ん、この匂いは……。

犬がにんげんを乗せて歩む歩を止めると、森の行く手の茂みから二足歩行の猫が現れました。

やあやあ、そこをゆくは我が弟犬と我が妹にんげんではないか。
どうかな今日の日和は。
非常に心地よい日差しだろう。

天気がいいのは自分のおかげであるかのように語るのは猫の兄。
犬よりお兄さんでいつも仰々しい喋り方をする趣味人です。

やっほー猫の兄!おひさまで犬はぽっかぽかだよ!気持ちいいよ!
猫の兄も乗せてもらいなよ!

猫の兄の尊大な態度もさらりと流して誘うにんげんに、猫の兄はやれやれと肩をすくめて犬に聞きました。

にんげんはああいっているが、どうかな犬よ。
乗せてくれるかな?

にんげんが誘っているんだろう。
早く乗るといい。

うむ。では私もご相伴に与ろう。
我が弟のほかほかの毛皮をね。

仰々しく両手を広げて宣言した猫の兄はにんげんに言いました。

これから飛び乗るから気をつけるんだよ。
まぁもちろん私の仕事にミス等ないがね。

はーい!早くきなよー、猫の兄ー!

コロコロと笑顔で手招きするにんげん。
猫の兄はすっと飛び上がって空中三回転。
すたりと犬の背中に降り立つと横向きに寝そべりました。

どう猫の兄、気持ちいいでしょ。

うむ。これはなかなか気持ちいいぞ。
弟よ、いい毛並みをしているな。

猫の兄の言葉に、犬は至って冷静に返します。

手入れはしているからな。それにこの森に毛並みの悪いやつなどいないだろう。
お母さんの乳でいきているのだから。

たしかにたしかに!それなら毛並みが悪くなるはずもないな!
そう、毛並みが悪くなるといえばあれは私が森の外に出かけた時の話だ……。

そこから先は猫の兄の独壇場。
自分がいかに危険で、刺激に満ち、新鮮な旅をくぐり抜けたかを語る猫の兄の話に犬とにんげんは聞き入ったのでした。

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