松戸

はぁ……

小絹

どうしたんだ?
松戸がそんな溜息をついているなんて珍しいな

松戸

実は、昨日お見合いをしてきまして

水海道

えっ!松戸先輩結婚するんですか?

小絹

落ち着け水海道。日本国の法律上、まだ結婚出来る歳じゃ無い

竜ケ崎

でも、お見合いって事は許嫁とかそんな感じだよな?

小絹

もしかして、家の都合とかか?

松戸

はい。将来的に家督を継ぐ予定の僕に、良家のお嬢様と知り合うように。と、セッティングされました

竜ケ崎

うわぁ、想像出来ない世界だわ

水海道

相手の人は、どんな人だったんですか!

松戸

それがですね……

松戸

2人きりで話をしろと言われましても、この状況は……

牛久

ねぇ、あなた。

松戸

はい、なんですか、牛久先輩

牛久

竜ケ崎君の、お友達よねぇ?

松戸

はい、そうです

牛久

名前だけ聞いてどんな人かとおもったらぁ、まさか後輩のお友達だとは思わなかったわぁ

松戸

僕の方は、『牛久』と言うのは珍しい名字なのでもしや、とは思っていました

牛久

お父さんもお母さんも、私達が同じ学校なのは知ってたみたいだけどぉ

松戸

知り合いだとは思っていなかったでしょうね

牛久

でもぉ、私ぃ、知り合いで安心したわぁ

松戸

え?もしかして先輩、この縁談に乗り気ですか?

牛久

うふふ、松戸君はどうなのぉ?

松戸

えっ……と、その

牛久

はっきりしないわねぇ。
知り合いだし後輩だから遠慮無く言うけどぉ、お願いがあるのぉ

松戸

お願い、ですか?

牛久

そうなのぉ。
実はねぇ、私ぃ、他に好きな人が居るのよぉ

松戸

好きな方がいらっしゃる?
まぁ、年齢を考えたら不思議なことでは無いのですが、もしかして、婚姻を結んだ後、その方との付き合いも認めて欲しいとか?

牛久

あらぁ?松戸君は、この縁談を受ける気、あるのかしらぁ?

松戸

えっと、正直なことを言いますと、あまり

牛久

うふふ、それなら丁度良いわねぇ。
この縁談、松戸君の方から断ってくれないかしらぁ?

松戸

え?僕の方から、ですか?

牛久

そうなのぉ。
実はねぇ、この縁談、私には断る権利が無いのよぉ

松戸

え?なんでですか?

牛久

松戸君は知らないのねぇ。
家柄的に、私の家の方が格下なのよぉ。だから

松戸

……そうなんですか

牛久

松戸君にその気がないならぁ、断ってくれるわよねぇ?

松戸

そうですね。お断りしますと、うちの両親と、そちらのご両親に伝えさせて戴きます

牛久

ありがとぉ。
なんか、変な責任を負わせちゃって、ごめんなさいねぇ

松戸

と、言う事が有りまして

竜ケ崎

突然の牛久先輩の登場に衝撃を隠せない

小絹

下手に家柄が良いと、面倒なことも有る物だな

水海道

松戸先輩!大変でしたね!

松戸

そうですね。大変でしたが、取り敢えずやり過ごせて良かったです

小絹

ところで、ここで断られた事になっている牛久先輩は大丈夫なのか?
家柄を重んじる家だと、今後居心地が悪くなりそうなのだが

竜ケ崎

あ、もしかして、牛久先輩が海外の美大に留学するって言ってるの、そのせいか?

小絹

そんな事を言っているのか

竜ケ崎

海外だと、返済不要の奨学金取れる学校多いから、それで留学するって言ってたんだよな。
単純に学費だけの問題かと思ってたんだけど

松戸

なるほど、家から離れたい。と言う事情も有るんでしょうね

水海道

牛久先輩、海外に行っちゃうんですか?寂しいです!

竜ケ崎

俺も何となく寂しいけど、進路は人それぞれだから、仕方ないって

水海道

……はい……

松戸

留学、ですか……

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