くるくるくるくる。シャープペンシルが右手で踊り続ける。
くるくるくるくる。シャープペンシルが右手で踊り続ける。
ドリンクバー内のドリンクの消失にドリンクの復活。間違いなく普通の出来事ではないですね
それは、そうですけど……。別にあのデ―――前のお客様が何かイタズラをされたとかそれだけのことじゃないんですか?
プロテクト魔法により本は丈夫にできているがそれでもたまに落書きされたりなど悪質なイタズラをされることもある。今回の件もおそらくあのデブがなにか仕掛けたに違いないと思っていたのだけど。
ちなみにこのドリンクバーの機体はどういうものなのですか?
えっ?確かクリューブル社のHOW―クリックというものですが
店を開くにあたって勧められた時のことを思い出す。うん、たしかそうだ。
なるほど。だとするならイタズラという線は限りなく0ではないですか?
どういう?
クリューブル社は対魔法に強い会社。特にHOW―クリックは魔法によるプロテクトはかなり強くかかっているので魔法によるイタズラという線はなかなか
あっ、そういえばそんなこと言って気がします
それによって変にジュースを混ぜようとしたり飲み物を温められたりとかをしようとするバカ客を返り討ちにしようとして設置した覚えがある。
その効果は大きく今までイタズラなんて皆無だったから完全に忘れていた。
だとすると魔法によるイタズラではないということですか?
そうではないでしょうか。もちろんプロテクト魔法を超える魔法を使っていたのなら話は別ですが
でも、そうするとこの飲み物消失の原因は?
そうですね
クルクルクルクル。
シャープペンシルが踊る。
それじゃあ……。そうだ。逆転の発想。プロテクト魔法が壊れたんですよ。その暴走。それが今は収まっていると考えればいいんじゃないんですか?
なるほど。ちなみに御存知でしょうか?家電は一つ壊れたら連続的に壊れていくという話を
えぇ。もちろん。引っ越しとかいろんな原因でそもそも買い揃えたのが同じ時期だからとか色々説はあるらしいですけど
なるほど。だとするならばプロテクト魔法が壊れたという説はおかしくないですか?
えっと?
このやり取りになにかデジャヴ感が産まれる。というかまだシャーペンが回ってるし……。
確かに家電製品は連続しては壊れますがそれによる因果関係はあくまでもスタートの時期が一緒だからという第三要因によるものです。ということはですよ、同時にドリンクバーが壊れるというのは考え辛くありませんか?
あっ、そっか
二つが同時に壊れるというのは確かにおかしい。それこそ天文学的数値でしかありえないのではないだろうか。
うーん……だとしたらもうわかんないんですけど。もしかして、何か思い浮かんでます
先ほどまで回っていたシャープペンシルが回転を止める。
このミステリー。全て書けました
……決めポーズ?
思わず声が出る。ビシッという効果音が付きそうな形でシャープペンシルを前に向けていた。
さて、真実を導くためには間違いを消していくことの方がいいですよね
無視なんだ……。それで、なんですか?
なんかこれ以上言っても仕方ない気がする。大人しく話を聞こう。というか、この言い回し。どこかで聞いたことがあるような。
まずあり得ないものとして挙げられたのが機体に魔法をかけられた線、そして同時故障ですね
一応0%ではないですけど
そして次にありえないのは見間違いなどの線ですね。二人同時で目撃しておりますから
これで見間違いや錯覚だったら私は医者に行きます
その時はぜひ私も。ただし、その必要性はないと思いますが
どこか得意げに積み上げられているグラスを取る。
もし、私の憶測が正しければこのグラスを置くことにより面白いことが起きますよ
そう言って得意げにグラスを置く。
えっ!?なんで、また……
するとジュースの中身が空っぽになる。男が青汁のボタンを押すもコップの中に注がれることは無い。
やはり、仮説は本説となりました
あっ、思い出した。この言い回し。
そう、正解はこれです。グラスに魔法がかけられていたのです。そうすればすべての謎が解けます。グラスにつけられていた魔法はループと幻影を見せるもの。そのトリガーになったのは強い魔力を感じる事です
ループ魔法によりグラスにジュースが注がれる前にジュースが消失。そしてドリンクバーの中身は幻影で空っぽにということですか
そうです。おかしいと思ったんです。普通ドリンクが空っぽだったら音がなったりしてそれを知らせるはずなのにそれもなく通常に作用してましたからね。ちなみに、このグラスの魔法は一度発動するときえるのではないでしょうか
グラスを取ってもう一度置く。すると、確かにドリンクの中身が復活していた。
だとするとこのグラスすべてに魔法が
まあ、魔力を二回浴びると元に戻るみたいだし。
スライトフィーバー。スライトフィーバー
二回連続で周りの温度を微妙に温める魔法さて、を使う。ここにきて初めて魔法が役に立った。
さて、全ての謎が書けましたね
あの、あなたは……もしかして
あぁ、私の名前は
アキス、先生?
……その通り、私はミステリ作家のアキスと申します
これが、私とどこか鼻にかかるような喋り方をするアキス先生の出会いだった。というか、魔法をかけたであろう、あのデブ……。本当にムカつく。