小学生の頃の山内和紗は明るくおしゃべりが大好きな女の子だった。両親からも一心に愛情を注がれ家庭環境も良好、クラスの中心的存在であり、彼女の周りには男女問わず人が集まっていた。時折、悪戯をして先生から怒られることはあったが、先生たちからの評価は概ね良いものだった。
勉強も人並みにできていたし、何より体を動かすことが大好きだった彼女はサッカークラブに所属して、小学校が終わった後に練習に参加していた。体は小柄だったものの、機敏な動きと男子にも負けない闘志を武器にMFとして活躍していた。
将来の夢はお花屋さん。小学校の卒業文集に赤や黄色、ピンクの花に囲まれて笑顔の女性が描かれていた。
どこにでもいるごく普通の幸せを享受していた彼女は中学一年の夏、一日を境にそれを手放すことになった。