象ほどの大きさの黒い毛並みの犬がその背中に人間の裸の女の子を乗せて歩いています。
大きな体を巧みに操って森の中を歩いています。
にんげん、今日もいい天気だな。
象ほどの大きさの黒い毛並みの犬がその背中に人間の裸の女の子を乗せて歩いています。
大きな体を巧みに操って森の中を歩いています。
そうだねぇ。犬の背中あったかぁい。
女の子はまたがった犬の背中にへちょりと体をひっつけると、そのまま柔らかな毛並みに頬ずりを始めました。
その感触に犬はさらに歩みを慎重にします。
雨だと大変だからなぁ。
大変だよね。私ずっと犬の毛の中でふかふかだけど、犬が動けないもの。
俺はお前が風邪をひかないか心配してるんだよ。
大丈夫ー、犬の毛並みはあったかいもん!
ぱっと犬の背中で身を起こして毛を押さえるようにしていた腕を、ふぁさぁっと柔軟な感触を返す犬の毛並みにつき込んで、女の子がころころ笑います。
知ってるぞにんげん。
雨の日は毛皮の中に埋もれていて、最初は暖かくてもそのうちもぞもぞしだすだろう。
冷えてるんだろう。
寒くないもん!犬あったかいもん!
心外!というように声を張り上げる女の子にゆっくりと語りかける。
お前は俺と違って体が弱いから。
心配なんだよ。
風邪ひーても犬もお母さんも魚の姉もいるから大丈夫だもん!
むー!っと膨れて犬の毛並みを引っ張る女の子に、犬はまいったまいったと白旗をあげます。
解った解った。俺たちがいるからにんげんは大丈夫だな。
うん!大丈夫なの!
女の子はほんとうに嬉しそうに笑うと、また犬の背中に腹ばいになりました。
今日もぽかぽか、木漏れ日が犬の毛皮と女の子を温めます。
そんなのが森の日常のひとコマです。