※ この物語はフィクションです。
……フィクションに決まってるだろ?
※ この物語はフィクションです。
……フィクションに決まってるだろ?
1996年
某県庁所在地
回転寿司屋
遅い……
いつになったら現れるんだ?
その『身代わり屋』って奴は?
彼の名は御門剛一(みかどごういち)四十五歳。この県の大企業『ミカドグループ』の総帥である彼は今、ある目的のために自分の身代わりを求めていた。
こんな所で待ち合わせと言うのも何を考えてるのかわからんし、
本当にまるでコピーしたかのような身代わりができる人間がこの世にいるのか?
よっ、待たせたなオッサン♪
だっ! 誰だね君は?
しっ! …声がでかいって。
誰って? ……ヤマモトさんから紹介受けた『身代わり屋』だよ?
※ ヤマモト……『身代わり屋』を彼に勧めてきた『コンサルタント』を名乗る男。
『身代わり屋』? …どう見てもそこら辺にたむろしてる若いもん…
…に、見えるかね? 御門剛一さん?
……えっ!?
……と、まぁこんな風にまるっと変わるんだが。
どうだい?
……な、なんだ今のは?
まぁ話は後でするとして……
寿司食っていいよな?
あ、ああ、かまわんが……
いやぁありがたい♪
ここんとこ依頼(しごと)がなかったもんでほとんど何も食ってなかったんだ♪
いっただっきま~っす♪
パクパクガツガツムシャムシャ……
あ、あの……
モグモグガツガツムシャムシャ……
てんこもりっ♪
ぶふ~……
あ~食った食った♪
ごちそうさん♪
それじゃオレはこれで…
帰るな!
あ…っとそうだったそうだった。
仕事の話をしに来たんだった。
なんだコイツは?
で、いつ、どこで、オッサンの身代わりをすればいいんだ?
理由は訊かないのか?
訊いたところでホントの事かどうか判るわけも無し、報酬さえ前払いでキチンと払ってもらえりゃ、オッサンの身代わり、きっちり務めさせてもらうぜ。
…明後日の午後7時、グランドホテルで行われる名士を集めたパーティーに、私の代わりに出席してほしい。
報酬は……
百万円
なにっ!
百万円。
びた一文まけない。
前金で。
代わりにオッサンの事情も企んでることも訊かない。
ただ、パーティ会場にオッサンとして出向いて、オッサンとして帰る。
そしてバイバイだ。
それで報酬百万円。
どうだい?
あ、もちろん、オッサンの交友関係などのデータは頭に叩き込まなきゃならんので、明後日までどっか缶詰になれる場所は提供してくれよな。
…わかった。
郊外に私が隠れ家として使っているマンションがある。
鍵を渡しておくので使えばいい。
やったね♪
これで明後日までの住処も確保できたよ♪
…汚すなよ。
わかってますって♪
当日
首尾はどうだね?
見ての通りだよ♪
! …完璧だ!
外に車を待たせてある。
運転手の前田には忘れ物をしたと言ってここに来たんだ。
ここから君が会場へ向かってくれ。
りょうか~い♪
んじゃ、また後で~♪
そこはかとなく不安だ。
行ったか……
では……
始めよう!
海岸通り
廃業したレストハウス
『ヘブン』
……誰だよまったく
こんな人気の無い所に呼び出しやがって……
『お前の秘密を知っている。バラされたくなければ午後7時に『ヘブン』まで来い』
ここ(ヘブン)の事を知ってるって事は
あの件についても知っているって事で……
来なければならんのは確かなんだがな。
ん?
ぐわっ!?
あ…あ……あ……
久しぶりだな……五味。
お…お前……は……だ…れ……だ?
…美沙の父親だ。と、言えば判るな?
美沙っ!?
は…ははは……そうか…アイツの……おや……じか……
なら……こうなっても……仕方が…な……
がくっ!
…美沙……お前の仇は討ったぞ。
同時刻
グランドホテル
パーティ会場
では、苑場舷梯先生の今後のご活躍を祈念して、
カンパーイ!
「モブ」って……ないわ~。
無名の芸術家のパーティにしては割と盛況だな?
まぁ表向きはそうでも、実際はソレに名を借りた顔つなぎだしな。
県下のセレブさん達の事業展開がかち合わないように調整する、ぶっちゃけ大掛かりな談合会場だよ。
中でもミカドグループ総帥、御門剛一氏。パーティ嫌いで知られる彼が何故か今回に限って出席するって一番に表明したもんだから…
なんとか名刺だけでも受け取ってもらおうと県財界のお歴々がどどんっと参加したって話だ。
なるほど……ってお前もそうだろ?
あはははは…実はその通りだ。
……困った。
せっかくテーブルに旨そうな料理が乗っかってるのに……
御門剛一が嬉々としてソレをかっこんでる。ってのはどう考えてもおかしい。
逢う人がどういう人物かは判っているから対応できるんだが……
まったく無関係な連中まで名刺を押し付けてくる。
どうしたもんかな?
どうかされましたか?
御門様?
何かお困りの事でも?
い、いやいやなんでもありませんよ。
お気になさらずに……
その頃……
海岸通り→市街地の道
…美沙……お前はどう思うかわからんが……
お前の仇は討ったぞ。
あんなクズ男に誘拐され殺されたと言うのに
なぜたったの九年で出てこられる?
絶対許すわけにはいかんのだ! 父として!
!!
!!
オッサン!?
まさか……死んじまうなんて……
しょうがねぇ……
キリのいい所までこのまま身代わり務めてやるよ。
2016年
ミカドグループ総会
ミカドグループ構成員諸君!
私(わたくし)、御門剛一は本日を持ちまして、ミカドグループ総帥を引退いたします!
総帥!?
総帥!!
既に私の後継者は立派に業務を引き継いでおり、これ以上私がこのグループを率いる必要を見出せません。
むしろ、残って関与することこそ、老害となりかねない!
諸君! これからは君たちの時代だ!
君たちのこれからに
栄光あれ!
さらばだ!
……なんてな♪
……結局、二十年も身代わりやっちまったよ、オッサン。
百万円で二十年の身代わり、安い買い物だったんじゃないか?
そもそも、クリーチャーが二十年も総帥やるなんて間違ってる
まぁ、寿命の無い俺みたいなイキモノだから、この二十年間、十分退屈しのぎにはなったよ。
さて……これからは何をして生きよう(遊ぼう)かな?
……こうして、シェイプシフターは二十年の時を挟んで企業グループと言う軛(くびき)からこの世に解き放たれた。
彼が次に何をするのか?
それは、誰も知らない。
あとがき
「シェイプシフター 二十年の軛(くびき)」を最後までお読みいただきありがとうございました。
この物語は最初「小説家になろう」に書こうとしてプロットを作ったものの上手く表現できず、そのまま塩漬けになってたものをストリエ仕様にリライトしたものです。
文章の細かい表現を画像によって補完できるストリエはこういう話を書くときかなり楽です。
なにせ、変身シーンが…
変身っ!
ふはははははは……
…で、済むんですから(笑)
次の話ですが、未定です。
気が向いたら、つかネタが浮かんだら書きますので、
期待しないでお待ちください。
社怪人
変身するのに効果音はいらんぞ。
「変身」のセリフもな。