駿河麻衣

うー……みんな強いのじゃ……

沢近里香

麻衣ちゃんが弱いんだよ

埴谷義己

……っと、悪いな、これで終わりだ

駿河麻衣

うぎゃああああ!? って、麻衣の手札は二枚あるのじゃ

鬱田志乃

ん? ジジは何だったんだ?

沢近里香

クラブのJみたい。あれ? じゃあ、麻衣ちゃんの手札のハートのJは?

駿河麻衣

一枚無くしたって事かのう?

沢近里香

うーん、でも、家で数えた時は揃ってたし、それまでに無くしたっていうのはあんまり無さそうなんだけど……

箱入椎

ギコくーん

埴谷義己

俺じゃない。イカサマはしてないぞ

織野治

皆さん、ご飯の準備が出来たんだよ!

鬱田志乃

治、お前この辺にトランプが一枚落ちてなかったか? ハートのJなんだが

織野治

うーん、見てないよ? よかったら、ご飯を食べている間に探してくるよ?

鬱田志乃

それなら頼むわ

沢近里香

それじゃあ、私お食事運ぶのお手伝いしますね

駿河麻衣

麻衣もー!

砂尾緋糸

じゃあ私も!

織野治

助かるよ!

埴谷義己

……そう言えば、駿河の姿が無いな

鬱田志乃

部屋で休んでいるんじゃないのか? 疲れていたみたいだしな……。ま、俺が呼んで来よう

鬱田志乃

おい? いるのか?

鬱田志乃

……寝てんのか? 開けるぞ?

鬱田志乃

なっ…………

箱入椎

うわぁ……おいしそうだね!

沢近里香

椎さんはどうされるんですか?

箱入椎

ああ、私の事は気にしないで大丈夫だよー。無理言ってついてきちゃったわけだし

駿河麻衣

テレビ電話とは、機械も進化したのう

埴谷義己

生まれた時から携帯電話があったような世代の言葉じゃないし、そもそもテレビ電話ですらないんだがな……説明が面倒だしそれでいいか

鬱田志乃

大変だ! 埴谷さん、来てくれ! 駿河達はここで待機してろ! 治、頼むぞ

織野治

は、はい!?

埴谷義己

何事だ?

鬱田志乃

一回部屋まで来てください! 話はそこでします!

駿河麻衣

……何か、あったのか?

沢近里香

うーん……。で、でも、待機って言われたし……

織野治

それじゃあ、ご飯を食べてて欲しいんだよ! 冷めちゃうといけないから、先に食べるといいよ!

砂尾緋糸

わーい! 私、お腹が空いてたから先に食べるぞー!

駿河麻衣

ずるいのじゃ! 麻衣も食べるー!

沢近里香

あ、じゃ、じゃあ、私も……いいのかな

埴谷義己

緊急事態みたいだな

鬱田志乃

ええ……。子供達は、来てませんね

埴谷義己

そうみたいだな。……開けるぞ

埴谷義己

これは……!

鬱田志乃

俺が来た時点では、こうなってました。何があったのか――

埴谷義己

……脈は無いな。手遅れという事か

鬱田志乃

だけど、下に居た限り物音は有りませんでしたよね。それに、俺ら以外に泊まってる人間はいません

埴谷義己

だが、見た限り他殺だろう。こいつに自殺の可能性があったか?

鬱田志乃

その考え方で言うと、俺達の中に犯人がいるって事になりますよ?

埴谷義己

それは――

鬱田志乃

俺、警察に通報します。それから、もう片方が多分隣の部屋に居るので、奴にも声を掛けましょう

埴谷義己

ああ、わかった

埴谷義己

……それにしても、どういうことだ?

埴谷義己

駿河が血塗れで倒れている。凶器は見当たらない

埴谷義己

鍵は開いていたが、こいつが恵司だとすればまぁ当然だろう

埴谷義己

反対に、音耶だとすれば少し不自然ではある。彼はあの少女の一人、砂尾緋糸と顔を合わせたくなかったはずだ。それなら鍵を閉めるだろうからな

埴谷義己

何故鬱田が双子のどちらが倒れているのかを明言しなかったのも気になるが……それに、彼は血液恐怖症ではなかったのか? 以前、駿河からそう聞いた気がする

埴谷義己

しかし、彼は俺達と一緒に居たから犯行が出来るはずがない。となると、犯行が可能なのは双子の片割れかあの織野という青年の二人だ

埴谷義己

だが、動機が無い。それに、彼らを疑うのはいささか早計だ

埴谷義己

……考えれば考えるほど訳が分からんな。こういう時はいつも駿河に頼っていた訳だが……成程、それだけ頼っていたという訳か

埴谷義己

……ん? これは、トランプ?

埴谷義己

しかもこれは、ハートのJじゃないか! 裏面も丁度さっきのトランプと同じ……。それなら、ここにあるこれは無くなったトランプの一枚という事か……!

埴谷義己

……つまり、どういうことだ?

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