現れた彼女に、フィリアが嫌そうな顔をして、
現れた彼女に、フィリアが嫌そうな顔をして、
マリー、貴方が来たの?
そう、目の前の可愛らしい少女に告げた。
どうやらフィリアの知り合いであるらしい。
だが彼女は笑っているがフィリアは苦虫を潰したような顔をしている。
と、マリーと呼ばれた彼女が、
うん、私が連れてくるようにって。
お友達だし
確かにお友達だけれど、お友達だったら見逃してくれてもいいのでは?
お友達だから、怪我をせずにお互いに穏便に事を進められるのではという配慮です
ふーん、そっちの思惑はどうでもいいわ。
それで他に言いたいことがある?
フィリアの言葉にマリーがにこりと微笑み、
実は、フィリアちゃんには今まで黙っていた事があるの
へー、だったら今すぐその秘密とやらを話してもらおうじゃない
一緒に来てくれたらお話するわ
マリーがニコッと笑って誤魔化している。
そんなマリーにフィリアは、
お断りよ。残念だけれど貴方についていくつもりはない
でも私に手を出すと、敵対しているとみなされるのだけれどいいのかしら
マリーが微笑みながらそんなことを告げてくる。
何だか見た目が可愛いのに怖いよこの子と俺が思っているとそこでフィリアが、
でも貴方が先に手を出してきたなら話は別よね
あら、何かしら
私は貴方を怒らせる方法を知っているわ
フィリアはそう言いながら俺に目配せしてくる。
それにレイトも気付いて、そこでコウモリに変身した。
……
吸血鬼特有の技だが、見た目が可愛くないとの理由であまりレイトはなりたがらない。
ちなみに、コウモリになると、服と鞄は何処かに収納される。
未だに何処に収納されているのか魔法学的によく分かっていないらしい。
さて、そんな話はおいておいて俺がフィリアに近づくと、即座にフィリアは逃げないよう俺の襟首を掴んだ。
もう少し違う扱いをお願いしたかった俺ですが、それを言う前にフィリアがマリーに、とてつもない黒い笑みを浮かべながら一言。
貧乳!
誰が、とは言わなかった。
コウモリになったレイトが何故かフィリアではなく俺の方にとまっていたのは、女同士のある種の戦いに恐れをなしたからなのかもしれない。と、
だーれーがー、貧乳ですってぇええええええ。
ちょっとばかり胸が大きいくらいで私に勝ったつもりぃいいいいい
底冷えするような声でマリーが叫ぶ。
同時に黒い彼女の影がこちらに襲ってくるけれど、
えっと、とりあえずそのへんで停止で
レイトがそう呟くと影が止まる。
マリーがしまったという顔になる。
そうか、ここは吸血鬼の……影の操作は出来る者達だったわね。
でも、だったらこれで……
残念、次の攻撃は受けるつもりはないわ。
だって、私は逃げるもの
フィリアがそう告げて、同時に俺は再び空に舞っていたのだった。
襟首を掴まれたままの俺は、なんとかフィリアの箒に乗り上げて、
そろそろ襟首を掴むのはやめていただけないでしょうか
その方がてっとり早く運べるのよね
といった会話で俺はこれからも襟首が掴まれるであろう未来が判明してしまった。
それに心の中で俺は涙したのだけれど、そこで、俺の肩に乗っていた蝙蝠なレイトが、
それで何処に行くんですか?
そうね、とりあえずは東の方に行ってみようかと思っているわ
どうしてですか?
私の実家の方と逆方向だからよ
でも追われている“神殿”ってあっちの方にありませんでしたっけ
俺の言葉にフィリアが楽しそうに、
あるわよ。
それがどうかしたの?
自分から危険な所に飛び込んでいくのですか?
近くにいたほうが気づきにくいかなと
確かに自分達の方向に逃げるとは思わなそうではある。
とはいえ、だからといって絶対そうだとは言い切れない。
とりあえずは俺は本来の目的を達成すべく、
その、フィリア
何かしら
女の子が一杯いそうな場所に行きたいです
……
恋人がいないと女体化の道をたどるので
フィリアは沈黙した。
なぜだと思っているトレイトが深々と嘆息し、
もういい、ユニは黙れ。
それでこれからですが、フィリアがどうして追われているのかを少し教えてもらえませんか?
だから能力がありすぎたの!
それは聞きました。
ただ最近、“神殿”が焦ったように何かを探しているようなんですよね
あら、そうなの?
ええ。
時空操作系の力も必要とかなんとか言っていましたが
詳しいわね
それは、父がそちらの人間でして。
特殊な能力があるんですよ
どんな能力?
探査系ですね……あ
そこでレイトがしまったというかのように呟いた。
そして俺はというと、そのレイトの父にもあったことがあるし、その力を知っている。つまり、
さっき俺達が飲んだ紅茶のカップを元に、追跡されるかも
何よ、そんな便利な能力持ちだったの?
この下僕その2のお父さまは
レイトが沈黙した。
そしてフィリアといえば更に楽しそうに笑う。
これで決まりね
何がですか?
これから“神殿”に潜り込んでそのコソコソ何かをしている弱みでも、握ってしまいましょう。
そうすれば私の勝ちだわ
そう、フィリアがとんでもないことを言い出したのだった。