アイドルデビューを果たした深春だったが、即、目も回るような忙しさ……などということはなく、現状、レギュラーで取れた仕事は週一回のストリーミング放送の収録のみだった。もっとも、「メイドでアイドル」を自負する深春にとって、店での「ご主人様」との交流は欠かすことの出来ないものであり、アイドルとして束縛され過ぎないことには利点もある。
この放送の別の曜日分をカーミラが担当していた。あくまで放送日のみが異なるもので、収録日は重なることもある。スタジオで居合わせたときには会話することもあった。もっとも、二言三言程度だったのだが。
その日の会話は、カーミラの謎めいた一言から始まった。