※注意!

本作品中には性的な描写が含まれております。

予めご了承くださいませ。

早朝五時。
広重は夢の中にいた。

ジリリリリリリリリリリン

「・・・」

ジリリリリリリリリリリン



ガチャ。





『今日お前ン家行くわ』

広重

……

けたたましい黒電話に安眠を害される。受話器を取ると挨拶もそこそこに一方的に用件だけを告げて、通話はぷっつりと切られた。



朦朧としたままの広重は思う。

…てか今何時よ?

きゅいいいいいいいいん

朝九時。

朝食後、畳の目に沿って吸引力の良くない掃除機をかける。
北斎さんからの泊りの連絡は久々だった。
非常にうれしい。
掃除機をかけながらにやける口元をどうにも抑えられない。

午前十時。

洗濯物を干して小休止。買う物を用紙にまとめる。
北斎さんの好きな料理をそろえよう。温かい食べ物にしよう。北斎さんの喜ぶ顔が見たい。
広重の心は躍った。早朝にたたき起こされたこともすでに忘れていた。

午前十時半。

商店街へ。

風がひんやりと感じられる。春とは名ばかりで、まだまだ冬の気配が其処此処に潜んでいる。広重は首巻きを持ってくればよかったかと少し後悔した。

広重

鍋…。鍋…?
いや、煮つけか?

「毎度あり~!」

馴染みにしている八百屋の店主がおまけだよと云って卵を二つ多く袋に入れてくれた。

謝辞を述べて受け取るが、帰る道すがらどうやってこれを消費しようかと考えを巡らせる。

広重

四つで丁度良かったんだけどな

午前十一時四十五分。

帰宅。
軽く昼食をとる。



午後一時。
急ぎでない・すぐ終わる・わりと楽な仕事を進めながらも、これからの楽しみに胸がときめく。


カアァ・・・カアァ・・・

午後三時。

考え事をしながら横になってそのまま寝てしまったようだ。カラスの鳴く声が遠くで聞こえて意識がはっきりとする。だいぶ陽が傾き始めていた。風が冷たくなっている。

あわてて庭に出て二人分の布団と寝具、わずかばかりの洗濯物を取り込んだ。

生きている。
広重は暮れ行く空をみた。

広重

はあ

夕空を眺めていると、疲れがどっと押し寄せるのを感じ、ため息がでた。

それでも、これからのことを考えるとそれも苦ではないように思えるから不思議だ。

広重

さてと

午後五時。

夕飯の支度をするため台所へ立つ。

買ってきた食材を並べて下準備を始めたところで大事なことを忘れていたことに気づく。

広重

あ…

広重は慌てて手を洗い、電話にかけよった。


手早くダイヤルを回し、用件を伝える。

広重

もしもし、俺です



『・・・』

広重

だから、みそとしょうゆ、どっちにしますか?



『・・・』


早くしろよっ



『・・・』

広重

ガチャン!

どぼどぼどぼどぼどぼどぼどぼどぼっ

受話器を叩きつけてキッチンに戻り、戸棚からめんつゆを取り出すと怒りに任せて投入する。

午後七時。

支度がひと段落したので。

じゃーーーーーー。

ジリリリリリリリリリリン

広重

~♪

午後九時。


そろそろ来る頃だろうと思っているところへ、ちょうど電話が鳴る。

ガチャ。

広重

はい

北斎

あ、ごめんやっぱムリ

広重

あ゛あ゛?

ふざけんなよなんだよなんでだよ何か月ぶりだと思ってんだよボケがいい度胸じゃねえかこのヤロウ 二度とうちの敷居跨ぐなよこのすっとこどっこい!!

なかなか怒り(# ゚Д゚)ハァ? がおさまらず午後十二時就寝。
広重は俺の一日を返して欲しいと心から願った。


















この後も、まだまだ続くよ!







広重

今何時だ?

不意に目が覚めた。部屋には障子ごしにうっすらと明かりが広がっている。

電子時計は午前五時半を照らしている。

また早起きか

寝返りを打とうとして背後に違和感があることに気づいた。

・・・なんか温かい

すぅすぅ…すぅすぅ…

え・・・なんかいる!?

すぅすぅ…すぅすぅ…

・・・なに? なにっ!?

