鬱田志乃

……で、家を飛び出してきたと

駿河恵司

悪いとは思ってる。でも、お前以外に頼れる人間が居なくて……

駿河恵司

いや、俺だってわかってるんだよ? 双子の弟にアプローチをかけられてるだとか死んだ彼女に風呂覗かれてるとか意味がわかんねぇなって

駿河恵司

でもこの前音耶と話してて俺が一人の時の事までやたら話すからさ……調べたらパソコンの裏に盗聴器仕掛けてあったし……

鬱田志乃

……マジか

駿河恵司

彼女の方はアレだな……振り返らずに鏡で背後を確認したら何か映ってるように見えてさ……

駿河恵司

俺が疲れてるせいもあるんだろうけど、少なくとも自宅じゃ休めないなと

鬱田志乃

まぁ、別に泊まっていくなら好きにしていいぞ。そういう理由ならしばらく居たって構わん

駿河恵司

本当か? 助かる!

鬱田志乃

だが、実の兄の自宅に盗聴器を仕掛けるってのは意味が分からんな……俺が一人っ子だからか?

駿河恵司

いや……姉さんとか麻衣の部屋にも仕掛けようとは思わないな

鬱田志乃

お前んちの姉さんって……アレか

駿河恵司

仕掛けたら殺されるだろうな

鬱田志乃

お前……まともな兄弟はいないのか

駿河恵司

少なくとも音耶の事はついこの間までまともだと思っていた

鬱田志乃

……同情するわ

鬱田志乃

それにしても、お前の方は音耶についてどう思ってんだ?

駿河恵司

えっ?

鬱田志乃

いや、単純な興味なんだがな。別に嫌ってるようには見えんし、俺には仲が良く見えたんだが……

駿河恵司

ああ、仲は良いよ。今でも普通に二人で遊びに行くし、互いの家に泊まったりするし

鬱田志乃

ちょっと羨ましいな、そういうの聞くと

駿河恵司

なら、今度どこか旅行でも行くか? 休みなら結構作りやすいし

鬱田志乃

おう、それなら俺が手配するよ。礼も込めてってことで

駿河恵司

よっしゃ!

鬱田志乃

音耶を連れていくかは任すわ。別に常識の範囲内くらいだったら誘っていいし

駿河恵司

じゃあ、麻衣とかその辺りにも――

砂尾空

聞き捨てならんな

鬱田志乃

なっ!?

駿河恵司

く、空!?

砂尾空

彼女を置いて旅行など聞き捨てならんと言っているのだ! 恥を知れ!

鬱田志乃

昼間っからこんな自己主張の激しい幽霊を見ることになるとは……

駿河恵司

ちがっ、置いて行くとか、そんなつもりは

砂尾空

だったら誘う相手で私の名を一番最初に出すべきだろう!

駿河恵司

いや、男友達と旅行に行くのにそんな……

砂尾空

ふむ……成程、こう言いたいのか

砂尾空

男同士の友情に女は邪魔だと!

駿河恵司

そういうわけじゃ……

鬱田志乃

……てか、幽霊って頭数に入るのか普通

砂尾空

何か言ったかそこの根暗そうな男!

駿河恵司

落ち着けって、空。そもそもお前、どうしてここに

砂尾空

ん? ああ、私はお前のためにここにいるんだよ

駿河恵司

俺のため?

砂尾空

傍に居ないとお前は危なっかしいからな……。特に背後からの一撃に弱そうだ

駿河恵司

闇討ちされるのかよ俺

砂尾空

性的な意味でな

駿河恵司

性的な意味で!?

砂尾空

だから、私という保護者無しに旅行など許せん。恋人が女の様に乱れる様は見たくないからな

駿河恵司

お前の頭の中で俺何されてんの!?

鬱田志乃

何て言うかこう……アグレッシブな彼女さんだな

駿河恵司

その点については謝罪の言葉しか無い……

砂尾空

という訳だ。私も連れて行くといい、根暗男

鬱田志乃

別に俺は構わんが……いいのか、恵司

駿河恵司

昔から決めたことを曲げる様な奴じゃないからな……悪いな、鬱田

鬱田志乃

何か……早々と嫌な予感がするんだが……

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