放課後。
電車の中で修ちゃんがニコリと微笑みながらそう言った。
これは『てめえ、ポンコツプランだったら拳骨落とすぞゴラァッ!』という脅しなのだが、私はあえて気づかないふりをする。
で、お嬢様どうなさるので?
放課後。
電車の中で修ちゃんがニコリと微笑みながらそう言った。
これは『てめえ、ポンコツプランだったら拳骨落とすぞゴラァッ!』という脅しなのだが、私はあえて気づかないふりをする。
だって修ちゃんは怒らすと怖いから……
完全にすっとぼけた私は普通に答えた。
うん。
摩郷島工業に乗り込んで白瀬乃恵瑠ふん捕まえて説教する。
沙羅ちゃんに聞きそびれたし。
男の方に聞くしかないでしょ。
ノープラン言うな。
私は頭の片隅で「怒られるかなあ」と思ってたが、意外なことに修ちゃんはため息をついただけだった。
言うと思った……あの……最近のお嬢様は妙に男前ですね
女子に男前って酷くない!
みなさーんここに酷い男がいますよー!
か弱い女の子を猛獣呼ばわりとか男前とか好き放題言ってますよー!
でも……今のお嬢様の方が私は好きですよ。
ぼそっと修ちゃんは言った。
私は突然耳が聞こえなくなるキャラじゃなくてよ!!!
ばっちり聞こえたもんねー!!!
それってライクじゃなくてラブの方?
立った?
フラグ立った?
フラグ立っちゃった!!!
なんでもないです!
え、ちょっと修ちゃん!
そこをはっきり!
ハリウッド映画のように愛してる連呼プリーズ!!!
うるせえ、忘れろ!
ちぇー。
そうこうしていると摩郷島工業のある駅に着いた。
うちの学校ではトラブルになるので近づいてはいけないと注意されている。
うむ、こういうときは……
修ちゃん。ダンプカー借りなきゃ!
なんの話だ?
本宮ひ●し先生のマンガで見たの!
腹にダイナマイト巻いてダンプで突っ込むの!
そのマンガ以外入っていない腐りまくった脳をどうにかしてくれませんか?
酷い話だ。
プロレスやアニメも入ってるぞ!
そうやって、あんまりぞんざいな扱いしてるとすねるよ。
すねちゃうよ?
……うん。
すねるより面白いこと考えついた。
せっかくだから私は実力行使に出ることにした。
もういいもん!
そうやってフラグ折りに来るならこっちも立て続けるもん!
ふふん!
こっちは一級フラグ建築士ですもんねー!
もう実力行使だ!
おしりさわさわ。
私は修ちゃんのお尻をなで回す。
汚嬢様。
死亡フラグならいつでもお立て致します。
つうか尻から手をどけろ。
なぜだー!!!
修ちゃんの鉄壁の防御の前に恋愛フラグはバキバキ折られる。
代わりに与えられるのは死亡フラグなのだ。
ひでえ。
そんなバカなやりとりをしながら歩いて行くと摩郷島工業が見えて来た。
その姿は私の予想とは違った。
有刺鉄線もなく壁も特に汚くはない。
『バ●死ね』とかも書かれていない。
って、世界最強の生物の息子の家とか刑務所とは違うのか。
ここが摩郷島工業?
そうですね。では知人に電話しますのでお待ちください
うん?
知人?
誰だろう?
私が不思議に思っていると修ちゃんは携帯電話を取り出す。
おう、俺だ。
ああ下にいる。
白瀬乃恵瑠のところへ案内してくれ。
なんだかいつもと修ちゃんの態度が違う。
まるでヤンキーのような……
はてなんだろう?
も、もしかして私に元ヤンアピールをしている!!!
こ、これは間接的なKOKUHAKU!!!(告白)
ないわー。
さすがにそれはないわー。
修ちゃんがヤンキーのはずないしー。
おう、わかった
そう言うと修ちゃんは電話を切った。
どうやら話が終わったらしい。
終わったの?
ええ。
友人が案内してくれるそうです。
そう言う修ちゃんは少し嫌そうな顔をしていた。
しばらくすると、髪の毛を真っ赤に染めた男子学生がやって来た。
声色は軽そうだが頬に傷がある大男だ。
強面だが女性には紳士的なタイプだろう。
なぜならキャバクラによく来ていた元ヤンの人と同じ目をしている。
お、修一さん久しぶりっす。
ヤンキーが『さん』づけ?
なにかおかしい。
お嬢様、こちらは剣持悠斗。
友人です。
と、とりあえず考えるのはやめよう……
よ、よろしくお願いしますわ……
ん?
え、なに?
どうしたの?
ドゥーンドゥーンドゥドゥドゥドュンドュン。
パララッパッパッパー!
(ボイスパーカッション)
ワタシ、アヤアヤ。
白瀬殴る。
ドゥーンドゥーンドゥドゥドゥドュンドュン。
パララッパッパッパー!
(ボイスパーカッション)
ふー、危ないところだった。
確かヤンキーにはヒップホップで返さないと襲いかかってくるって荒川さん(40歳、東京都足立区出身、趣味キャバクラ)が言っていた。
汚嬢様。
今すぐやめやがらねえとグーで殴ります。
……なッ?
ヤンキーってヒップホップが公用言語なんでしょ?
どこの異世界の話だ。
あははは!
修一さん。
これが中学時代に暴れた原因になった彼女さん?
相手にされなくなって寂しくて喧嘩に明け暮れとうとう伝説に……
言い終わらないうちに修ちゃんは無言で剣持さんの胸倉を掴んだ。
そのまま片手で持ち上げる。
そしてそのまま迫力のある笑顔で言った。
余計な事を言うな?
わかったな?
は、はい……すいません……
剣持さんが黙ると修ちゃんは笑顔のままで彼を下ろした。
こ、怖い!
修ちゃんは怒らせないようにしよう。
うん。
とりあえず『フラグが立ったー♪』とか余計な事を言うのはやめよう!
白瀬乃恵瑠に会わせろ
へ、へい。
こうして私たちは白瀬乃恵瑠と会うことになったのだ。
ちなみに幼なじみの男の子の以外な一面を知ってしまったタイプのドキドキ感は全くない。
むしろ命の危険を感じる系のドキドキ感で胸が高まった。