省吾がコートを着る十年前――十年前の、神隠しの話。
雨の止まない街では、失踪事件が相次いでいた。俗に『神隠し』と呼ばれたそれは、子供を中心に被害を拡大し、一年余りで数十人が失踪した。
街を歩く子供の姿は消え、じめじめとした暗い街はより一層鬱々とした雰囲気を帯び始めていた。
一組の夫婦が、息子一人を残して死んだ。
事故死だった。
暴走車にはねられて即死した。
残された少年は、子供の消える街で、神隠しの中心だという場所に乗り込んだ。
××神社。
閉鎖された神の社。
この街で唯一、雨が降らなかった場所。