友だちって、
そういうものじゃないよ

経次郎

ゲームだと戦国時代の方が多いよ。

静香

ゲーム?

聡士

どうせ信長とかだろ。

経次郎

多いね。
信長系。

聡士

うん……。

経次郎

信長、わりと好きだけど。

聡士

元親は四国にいたんだ……、

経次郎

四国はけっこう馴染みがあるよ。
伊予のとこもらってたし。

伊予は現在の愛媛県。
義経は予州とも呼ばれていて、予州は伊予の別名だった。

鎌倉幕府の公式文書、吾妻鏡では静御前が義経のことを「予州殿」と呼んでいてびっくりした。

静香

そんな呼び方してたっけ?

あんたねえ……。

ばっかじゃない?

このくそったれが~!!!

静香

あれ?
名前を呼んだ覚えがない?

聡士

そうなの?

あ……、また違うことを考えていたわ。
そもそも、なんで四国の話になったの?

経次郎

行ってみたいんだけど、あの辺り、合戦でも行ってたから、けっこうきつそうだなって思ってるんだ。

聡士

きつい?

経次郎

祟られそう?

真顔で言う……?

聡士

ボクもそうかも……。

経次郎

地主なら平気じゃね?

大名のこと、地主って言うな……。

聡士

そうでもないよ。
戦で四国統一したから。

経次郎

男の子なら
それくらいのことしないと。

戦国大名を、近所の子供みたいに言うんじゃないわよ。

聡士

伊予は手こずったよ。

経次郎

やっぱりね。
うんうん。

なぜ、喜ぶ?

聡士

キミの子孫じゃないだろ?

経次郎

違うけどなんか嬉しい。

聡士

取ったけどね。

経次郎

違うけどなんか悔しい。

静香

ばっかみたい。

考えることが小学生レベルじゃない……?

聡士

でも、信長は元親に
「家臣になって土地よこせ」
みたいなことを言ってきたんだ。

……信長からつながってたのね?

経次郎

やらないよね。そんなの。

聡士

断ったら、信長は四国に攻め込む準備をはじめたんだ。

経次郎

安土城おとしてやれ。

歴史が変わるでしょ……。

聡士

そしたら本能寺の変。

信長が家臣の明智光秀に討たれたってヤツね。
最近、流行ってる。

経次郎

あ、そうなん?
命拾いしたんだ。

聡士

ボクは光秀が好きだよ。
力になってくれてたし。

経次郎

三日天下の人だよね?

聡士

そう。秀吉に討たれたんだ。

聡士

その後、秀吉はウチに攻め込んできて、土佐以外の土地取られた。

経次郎

……災難だったね。

聡士

戦国時代なんて、そんなもんだよ……。

経次郎

でも、秀吉か……。
ボクも嫌いなんだよね。

聡士

なんで?

直接被害に遭ってる元親が言うならわかるけど、あんたは時代が違うじゃない。

経次郎

鎌倉に来たらしいんだけど、
兄上の像の前で、

くそったれな頼朝のことね……。

経次郎

「微賤の身から天下統一を成し遂げたのはそなたとこの秀吉だけじゃ。」

経次郎

って言ったんだって……。

あ、目がマジになってる……。

経次郎

微賤って何だよ、微賤って。

微妙な言葉ね。
ちょっとだけ賤しいってこと?

経次郎

父上は河内源氏の頭領だし、兄上のお母さんは熱田神宮の宮司の娘で高い身分なんだぞ。

腹違いだから、母親は違う。
義経の母親は美人で有名な常葉御前。

経次郎

それをいっしょくたにした挙句、

どっちも大差ないんじゃない?

経次郎

「そなたは王族の流れを汲み、祖先の頼義や義家公が東国の武士を従えた縁で、流人でありながら多くの武士たちが挙兵時から後押ししてくれた。それに比べて私は、系図も何もないところから身を起こして天下をわがものにした。」

静香

全部覚えてるの?

ホント、執念深いわよね……。

経次郎

だから「自分の方が偉い」って言ったんだぞ。

経次郎

兄上のことを、お気楽ご気楽二世扱いしてるんだぞ!!

静香

目、怖え……。

そこまで言ってないんじゃない?

聡士

落ちつけって。

経次郎

ごめん……。
兄上のことになると
頭に血が……。

うんうん、
昔からそうだった。

でも……、

静香

未だにブラコンなわけ?

自分のこと討った憎き敵なんじゃないの?

静香

私は赦せない
けどね。

慶子

それは否定はせん。

静香

心を読むな。

慶子

うぬが分かりやす過ぎなのだ。

静香

ちっ

経次郎

「自分の方が偉いけど友であるぞ」
だって……。

経次郎

そんなヤツ、
友じゃない。

経次郎

友とか言うんじゃねえ。
サルの分際で。

サル、悪くないよ。
お猿さんに罪はないでしょ?

経次郎

ボクは嫌われようが何しようが弟だけど、こいつのは自称の友!

嫌われてる自覚はあるのか?

経次郎

そんなの友達じゃないだろ!

確認とれないから、一方的な友だち宣言ってこと?

現実に友達がいないから、当時から400年前の歴史上の人物の像に向かって「友」とか言うなんて……。

静香

痛いな、秀吉……。

経次郎

そもそも、源氏の頭領だからと言って、

経次郎

「平家を倒すから挙兵しま~す。」

経次郎

じゃ、兵隊、集まんねーんだよ!

静香

…………。

経次郎

あいつら日和見だから、それをいかにしてこっちに付けるかとか、超神経使うし。

聡士

それは戦国も同じだよ。

聡士

秀吉は農民だから、
苦労はしたと思うよ。

経次郎

秀吉の肩を持つのか?

聡士

持たないよ……。
ボクも嫌いだから。

聡士

ただ、やっぱり見てたものが違ってたんじゃないかな?

聡士

元親は父親の国親が頼りになったし、大名としての礎みたいなのは持ってたから、それをいかに大きくして家臣や一族を豊かにするかっていう感じだったかな?

経次郎

それだと確かに違うな。

経次郎

ウチは平家に滅亡間近まで追いつめられて、そこから平家を倒したって感じだし。

聡士

秀吉は百姓から天下を取ったから、そっちの方が近いんじゃないのか?

経次郎

全然違うよ。
ボクと兄上は選択の余地がなかったけど、秀吉は自分から行ったんだ。

経次郎

自分から行っておきながら、天下を取った後に孤独になって、それを嘆くとかありえないよ。

経次郎

兄上はそんな孤独と常に共にいた人なんだ。農民上がりに理解ができてたまるか。

経次郎

農民が悪いって言ってるわけじゃないからね。

経次郎

農民は自然と共に生きているんだ。大地を耕し、地球を感じていられる。

また話が斜め上に……。

経次郎

秀吉はそれを捨て、
人を殺す武士を選んだんだよ。

聡士

だから、大名はみんな負けちゃったのかな?

経次郎

ん?

聡士

元親も大地とは関わってこなかったよ。
地を見ても、合戦でどう有利に使えるかしか考えなかった。

聡士

そんな大きなものと過ごしてきたなら、大名なんて小さいよね。

経次郎

…………。

聡士

秀吉の肩は持ってないから。

聡士

平成の世を生きる高校生は
そう思っただけ。

経次郎

ボクも平成の高校生だよ。

聡士

うん。

経次郎

平成の高校生として、頼朝と秀吉が友だなんで認めないってだけだよ。

をい……。

静香

器、小さいな……。

参考文献:関八州古戦録
参考HP:http://ameblo.jp/k-714-yamasiina/entry-11364271931.html

友だちって、そういうものじゃないよ

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