ナミダと彼女
ナミダと彼女
―――。
お~い!
ん?
檜山君!どうも~
やぁ
どうも!どうも~!
二人は知り合いだったんだ
中学の後輩でね!
中学のセンパイでね!
あっはは、そうか
今日は二人で買い物かい?
そんな感じだよっ
檜山君は?
俺は、
休日のショッピングモールに一人で……
なんて、答えようか
わかりましたよ!!
ナンパ!ですね!
……違うかな
ちょっと、ブラブラしたくて
って感じだね
センパイ、アレは嘘ですねっ
絶対、ナンパですよ
ナンパなんてしなくても
モテそうだけどねー
あっはは……
全部聞こえてるんだけど
ま、私には
隼人センパイ☆がいますからっ
ナンパしても無駄ですよー?
いや
話しかけてきたのはそっちだからね
私はフリーですよ?
そうなんだ
って!ツッコミいれてよー!
ボケなの?今の
ボケだよぉ!大ボケ!
あぁ!!
隼人センパイ☆と偶然会ったりしないかなぁ!
悪いけど、そうはさせないよ
あるかもよ!
噂をすれば影が立つーっていうでしょ♪
影がさす、ね
もう、細かいことは気にしないのー!
あははは……
喫茶店
小洒落た店だな
落ち着いていて
とっても過ごしやすい
コーヒーも美味しくて
静かなところが好きなのか?
そう
そうか
……
……
いや、何か話せよ
……何を話したら良いのやら
なるほど
自分から話しするのは苦手なわけか
……苦手
まぁ、気にすんな
うるせーやつよりはマシだ
うん
あぁ……
全力疾走なんて何年ぶりだよ……ったく
あぁ、そういえば
葵ちゃん作戦の時も走ったっけ
で、何のよう?
いや、これといって用は
じゃぁ!
なんで追っかけて来たのよ!
お前が逃げるからだろ……
はぁ……
走り疲れたし、そこの喫茶店でも入ろうぜ
奢るからさ
お断りします
……頼むから座ろうぜ
オリエンテーション、同じ班だったじゃないかちょっと話そうよ
覚えてません
あぁあ、そうかよ
藤宮以外は眼中にないか
そりゃそうか
コイツからしたら俺なんて
生徒Aくらいの認識だもんな……
喫茶店
とりあえず
なんとか連れてきたけど……どうするか
あぁあ、何してんだろ
俺もだよ、全く
まぁ、とにかく
今はここで時間を潰して
レイちゃん達と会わせないようにしなくては
この間のオリエンテーション
楽しかったなぁ
べつにー
そうか?
俺は楽しかったけどなぁ
あっそう?
この野郎
何歳歳上だと思ってんだ
あ、今日は何しにここへ?
……関係ないでしょ
言えるわけないでしょ……
コイツ……
そうかー
藤宮以外とは話もしたくないかー
ちょっ!!どういう意味よソレ!
いや、べつに
はぁあ!?
私と隼人はただの
幼馴染ってだけで!
ほぉ
ムカー!!
何!?
こんなところにわざわざ連れてきて
からかいにきたんですか?
そういうわけじゃねーけど
つか、俺は普通に話したかっただけだよ
お前と
……
アイツ……何してんだ
……喧嘩?
いや、戯れてるだけだろ
気にすんな
……
騒がしかったら俺が一喝
だ、大丈夫
そうか?
そろそろ、昼飯でも食う?
うん♪そうだね
あ、私!
いいお店知ってるんだー!
お、そいつは期待せざるを得ないな!
ここのお店のランチが
とっても美味しいんだよー!
へー、そうなんだ
あっ
ちょっ
おい……この状況
ん?
あ……
……春奈?
……隼人がレイとデート?嘘!?
しまった……ここで、出くわすとは
な、なんとかしなくちゃ……
あら、偶然!
二人きりになんてさせないわよっ
なーっ!!!まずい!
このままじゃ、アニメ通りになってしまう!!
なんだ春奈、デートか?
それも、同じクラスのやつと
……え?
知らなかったぜ
お前ら、リア充しやがって~
……ちが
わりーな
邪魔したな
行こう、レイ
え、ちょっと
隼人……
……
何よ……
そんなワケないのに……
……全然、私の気持ちなんて
な、なんか悪かったな
うるさいわね……
テーブルの上で放置されたままのホットコーヒーはすでに冷えきっていた。
彼女は俯いたまま、――ただ、じっと、両膝に載せた手を睨んだ。
……泣いてるのか?
うるさい!!!
っ!!
拳をテーブルに叩きつけ、顔を上げた彼女の目には大粒の涙が溜まっていた。
全部、アナタせいよ……
――――こんなはずじゃなかったのに
アナタのせいで……
嗚咽を交じらせながら、彼女は言葉を繰り返し続けた。
こんなはずじゃなかったのに―――
―――――――こんなはずじゃなかったのに
つづく