朝、目覚めると台所の方からいい香りがした。寝ぼけ眼でリビングへ向かう。
するとそこには料理をしている父さんの姿があった。
朝、目覚めると台所の方からいい香りがした。寝ぼけ眼でリビングへ向かう。
するとそこには料理をしている父さんの姿があった。
おはよう。もうすぐ朝飯できるからな
そういえば朝ごはんを作るのは父さんの日課だった。そんな事を思い出して、今、父さんがここにいる事を嬉しく感じる。
あれから父さんは家に帰ってきてくれた。精神的にも安定しているようで、また脚本を書こうと奮起しているようだ。母さんとはまだギクシャクしているようだけど、それも時間が解決してくれるだろう。
朝ごはんを食べ終え、学校に向かう。文化祭が終わり、演劇にのめり込んだ二ヶ月の日々もまた終わった。つまり僕はまた元の非リア充に戻って孤独に過ごすのだ。非リア充である僕と、リア充である相馬を繋いでいたもの。それが演劇だ。その演劇が終わった以上、僕らの関係も自然と消滅するだろう。
(少し寂しいな)
そんな事を考えながら通学路を歩く。元通りの学校生活に戻るのかと思うと、僕の中になんとも言えない喪失感が生まれた。
学校に着き、教室に入る。そのまま一人静かに席につこうとした、そんな時だった。
大ニュースだよ! 新堂くん!
僕の鼓膜に響いた大声。それは相馬によるものだった。
どうしたんだい。そんな大声を張り上げて
演劇が終わっても話しかけてくれた。それを嬉しく思いながら相馬の話を聞く。
相馬は興奮した様子で話を続けた。
うちの学校、なんと演劇部がなかったんだよ! だからいっそ俺達で演劇部を立ち上げようと思って
へぇ、そりゃ凄い
なに呑気な事を言っているんだい! 君だって演劇部に入るんだぞ!
そうなんだ……て
えええ! 予想外の言葉に驚かされる。しかも話はそれだけではない。相馬の言葉は続く。
それで西新井や華、それに俺の友人たちが役者として部に入ってくれる事になったんだ。後足りないのは部長だけだ。
……新堂くん、俺ら演劇部の部長、リーダーになってくれないかい?
まったく予想していなかった言葉の数々。そうか、また僕は相馬と演劇ができるんだ。その幸福に浸りながら、僕は心の中でツッコミを入れる。
(非リア充な僕がリア充たちのリーダーになるって!?)
完