたれかかっていた。
ヘッドフォンをつけて、何か音楽を聴いているのか、小刻みに首を揺らしている。ヘッドフォンはスマートフォンに接続されているらしい。そして食べているものはカロリーメイト。
それを見て私は溜息を吐いた。むしろ、よくそれだけのカロリー摂取であれほどの不良を相手にしたものだと思う。しかも余裕で勝っていたし。どういうことだろう? 朝と夜にため込むタイプなのかな?
まあ、そんなことはどうでもいい。
漸く金谷くんは私に気づいてくれたようで、ヘッドフォンを外して私のほうを見てくれた。