現れた彼女に、フィリアが嫌そうな顔をして、

フィリア

マリー、貴方が来たの?


そう、目の前の可愛らしい少女に告げた。

どうやらフィリアの知り合いであるらしい。

だが彼女は笑っているがフィリアは苦虫を潰したような顔をしている。

と、マリーと呼ばれた彼女が、

マリー

うん、私が連れてくるようにって。
お友達だし

フィリア

確かにお友達だけれど、お友達だったら見逃してくれてもいいのでは?

マリー

お友達だから、怪我をせずにお互いに穏便に事を進められるのではという配慮です

フィリア

ふーん、そっちの思惑はどうでもいいわ。
それで他に言いたいことがある?


フィリアの言葉にマリーがにこりと微笑み、

マリー

実は、フィリアちゃんには今まで黙っていた事があるの

フィリア

へー、だったら今すぐその秘密とやらを話してもらおうじゃない

マリー

一緒に来てくれたらお話するわ


マリーがニコッと笑って誤魔化している。

そんなマリーにフィリアは、

フィリア

お断りよ。残念だけれど貴方についていくつもりはない

マリー

でも私に手を出すと、敵対しているとみなされるのだけれどいいのかしら


マリーが微笑みながらそんなことを告げてくる。

何だか見た目が可愛いのに怖いよこの子と俺が思っているとそこでフィリアが、

フィリア

でも貴方が先に手を出してきたなら話は別よね

マリー

あら、何かしら

フィリア

私は貴方を怒らせる方法を知っているわ

フィリアはそう言いながら俺に目配せしてくる。

それにレイトも気付いて、そこでコウモリに変身した。

レイト(蝙蝠ver

……


吸血鬼特有の技だが、見た目が可愛くないとの理由であまりレイトはなりたがらない。

ちなみに、コウモリになると、服と鞄は何処かに収納される。

未だに何処に収納されているのか魔法学的によく分かっていないらしい。

さて、そんな話はおいておいて俺がフィリアに近づくと、即座にフィリアは逃げないよう俺の襟首を掴んだ。

もう少し違う扱いをお願いしたかった俺ですが、それを言う前にフィリアがマリーに、とてつもない黒い笑みを浮かべながら一言。

フィリア

貧乳!

誰が、とは言わなかった。

コウモリになったレイトが何故かフィリアではなく俺の方にとまっていたのは、女同士のある種の戦いに恐れをなしたからなのかもしれない。と、

マリー

だーれーがー、貧乳ですってぇええええええ。

マリー

ちょっとばかり胸が大きいくらいで私に勝ったつもりぃいいいいい


底冷えするような声でマリーが叫ぶ。

同時に黒い彼女の影がこちらに襲ってくるけれど、

レイト(蝙蝠ver

えっと、とりあえずそのへんで停止で


レイトがそう呟くと影が止まる。

マリーがしまったという顔になる。

マリー

そうか、ここは吸血鬼の……影の操作は出来る者達だったわね。
でも、だったらこれで……

フィリア

残念、次の攻撃は受けるつもりはないわ。
だって、私は逃げるもの


フィリアがそう告げて、同時に俺は再び空に舞っていたのだった。


襟首を掴まれたままの俺は、なんとかフィリアの箒に乗り上げて、

ユニ

そろそろ襟首を掴むのはやめていただけないでしょうか

フィリア

その方がてっとり早く運べるのよね

といった会話で俺はこれからも襟首が掴まれるであろう未来が判明してしまった。

それに心の中で俺は涙したのだけれど、そこで、俺の肩に乗っていた蝙蝠なレイトが、

レイト(蝙蝠ver

それで何処に行くんですか?

フィリア

そうね、とりあえずは東の方に行ってみようかと思っているわ

レイト(蝙蝠ver

どうしてですか?

フィリア

私の実家の方と逆方向だからよ

レイト(蝙蝠ver

でも追われている“神殿”ってあっちの方にありませんでしたっけ


俺の言葉にフィリアが楽しそうに、

フィリア

あるわよ。
それがどうかしたの?

レイト(蝙蝠ver

自分から危険な所に飛び込んでいくのですか?

フィリア

近くにいたほうが気づきにくいかなと


確かに自分達の方向に逃げるとは思わなそうではある。

とはいえ、だからといって絶対そうだとは言い切れない。

とりあえずは俺は本来の目的を達成すべく、

ユニ

その、フィリア

フィリア

何かしら

ユニ

女の子が一杯いそうな場所に行きたいです

フィリア

……

ユニ

恋人がいないと女体化の道をたどるので


フィリアは沈黙した。

なぜだと思っているトレイトが深々と嘆息し、

レイト(蝙蝠ver

もういい、ユニは黙れ。
それでこれからですが、フィリアがどうして追われているのかを少し教えてもらえませんか?

フィリア

だから能力がありすぎたの!

レイト(蝙蝠ver

それは聞きました。
ただ最近、“神殿”が焦ったように何かを探しているようなんですよね

フィリア

あら、そうなの?

レイト(蝙蝠ver

ええ。
時空操作系の力も必要とかなんとか言っていましたが

フィリア

詳しいわね

レイト(蝙蝠ver

それは、父がそちらの人間でして。
特殊な能力があるんですよ

フィリア

どんな能力?

レイト(蝙蝠ver

探査系ですね……あ


そこでレイトがしまったというかのように呟いた。

そして俺はというと、そのレイトの父にもあったことがあるし、その力を知っている。つまり、

ユニ

さっき俺達が飲んだ紅茶のカップを元に、追跡されるかも

フィリア

何よ、そんな便利な能力持ちだったの?
この下僕その2のお父さまは


レイトが沈黙した。
 
そしてフィリアといえば更に楽しそうに笑う。

フィリア

これで決まりね

ユニ

何がですか?

フィリア

これから“神殿”に潜り込んでそのコソコソ何かをしている弱みでも、握ってしまいましょう。
そうすれば私の勝ちだわ


そう、フィリアがとんでもないことを言い出したのだった。

10、お友達の“弱点”をついてみました

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