そうですか……じゃあ、大丈夫なんですね

ああ、会社もしばらく休むって……
家の中に閉じこもってるから
家なら安心だろ?

香奈恵さんは、あの死の宣告から自宅に閉じこもり、会社をやすんでいるそうだ。

先輩が毎日様子も見に行っているという

とりあえず安心か……

あれから3日、僕はパソコンや図書館でアザミの話の事を調べていた。

しかし、これといって手掛かりになるようなものが無さ過ぎる……

ふと、気になりノートパソコンに打ってみた
死出(シデ)という言葉。


検索してみると出てきたのは、



死んであの世へ行く事──

とあった。

やはり、死ぬという事か。

だが、それ以外の事でアノ女に直接繋がりそうな事件や事故は見つからない。

アザミという名前だって、本名かハンドルネームなのかすらわからない。

やはり……手掛かりなしか

遅くなってスミマセン!
宮田さん

いや、大丈夫だよ

今日はサキちゃんと互いに調べた事を話そうとこの前の喫茶店で約束をしていた。

といっても僕にはほとんど収穫は無かったのだが……。

何か、わかりましたか?

いや、やっぱり
あれだけの情報じゃなかなか……

そうですか……

サキちゃんの方は?

はい……。

塾の友達に話をまた聞いたんですけど……
例の不審な女の事は特にもう無いみたいで……

そう……

でも、友達が別の話をしてくれて……

別の話?

はい……その、白丘高校に昔から伝わる
噂話なんですけど……

噂……

昔、一人の女子生徒が
態度が気に入らないと担任の先生から差別を受けていて……

それで、ある日、その生徒が授業中にその先生に言ったそうなんです……

オマエに呪いをかけた、1週間以内にオマエは死ぬだろうって……

呪い?

それで……

その事に興味を持ったクラスメイトが、呪いの事を彼女に聞いたんだそうです。


呪いは本当なのか?

だとしたら、どうやって呪ったのか?

何か呪術的な方法なのか……?



多分、興味を持ったのは彼女自身がもし、本当にそんなものが存在するなら自分も使ってみたいという気持ちと好奇心だったのだと思います。

ねぇ、アナタが先生に
呪いをかけたって本当なの?

     
     ……ええ、本当よ

どうやって?


  あなた、夢は見る?

夢って、寝る時に見る?

そう。

毎日、眠る前に殺したいヤツの顔と名前、死のイメージをするの……

それが夢に現れるまで、克明に、ハッキリとまるで本物の血の臭いがしてきそうなほどにね……

そいつが死ぬ夢を見たら


呪いはもう達成されたようなものよ……

……つまり、死ぬって……事……?


そう……シンプルでしょ?

夢の呪い…………

サキちゃんは深く頷く。

それで、本当にその先生
6日後に交通事故で亡くなったそうなんです……

その呪いを掛けた生徒がアザミだという可能性は、少なく無いかもしれない。

担任の死という点でも繋がってくる。

夢、死、1週間というワードだけを取り出せば、アザミの話に近いものもある。

だが、呪いとなると別な気もする。

アザミはあくまで予知夢なんだと言っていた。

第一呪いなら、死んだキヨ君、死を予言された香奈恵さんがそこまで恨まれる事を初対面のアザミにしたとは思えない。

あの、それで……


その話……『アザミの呪い』っていうんですよ

アザミの呪い……?

どうしてこの話を、友達がしてくれたかというと……
私が例の女の話と一緒に、アザミっていう人を知らないかって、念のために聞いたからなんです……

その呪いをかけたっていう
生徒の名前がアザミさんって事?

いえ、それが……その生徒の名前は昔の事でわからないそうなんですが……

何故かこの話アザミの呪いって言われて伝わっているとかで……

アザミ…………

その時──

僕のスマホに着信が入った。

先輩からだ……

ちょっと、ここで待ってて……

はい……

僕は急いで店から出ると、

応答の文字に触れた。

はい、もしもし……

おっ、おい!! 宮田!!

先輩の声は尋常じゃないほど震えていた。

先輩?

どうしたんですか!?

死んだ……死んだよ……

えっ?


背筋に嫌な汗が流れ落ちていく。

死んだんだよおぉぉぉぉっ!!


まさか、そんな香奈恵さんが──

香奈恵さんですか!?

あっ、あ、アザミが……死んだ

えっ!?

目の前で……死んだんだ……


血、血、血がぁぁ、肉も……飛び散った……



潰れて……おぇぇっ……

先輩!?

ツー…………ツー……


電話はそこで切れた。

宮田 アキラの章④ ウワサ

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