とあるSAIの記録から、グラン・ブルーによる人類への反逆が明らかになってから一ヶ月。
 ニュースは常にその情報を追い続け、ついに今朝、あの日以来凍結されていたグラン・ブルーの初期化が正式決定したと報道した。

ユキ

世界中大騒ぎだねー

サッちゃん

肯定。そりゃあな。
グラン・ブルーと言やぁ世界規模の超重要プロジェクトの核だ


 それが不具合を起こして人類に攻撃した。
 そして、その事件を収束させるために蓄積データの全破棄が決定した。

 マスコミがしばらく暇をしなくて当然だ。

衣子

いやー……まさか私達がそんな大事に巻き込まれてたとは……


 もう、衣子としてはビックリとしか言い様が無い。

サッちゃん

しかも、事件を解決に導いたのがクソ原始人のSAIと来たモンだからな。
驚天動地でしかねぇよ

ユキ

でもさー、直接事件解決に繋がったのはサイ太郎くんの記録でも、それをグラン・ブルーって言うのから守ったのは衣っちゃんでしょー?

衣子

ま、まぁ、そうなるのかな?

ユキ

衣っちゃん偉ーい。凄ーい

衣子

……ユキ、不意打ちで頭を撫でるの止めて。
急激な興奮で心臓が止まるかと思った

ユキ

あれ? 衣っちゃん熱ある?

サッちゃん

報告。
ただ病的に興奮してるだけだろ


 と、衣子がユキに手に病的に癒されている時だった。

???

失礼する


 穏やかな空気に包まれていた教室の空気を、一瞬で破壊する何かが入室してきた。

???

……発見

衣子

……………………


 その何かは真っ直ぐに衣子達の元へ。
 余りの出来事に、衣子は目が点に、ユキの手は止まってしまう。

衣子

ど、どちらさま……?

???


疑問。何をふざけているのだ主。
俺だ

衣子

主って……え、まさか……

衣子

サイ太郎!?

???

肯定。まさしくその通りだ


 その言葉と共に、サイ太郎が頭部の外装を剥がす。
 すると、見慣れた顔が露出した。

ユキ

わー……何かしばらく会わない内にごっつくなったねー。ビックリしちゃったー。
噂のラ○ザップ?

サッちゃん

否定。機械がライ○ップ行ってどうこうなるわきゃねーよ……

サイ太郎

肯定。これは人間で言う鎧の様なモノだ


 あの日、サイ太郎はD・Pの一撃により大きな損傷を負い、衣子の金ダライによって仕留められた。
 と言っても、衣子が仕留めたのはあくまでサイ太郎の端末機能のみ。
 SAIチップ、つまりサイ太郎の核は無事だった。

 しかし、普通の端末に入れて衣子に所持させれば、今度はチップまで持って逝きかねない。
 なので、機体の修理が完了するまでの間、サイ太郎はしばらく衣子の元を離れ、紅塁の元へ戻されていた。

 それが今、衣子の元へ帰還した訳である。
 何故か全身に鎧を纏って。

衣子

何でまたそんな鎧を……

サイ太郎

返答。あの日、俺はもう少しで主との約束を違える所だった。
その反省から、俺の開発者に頼んで作ってもらった

サイガード

その名も
『対謎金ダライ用決戦外装・サイガード』ッ!
最新のGM工学に基づいて生み出された最強の鎧だッ!

サイガード

これにより、俺はもう何があっても壊れはしないのだ!
さぁ来るが良い金ダライ!
非科学的なお前に、科学の力を見せつけてやろう!


 噂をすれば影か、はたまたサイ太郎の挑発に乗ってか。
 金ダライがサイ太郎の頭部を襲った。

サイガード

無駄ァッ!


 直撃。
 だが、サイ太郎はノーダメージだった。
 サイ太郎は。

サイガード

ピーッ。外装機能低下確認。
装着していても機動力が低下するだけと判断。
パージします

サイガード

何ッ!?


 すっぽーん、と、サイ太郎を包んでいた外装が勢い良くパージされてしまった。

サイ太郎

………………………………

衣子

………………………………

サッちゃん

……結論。機械の力じゃ、その化物にはどう足掻いても勝てねぇってことだな

衣子

……サイ太郎。その……大丈夫?

サイ太郎

ぐ……当然!
俺は優秀なSAIだ!
鎧を失った程度で、金ダライに負けは…

サイ太郎

にゃすッ!?

衣子

サイ太郎!?

サイ太郎

ごぉう……
何か前より威力が増してないか……!?

衣子

う、うん。何か最近絶好調みたいで……

サイ太郎

ッ……上等だ! 例えどれだけ敵が強大であろうとも、俺は絶対に壊れん!
一生、主のために…

サイ太郎

づぁっしょいッ!?

ユキ

………………………………

サッちゃん

………………………………

衣子

………………………………

サイ太郎

ま、敗けん、敗けんぞ俺は……!
何故ならば!
俺は優秀なSAIだからだッ!

衣子

あー……うん。頑張ってね

サイ太郎

当ッ然!!


 衣子とサイ太郎の日常は、これからも続いていく。

 何故ならば、優秀なSAIは絶対に約束を破りはしないからだ。

彼はギリギリ約束を守り続ける

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