広重は首だけで素早く後ろを見た。

広重

…はぁ

添い寝している北斎を確認してそっと息を整える。

ゆっくりとそちらへ体制を変えた。

少しずつ明るくなるにつれ、北斎の顔がはっきりと見えるようになってきていた。
指や爪には落としきれていない絵の具がこびりついている。
ほとんど寝ずに仕事をしていたのか目の下には隈ができ、こと切れたように眠っていた。

(仕事を)終わらせてわざわざ来たのか…

広重の胸にじんわりと暖かいものが広がった。自分が一日を棒に振った悔しさの、ほんの一部でも北斎が気にかけてくれていたのかもしれないと思えるだけで、すべてが報われる気がした。

そっと、長いまつ毛に指先で触れる。
まったく起きる気配がない。今度は目元の髪をはらってみる。少し、反応があった。



あ、やば…かわいい



そう思ったら、口づけていた。
とめようとすればするほど勢いづいてしまう。
肩を掴む手に力を込めていたことにも気づかなかった。

六度目で目が合った。

北斎

……

広重

……


そのまま額を相手のそれにつけて懇願する。

広重

したいです

返事はない。

すこしじれったくて、足を絡める。
北斎の足は、驚くほど冷たかった。

はっとして額を離すと、今度は視線が絡み合う。

北斎は、何か言ったのかもしれない。だが、頭の芯がしびれた広重には何も聞こえなかった。

勢いに任せて押し倒すと、唇を吸う。

いやらしい水音が静寂を打つ。

そのまま舌を入れ、歯茎や口蓋を刺激すると北斎は喉の奥で絞り出すように声を上げる。


すべてが、ほしかった。


今度は耳を舐める。耳たぶを口に含むと小さな声で『いや』と聞こえてますます広重は昂った。舌先で少しずつ首筋をつたい、鎖骨をしゃぶると、お互いに息があがっているのがわかった。

着崩れたどてらの前をはだけると、北斎は恥じらってか顔を背けたので、顎を掴んで深く口づける。

舌を絡めあいながら見るとすこし潤んだ瞳がこちらを見上げている。

そのままため息交じりの声と共に、北斎は広重の唾液をごくりと飲み込んだ。

ゆっくりと北斎の上着をめくる。日に当たらず陶器のように滑らかで白い肌が露わになる。

ほどよく鍛えられた胸が上下に揺れている。そっと真ん中をついばむと、ピクリと躰がこたえる。すぐには吸わず、乳首のぎりぎりを攻めたてる。


北斎サンはじれったいのか不安げに息を吐きながら、広重の襟をつかんでくる。

そのまましばらくじらしてから広重が乳頭に吸い付くと、北斎の躰はビクンと跳ねた。
舌先でころころとそれをいじくると、切なげな吐息が頭の上から聞こえてくる。

広重はもう自分のモノも限界なのに、そこに触れるのはもったいない気がして、でも同時に早く触れてしまいたくていじましい自分を呪った。

広重に指や舌の腹で弄ばれた北斎の乳首は少しく濡れて光り、熱を帯びてぷっくりと腫れあがっていた。

先ほどから身じろぎしていたそこにそっと手をかける。

広重はまるで獣(けだもの)のように男を組み敷いて快楽をむさぼりながらも、冷静になっているもう一人の自分が、頭の片隅にいるのを感じた。そいつは、広重が今するべきことを教えてくれる。

下着ごしに、十分に膨らんだそれに口づけると濃厚な香りが口中に広がって、俺の欲望をさらに掻き立てた。

いよいよ我慢できずにその下着をはぎ取ると、すでに鈴口からはとろりと先走りが零れていた。

みずみずしい果物でも頬張るかのようにそれを咥える。これまでにも増して北斎の躰が反応している。

広重の心は震えた。これほどの喜びは無いと思った。

広重は自分が知りうる北斎の敏感な場所を舌で執拗に愛撫していく。北斎の抑えていた声が大きくなる。

今、北斎の中でどんなふうに己の与える刺激が蠢いているのか、広重は切実に知りたいと思う。

見ることは出来ても、知ることは出来ない。それはこの上もなく切ないことに思えた。

こんなに近くにいても、何一つ北斎のことを知らない自分が惨めだった。
そばにいて深く愛したい感情と突き放して遠くに行ってしまいたい感情が混在し、広重は不思議な浮遊感を味わっていた。

ここまできて広重は大事なものを用意していないことに気づいた。

広重

…ちょっと、すいません


引き出しから潤滑剤を持ち出す。

北斎

バラ?

蓋をはずし手に絞り出すと香りが届いたのか北斎が尋ねる。

広重

はい。水溶性のヤツこれしか無くて

北斎

……

広重

イヤですか?

北斎

あー、べつに


なんだよちょっと気にしたオレバカみたいじゃん











指が三本入ったところで広重が自分のモノを勃たせようと躍起になっていると北斎さんがのそりと起き上がった。

広重

う…あっ

裸のまま四つん這いで俺のモノをしゃぶる様が刺激と相まってぞくりと広重の中の情動を煽る。

広重

はぁっ

はやく、はやくいれたい

なのに。

北斎

え~ゴムすんの?

するでしょ、ふつう。なに? バカなの?
いみわかんねぇよ。

pagetop