おらぁっ!

そぃゃぁ!

とどめだぁぁっ!

ぃよーぅしっ、なかなか手応えのある木だっただ! ちっと休憩すんべ!

……って、おっかぁまだ弁当もって来ねぇのか。

はぁー、なーんか雨も降りそうだし、早めに片付けちまったほうがいいかや

おつかれさまです、木こりさん

木こり

しっ、神官女さまっ!? なしてこげなとこへ!

神官女

木こりさんのお母様にお弁当を届けるよう頼まれまして

木こり

なっ! おっかぁ、なんちゅうことを!

申し訳ねぇ神官女さま、神様に仕えるお方にガキの使いみたいなことさせちまって

神官女

いえいえ、実はお母様ちょっと腰を痛めてしまわれたようなんです。

これも村の皆様の平穏のため、神官として当然の勤めですわ

木こり

そ、そうだっただか……それにしたって何も神官女さまに頼まなくたって、隣の炭焼きのおっちゃんにでも頼めばいいだに……

山にゃ気の荒ぇケモノどももいるし、女が一人で歩くにゃ危ねぇだよ

神官女

あら、こう見えて私、けっこう野山は歩き慣れてますのよ。

最初の赴任地も山奥でしたから

木こり

それだけじゃねぇだ。

最近じゃ国境あたりで隣の国と蛮族どもとで戦がおっぱじまったって話だし、近ごろ何かとこのあたりの山は物騒なんだべさ

木こり

ん?

神官女

なっ……何かしら

うわぁぁぁっ! たっ、助けてぇぇっ!!

ぶごぉぉぉっ!

木こり

おっ、大猪!? いけねぇ神官女さま! 早よう逃げるだよ!

神官女

誰か襲われてますわ、助けないと!

木こり

ダメだ! あの大猪、よく見たら血だらけだべ。

手負いの獣は特に凶暴で危ねぇだよ!

神官女

そんな! 見捨てるなんてできません!

ぶっごおおっ!

少年

ひぃいいいっ!

ぶごっ!

神官女

こっ、こっちにいらっしゃい!

ぶごっ! ぶごぉおっ!

神官女

きゃああぁっ!

木こり

あぶねえ!

木こり

ぅぁっ!

神官女

木こりさんっ! 大丈夫ですかっ!

木こり

っ痛う……は、早よ逃げるだ

神官女

そんな!置いていけませんっ!

ぶごぉぉぉっ!

神官女

っ……神様っ!

神官女

…………

神官女

…………えっ?

……ぴくっ……ひくっ…

神官女

し、死んでる……?

ぃょーぅ、危機一髪だったかい

神官女

女狩人さん!

女狩人

なんか叫びながら走り回ってるのがいるから来てみたんだが、間一髪間に合ったみたいかい

女狩人

おーい、木こりー。 生きてっかいー?

木こり

ぅ、女狩人だか

女狩人

おー、生きてっかい。 立てるかい?

神官女

待って、木こりさんの傷を治します

木こり

こっ、こんくらい平気だべ! ほれっ!いちにーいちにっ……痛ぅー

神官女

ほらじっとして!

木こり

も、申し訳ねぇオラなんかに回復魔法使ってもらって

神官女

いいえ、私のせいです……ごめんなさい

女狩人

そこのあんちゃんも大丈夫かい? ケガしてるかい?

少年

い、いえ、おかげさまで擦り傷くらいで済んだようです。

ありがとうございます助かりました

木こり

はぁー、しっかし情けねぇ……みっともねぇとこ見せちまっただよ……

神官女

そんなことありませんわ木こりさん。 とても勇敢でしたわよ

木こり

いやぁ、そんなことねぇだよ。

はぁーオラにも戦う力があればなぁ……かっこわりぃだ……

女狩人

ところであんちゃん、なんで大猪なんかに追われてたんだい。

こいつアタシがやったの以外にかなり傷を負ってるみたいだけど、アンタがやったのかい?

少年

とっ、とんでもない! 拙者こんな大きいのにちょっかいかけるほど馬鹿じゃありませんよ!

山を越えようと歩いていたら、途中でこの手負いの大猪と鉢合わせてしまったんです

女狩人

本当かい。 じゃあ誰か他にコイツを狩ろうとして取り逃がしたやつがいるってことかい……

木こり

もう大丈夫だ。 ありがとうごぜぇます神官女さま

神官女

いえ、本当にこの程度で済んでよかったですわ。 そちらの方も念のため回復しておきますわ

少年

や、これはかたじけない

木こり

しっかしおめぇさん、なんだって一人で山越えなんてしようとしてたんだべ。

見たところまだ15そこそこみてぇだけんど、どっから来なすっただ

女狩人

木こり、それよりもひとまずこの大猪を村へ運ぶの手伝ってくれるかい。

かなり空が曇ってきたし、落ち着いた話はそれからにしたほうがいいんじゃないかい

木こり

な、なんだべ、さっきまでおめぇが根掘り葉掘り聞こうとしてただに。

まあ、んじゃ担ぎ棒作るからちっと待ってるだよ

少年

拙者も何かお手伝いを!

女狩人

勿論、あんたにも担ぐときに力を貸してもらうけど、今はちっと休んでてくれるかい。

山ん中を走り回ってちと疲れてるんじゃないかい

少年

そ、そういえば……

神官女

回復魔法では傷は治せても疲れまではとれませんわ、今はゆっくりお休みになって

少年

かたじけない。 それでは、お言葉に甘えて……

…………

神官女

あ、降りだしましたわ

木こり

村に着くまで天気がもってよかっただよ

女狩人

よしご苦労、あとはアタシが血抜きして解体しておくし、ここまででいいんじゃないかい

少年

いやー重かった。

しかし先ほどは本当に助かりました。 何とお礼を申し上げてよいやら

神官女

ひとまずは神殿へおいでください。 この村には宿がありませんので、お休みになられる場所をお貸しいたしますわ

少年

何から何まで、誠にかたじけない

女狩人

色々と聞きたいことはあるけど、今日のところはゆっくり身体を休めるといいんじゃないかい

木こり

あぁ、オラも弁当食い損なっちまったし、今からメシ食って昼からはもう休みにするだよ

女狩人

することないんなら解体手伝うかい

木こり

おめ、オラだって一応は怪我人だっぺよ……

女狩人

傷はもう治ってるじゃないかい。 それにそんなヤワな鍛え方してたかい

木こり

わかったわかった、じゃあメシ食って、おっかぁの腰の具合みてから行くだよ

…………

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