わたしは松岡ゴンゾー
どこにでもいるタクシー運転手だ

タクシー

おっ客が

どうぞ

いえ、タクシーを呼んではいません

タクシーって言ってたじゃないですか

タクシーという発音を練習していただけです

道ばたで手を振りながら「タクシー」と発音していたらタクシー来るでしょう

そうなんですか

思考は現実化するってやつですか

意味がわかりません

客じゃないならもう帰りますよ

了解

まったく、なんてやつだ

時代か……

タクシー!

お、なんかすごい髪型の人が

は、早く乗せてくれ!

お客さん。どちらまで?

とにかく早く出してくれ!

む、追われてる系の客か……
久しぶりだな……

早く出すんだ!
行き先はどこでもいい!

おっ、この流れは……

これは言うな……

……

来るぞ……これは言うぞ……

追われているんだ!

来た-!!!

な、何がだ?

いえ、お気になさらず。
こちらの話です。

じつは私、タクシー逃走のエキスパートなんですよ

マジか! カネはいくらでも払う!
うしろのヤツを振り切ってくれ!

うしろの敵っぽいヤツを!

敵っぽいヤツ……?

きしゃええええええええええええええええええええ!

うわー! 敵だ!

だよな? 敵っぽいよな?

あれは敵ですね・
逃げましょう。まかせてください

まずレインボーブリッジに逃げましょう

続いて時計台に逃げましょう

まだ追ってきますね……

ちょっと亜空間に逃げましょう

ワープします。シートベルトお願いします

お、おっさん……何者なんだ……

ただのタクシー運転手ですよ。
多少「道」に詳しいですがね……

まだ追ってくる!

別の時代に逃げ込んだほうが良さそうですな

ふむ、ストーンヘンジにでも向かうか……

すげえ……タクシーってすげえ

やればできるってことです

ギアをひとつあげます

げえっ、宇宙!

ここまで来れば追ってこられまい……

タクシー

またあんたか!

また会いましたね……

宇宙で何をしているんだ

邪魔にならないよう宇宙で発音の練習を……

うわあああああ! 追ってきた!

きしぇえええええええええええええ!

まさか宇宙まで追ってくるとは……

うわあああああ! 殺されるううううう!

あ、これ落とされましたよ

これは……おれのフライドポテト……

拾ってくれたのか……

なんだ……敵じゃなかったのか……

ではわたしはこれで……

去っていった……

人を見かけで判断してはいけませんね

まったくだ。つい敵かと……

見かけで判断してはいけませんよね……

まったく。人類は愚かだ……

真の敵は私だというのにな!

うっ、うわあああああああああ!

このようにして、彼は敵に食われてしまった
ものごとの本質を見る目のない者は、さとりに至ることはできない

大宇宙タクシー物語

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