ナミダと彼女

檜山千秋

―――。

宇佐あけみ

お~い!

檜山千秋

ん?

宇佐あけみ

檜山君!どうも~

檜山千秋

やぁ

栗原あや

どうも!どうも~!

檜山千秋

二人は知り合いだったんだ

宇佐あけみ

中学の後輩でね!

栗原あや

中学のセンパイでね!

檜山千秋

あっはは、そうか

檜山千秋

今日は二人で買い物かい?

宇佐あけみ

そんな感じだよっ
檜山君は?

檜山千秋

俺は、

檜山千秋

休日のショッピングモールに一人で……
なんて、答えようか

栗原あや

わかりましたよ!!
ナンパ!ですね!

檜山千秋

……違うかな

檜山千秋

ちょっと、ブラブラしたくて
って感じだね

栗原あや

センパイ、アレは嘘ですねっ
絶対、ナンパですよ

宇佐あけみ

ナンパなんてしなくても
モテそうだけどねー

檜山千秋

あっはは……

檜山千秋

全部聞こえてるんだけど

栗原あや

ま、私には
隼人センパイ☆がいますからっ
ナンパしても無駄ですよー?

檜山千秋

いや
話しかけてきたのはそっちだからね

宇佐あけみ

私はフリーですよ?

檜山千秋

そうなんだ

宇佐あけみ

って!ツッコミいれてよー!

檜山千秋

ボケなの?今の

宇佐あけみ

ボケだよぉ!大ボケ!

栗原あや

あぁ!!
隼人センパイ☆と偶然会ったりしないかなぁ!

檜山千秋

悪いけど、そうはさせないよ

宇佐あけみ

あるかもよ!
噂をすれば影が立つーっていうでしょ♪

檜山千秋

影がさす、ね

宇佐あけみ

もう、細かいことは気にしないのー!

檜山千秋

あははは……

喫茶店

柴野一樹

小洒落た店だな

朝倉葵

落ち着いていて
とっても過ごしやすい

朝倉葵

コーヒーも美味しくて

柴野一樹

静かなところが好きなのか?

朝倉葵

そう

柴野一樹

そうか

朝倉葵

……

柴野一樹

……

柴野一樹

いや、何か話せよ

朝倉葵

……何を話したら良いのやら

柴野一樹

なるほど
自分から話しするのは苦手なわけか

朝倉葵

……苦手

柴野一樹

まぁ、気にすんな
うるせーやつよりはマシだ

朝倉葵

うん

石塚賢治

あぁ……
全力疾走なんて何年ぶりだよ……ったく

石塚賢治

あぁ、そういえば
葵ちゃん作戦の時も走ったっけ

瀬川春奈

で、何のよう?

石塚賢治

いや、これといって用は

瀬川春奈

じゃぁ!
なんで追っかけて来たのよ!

石塚賢治

お前が逃げるからだろ……

瀬川春奈

はぁ……

石塚賢治

走り疲れたし、そこの喫茶店でも入ろうぜ

石塚賢治

奢るからさ

瀬川春奈

お断りします

石塚賢治

……頼むから座ろうぜ

石塚賢治

オリエンテーション、同じ班だったじゃないかちょっと話そうよ

瀬川春奈

覚えてません

石塚賢治

あぁあ、そうかよ

石塚賢治

藤宮以外は眼中にないか

石塚賢治

そりゃそうか
コイツからしたら俺なんて
生徒Aくらいの認識だもんな……

喫茶店

石塚賢治

とりあえず
なんとか連れてきたけど……どうするか

瀬川春奈

あぁあ、何してんだろ

石塚賢治

俺もだよ、全く

石塚賢治

まぁ、とにかく
今はここで時間を潰して
レイちゃん達と会わせないようにしなくては

石塚賢治

この間のオリエンテーション
楽しかったなぁ

瀬川春奈

べつにー

石塚賢治

そうか?
俺は楽しかったけどなぁ

瀬川春奈

あっそう?

石塚賢治

この野郎
何歳歳上だと思ってんだ

石塚賢治

あ、今日は何しにここへ?

瀬川春奈

……関係ないでしょ

瀬川春奈

言えるわけないでしょ……

石塚賢治

コイツ……

石塚賢治

そうかー
藤宮以外とは話もしたくないかー

瀬川春奈

ちょっ!!どういう意味よソレ!

石塚賢治

いや、べつに

瀬川春奈

はぁあ!?
私と隼人はただの
幼馴染ってだけで!

石塚賢治

ほぉ

瀬川春奈

ムカー!!

瀬川春奈

何!?
こんなところにわざわざ連れてきて
からかいにきたんですか?

石塚賢治

そういうわけじゃねーけど

石塚賢治

つか、俺は普通に話したかっただけだよ
お前と

瀬川春奈

……

柴野一樹

アイツ……何してんだ

朝倉葵

……喧嘩?

柴野一樹

いや、戯れてるだけだろ
気にすんな

朝倉葵

……

柴野一樹

騒がしかったら俺が一喝

朝倉葵

だ、大丈夫

柴野一樹

そうか?

藤宮隼人

そろそろ、昼飯でも食う?

結城レイ

うん♪そうだね

結城レイ

あ、私!
いいお店知ってるんだー!

藤宮隼人

お、そいつは期待せざるを得ないな!

結城レイ

ここのお店のランチが
とっても美味しいんだよー!

藤宮隼人

へー、そうなんだ

瀬川春奈

あっ

石塚賢治

ちょっ

柴野一樹

おい……この状況

藤宮隼人

ん?

結城レイ

あ……

藤宮隼人

……春奈?

瀬川春奈

……隼人がレイとデート?嘘!?

石塚賢治

しまった……ここで、出くわすとは

瀬川春奈

な、なんとかしなくちゃ……

瀬川春奈

あら、偶然!

瀬川春奈

二人きりになんてさせないわよっ

石塚賢治

なーっ!!!まずい!
このままじゃ、アニメ通りになってしまう!!

藤宮隼人

なんだ春奈、デートか?

藤宮隼人

それも、同じクラスのやつと

瀬川春奈

……え?

藤宮隼人

知らなかったぜ
お前ら、リア充しやがって~

瀬川春奈

……ちが

藤宮隼人

わりーな
邪魔したな

藤宮隼人

行こう、レイ

結城レイ

え、ちょっと

瀬川春奈

隼人……

瀬川春奈

……

瀬川春奈

何よ……
そんなワケないのに……

瀬川春奈

……全然、私の気持ちなんて

石塚賢治

な、なんか悪かったな

瀬川春奈

うるさいわね……

テーブルの上で放置されたままのホットコーヒーはすでに冷えきっていた。




彼女は俯いたまま、――ただ、じっと、両膝に載せた手を睨んだ。

石塚賢治

……泣いてるのか?

瀬川春奈

うるさい!!!

石塚賢治

っ!!

拳をテーブルに叩きつけ、顔を上げた彼女の目には大粒の涙が溜まっていた。






全部、アナタせいよ……





――――こんなはずじゃなかったのに
















アナタのせいで……






嗚咽を交じらせながら、彼女は言葉を繰り返し続けた。










こんなはずじゃなかったのに―――







































































―――――――こんなはずじゃなかったのに

つづく

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