僕は、昨夜書き上げたセットリストのメモを彼女たちに見せた。
前回のビギニングアイドル!
グッズ開発者の霜月秋桜です。開発中の部品を運んでいたら転んでしまって……そんなとき、新しくやってきたアイドルさんたちが助けてくれました。しかも、新グッズのテストにも協力してもらえることに! でもまだユニット名がついていないんですって。私まで命名会議に巻き込まれちゃいました……。
すいませんねえ、ゲストなのにダイジェストまでやっていただいて。
いえいえ、お安いご用ですよ。
とまあ、秋桜さんのご助力もあって、無事にユニット名"leonids"(レオニーズ)に決定したわけですが……。
つ……疲れました……。
充電が必要です~。
なあ……持ってきたスタミナドリンク、今飲んでいいか?
いや、それはメンタルが減少してからのほうが……。
そういえば何気なく聞き流してたけど、メンタルって何?
有り体に言って精神力です。一芸突破をすると1点減る他に、これからする仕事を断ったとき、ライブで演目に挑戦するときに減少します。
なくなるとどうなるの?
しばらく行動できなくなる上に、獲得ファン人数が半分になっちゃいます。根性で回避できることもありますが、必ずとは言えません。
怖いな……。
だからメンタル管理は重要なんです。特に玲奈ちゃんは性格が「マジメ」なのでメンタルが他の2人よりも低かったりしますし。
悪かったな。
ああっでもスタミナドリンクとか対策もしてるんでしょ!? 大丈夫ですよ!!
とにかく、ユニット名も決まったことだし、シアターのみなさんに挨拶回りをして、今日はあがらせてもらおう。
本格始動は明日からですよ!
は、はい……。
助かった……。
スリープモードに移行します
早い早い早い!
で、一日経ったわけだが……我らがプロデューサーは何をやっているんだ?
お仕事が始まる大事な日なのに……。
while(!producer) {
sleep(1);
}
こいつまた寝る気だ……!
ダメですよ葉月ちゃん! 起きてください!
いやーごめん、待った?
プロデューサー確認……応答を検索……1件がヒットしました。
「ううん、今来たとこ」
どんなプログラムだ……。
秋桜さんにみてもらったほうがいいかも。
いやね、夜中に妖精に叩き起こされてさー。
なんとこの人、ライブのセットリストを作っていなかったのです! プロデューサーの大切なお仕事なのに!
で、本とかネットとか見ながら慌てて作ったんだよ。これでいいかな。
僕は、昨夜書き上げたセットリストのメモを彼女たちに見せた。
今回は初めてのライブなので、合計で80人以上のファンを集められれば成功です。2倍の160人以上集められたらきっといいことがありますよ!
カバーソング、自己紹介、ダンス、グッズの販促、MC、オリジナルソングの6演目か。
シビアだと予測されますね。
でも、本当にライブやるんだって感じがしてきました。
うん。これを目標に、仕事頑張っていこう!
では、サイコロ様にお願いして、お仕事をいただきましょう!
ライブシアター仕事表を使うんだね。誰からいく?
私……行きます!
いきなりは不安だろ。私がついててやるよ。
つまり、うららちゃんがシーンプレイヤーで、玲奈ちゃんがパートナープレイヤーですね。D66をどうぞ。
はい!……3と5です。
35だね。「シアター企画!パートナープレイヤーは嫌いなものに何回挑戦できるか」だって。
やってしまった……!
え? 玲奈さんの嫌いなものって……。
その時、オフィスの方から話し声が聞こえてきた。
おーい、今度のシアター企画決まった―?
「極寒の納涼肝試し」だってよ。
何それウケるんですけどー。
もしかして……アレかな?
き、今日はメンタルの調子が悪いので早退しま――
仕事を断るとメンタルが2D6減りますよ?
行きましょう玲奈さん。私が支えますよ。
なんだか嬉しそうなうららちゃんに、無言で引きずられていく玲奈さん。彼女の嫌いなものは「幽霊」だった。
まあ、なんだ。生きろ。
あの2人、大丈夫かなあ……。
サイコロ様に尋ねてみましょう。お仕事の結果は、仕事表に書かれている方法で判定します。
今の仕事だと「パートナープレイヤーの趣味分野の特技」になってるね。玲奈さんの趣味が「スポーツ」、うららちゃんの趣味が「おしゃれ」で隣同士だ。目標値は6……結果は4。
あちゃ~……。
いえ、まだサポートできますよ。私と玲奈さんがうららちゃんにサポートすれば6になります。
葉月ちゃんは現場に出ていないけど、いいのかい、エレナ?
シーンプレイヤー、つまりうららちゃんの許可があればシーンに出ることはできますけど……。
GET /usr/urara/auth-scene?id=hazuki HTTP/1.0
200 OK
許可が出ました。行ってきます。
うそつけ! 何の通信だよ!
しばらくして、うららちゃんがシアターから出てきた。玲奈さんは葉月ちゃんに背負われている。
大丈夫だった?
はい、なんとか……玲奈さん、ステージが始まってからもう泣きそうになっちゃって、私ずっと手を握ってました。
ご、ごめん……。
少しでも玲奈さんの気が晴れればと思って、スポーツウェアのブランドのお話をしてました。
うらら、結構色々見てるんだな……。
でも私だけじゃどうにもならなかったよ。心の中で、葉月ちゃん来て―って思ったの。そうしたら本当に葉月ちゃんが来てくれた。嬉しかったなあ。
当然のことをしたまでです♪
あの通信……案外嘘じゃないのかもな。
よかったですね! うららちゃんはサイコロ4つ振ってください。ファンが増えますよ!
はい! ……わあ、18人も増えました!
よかった!
わた、わたしも、その、がんばったよね?
うん! ありがとう、玲奈さん!
でも意外だったなあ。玲奈さん、結構可愛いところあるんですね。ねえ、今度ゆるふわコーデに挑戦してみませんか?
そうか、理解度ですね! 今回は「おしゃれ」を判定に使ったので3点上がります。うららちゃんから玲奈ちゃんへの理解度が上がるのでいいですか? 逆もありえますが。
私から玲奈さんのほうにしていただけますか? 玲奈さんにはサポートしてあげられないので、せめて他のところで助けたいんです。
了解です!
うう……ありがと……。
そうか、こうやってみんな仲間になっていくんだな。少しわかった気がする。
いくらか波乱気味だったけど、leonidsの初仕事は、無事成功を収めた。
次はどんなことが待っているんだろう?
……と、いう夢を見たのさ。
え、まさか……。
いや、(筆者が)すっかり誤解してたんだけど、サポートって「一回の判定につき一度まで受けることができます」だったんだよ。
確かにそう書いてありますね。
「行うことができます」じゃなかったんだよ。つまり……。
私からうららちゃんへのサポートは無効で……。
私の獲得ファン人数18人もなしってことですか……?
ごめん! 本当にごめん! ぬか喜びしてた!(筆者が)
でも、うららの私への理解度は増えるんだろ?
理解度は成功失敗に関わらず増えますから。
それだけでもよかったです。次また頑張りましょう。
そうだね……。
とりあえず筆者はケジメですね。